創造性とランニングの両思い:菊乃が語る、「GYAKUSOU=逆走」の精神

UNDERCOVERの高橋盾が率いるランニングチーム「GIRA」。自由でクリエイティブな志を持つ人たちが集まるこのコミュニティに、次世代のリーダーとしてデザイナーの菊乃が加わった。彼女に、ランニングと創造性の関係や「GYAKUSOU=逆走」の精神についてきいた。

by Fumihisa Miyata; photos by Shun Komiyama
|
15 March 2019, 3:20am

走るということは、私たちをしばっている思考のパターンや社会の枠組みをやわらかく振りほどくような、創造的な行為だ。と同時にランニングは、思い立った瞬間、ギアと共に駆け出せばいいという意味で、とても日常的なものでもある。

1552035082477-FH020003

デザイナーとして人気を集める菊乃は、まさにそうしたランニングの世界に魅せられているひとりだ。彼女が今回モデルを務めたNIKELAB GYAKUSOU SP19 コレクションは、UNDERCOVER創立者である高橋盾が10年近く手がけているランニングギアのシリーズである。

今回のコレクション撮影では、アメリカ・LAに菊乃を含めた4人が集結。これは、世界中でランニングのクリエイティビティを愛する走者たちを、ランニングチーム「GIRA(Gyakusou International Running Association)」の次世代リーダーとしてつなげ、コミュニティを形成していこうというプロジェクトでもある。新たな刺激を得た菊乃に、ランニングがもたらすものを訊ねてみた。

1552035125670-FH030020

——普段は、どれくらい走っているんですか?

菊乃:ほぼ毎日、ですね。最低でも2~3日に1回は走っています。距離は最短でも5~6km、時間に余裕があれば11~12kmは走りますね。家の近くの川沿いを走ることが多くて、すこし足を伸ばして、代々木公園や駒沢公園にいくこともあります。走ってないと気持ちわるくなるというか、いまはご飯を食べることと同じくらい、生活の一部になってますね。

——いつ、どんなモチベーションで走り始めたんですか?

菊乃:まだ、はじめて1年くらい。いま28歳なんですが、何かはじめないとヤバいな、と思って。ランニングをしている人が周りに多かったので、最初は何となくはじめたんですよ。走ることも運動も嫌いだったんですが(笑)、やってみたらどんどん距離もタイムも伸びて。すぐに体が慣れて楽しくなって、もっと走りたいという気持ちになったんです。

——走っているときは、どんなテンションなんですか?

菊乃:音楽を聞きながら走ることはあまりなくて、ラジオを聞いたり、何も聞かないこともあったり……基本的に、考えごとをしていますね。携帯電話も持っていきますけど、通知は切っちゃうことも多いです。10km走るとなると、1時間くらいはずっとひとりで走り続けるわけですよね。ランニングは何にも邪魔されることのない時間なので、そのあいだに考えなきゃいけないことをちゃんと考えられる。走り終わったときにはクリアになっていて、体も汗をかいてスッキリしているんです。

——現代の都市で生活していると、貴重な時間ですよね。

菊乃:そういう時間を大事にしているのかも。家のパソコンで仕事をしてばかりだと、頭も体も凝り固まっちゃう。走る時間帯も決めず、朝でも昼でも夜でも、「ちょっといってこようかな」って走り出すんです。短い距離なら、お風呂を沸かしているあいだに、とか。フリーランスのライフスタイルや働きかたにも丁度いいし、時間も距離も自由なのも、自分の性格に合っているかも。まわりでクリエイティブな仕事をしている人も、ランナーは多いですね。

——クリエイターとランニングは、相性がいいのでしょうか。

菊乃:そうかもしれません。私も、ランニングだけは続けられるんです。ジムにトレーニングへいくこともあるんですが、ここを鍛えるにはこのメニューをやらなければいけない、というプログラムが決まっていると、飽きてしまうこともある。でも、ランニングは内容が決められていない。そこがきっと合っているんじゃないかな、って。

1552034996351-FH010021

——今回GYAKUSOUのLA撮影で一緒だった3名はどんな人たちでしたか?

菊乃:絵を描いているアーティストと、中国人のモデルの女の子。ベルリン在住のダニエルは、普段は優しいのに、ランニングのことになるとすごい強気で、「タイツの上にショーツを履いているような人には負ける気がしない」って言ってて(笑)。そうした会話が楽しかったですね。彼はベルリンでランニングチームを組んでいるみたいで、チームを組むのも面白そうだと思いました。撮影現場にいたコーチにも、NYCマラソンなどを勧めてもらったので、近い将来出てみたいですね。

——菊乃さんはランニングを通じた新たな世界の発見が楽しそうですし、そもそもランニングは既存の思考の「枠」を外すところがありますよね。「GYAKUSOU=逆走」というコンセプトもそこに通じます。

菊乃:昔から、自分が何になりたいか、何を着たいか、何を選びたいかっていうときに、「人と一緒」というのが本当に嫌だったんです。ランニングを選んだというのも、私の性格が出たんでしょうね(笑)。自分の生き方や考え方自体が、みんなと逆の方向、違う方向でありたいですから。20歳くらいのときにアメリカのサンフランシスコに住んでいた頃に、幼いころから違和感のあった「みんなと同じだと安心する」というような感覚は全部取っ払われて、いまがあるんです。GYAKUSOUのコンセプトはまさにそうした私の思いと一緒で、すごく共感できるし、自分がこうであることに対して自信が持てる。そして、同じような感覚を持っていて、でも違う人——“一緒だけど違う”ランナーにこれからも出会えていったら、素敵だなと思います。

Credit


Photography Shun Komiyama
Text Fumihisa Miyata