Junya Watanbe primavera/estate 2018. Fotografia Mitchell Sams.

2018SS:ヘア&メイクが光るショー10選

ヴァンパイア風の血だらけの口から、釘に髪を巻いたモヒカンヘアまで、今季ファッションウィークで生まれた力強いヘアメイクを紹介する。

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okt 27 2017, 11:59am

Junya Watanbe primavera/estate 2018. Fotografia Mitchell Sams.

ビューティライターのキャット・マーネルは、ニューヨーク・ファッションウィーク中にある記事を発表した。その中で彼女は、毎年同じようなメイクがもてはやされる傾向について綴っている。大胆な眉毛、ミニマルな"すっぴん風"メイク、ワインカラーのリップ、目尻を吊り上げたキャッツアイなどは、毎シーズンどこかで誰かが打ち出している。それらが美しいのは議論の余地もない。そういったメイクは見た目だけでなく、気持ちも美しくしてくれる。メイクアップ・アーティスト、ケヴィン・オーコインが打ち立てたメイクは永遠にもてはやされるはずだ。

しかし、顔の特徴を引き立てるのではない、奇妙ともいえる"美しさ"を打ち出すメイクアップ・アーティストも、ファッションの世界にはなくてはならない。商業主義に大きく傾倒した今季、マスカラ広告のような世界観ではなく、映画監督ジョン・カーペンターの作品から飛び出したようなメイクはただただ新鮮だった。実験的なものにも、奇妙なものにも、美しさはある。ショーでのそれにいたっては一般消費者に売れるものでなくても良いのだ。今季ファッションウィークで見られたメイクはどれも素晴らしく、デヴィッド・リンチの世界観さながらの奇妙なものもあった。わたしが特に気に入ったビューティ・メイクを紹介しよう。

Photography Mitchell Sams

Dries Van Notenのダイアモンド・アイ
メイクアップ・アーティストのピーター・フィリップスが作り出したこのルック。透き通るようなすっぴんの顔に、Swarovskiのクリスタルでモデルの目を囲った。それはまるでザ・ザ・ガボールさながらの美しさだった。唇に宝石をほどこされているモデルも見られた。長きにわたりきらめきを愛してきたドリス・ヴァン・ノッテンは、今季クリスタルいっぱいのコレクションを作り出した。透け素材のドレス、ジャケットのファスナー、そして細いベルトにまでクリスタルがふんだんに施されていた。フィリップスによるクリスタル・メイクはコレクションの数々をを上品に引き立てていた。

Maison Margielaの、ふっくらしたハート形リップ
Maison Margielaではパット・マグラスが、自身の名を冠して発売された「Skin Fetish」を使いモデルたちの肌に輝きを生んでいた。そしてリップスティック「Lust: Matt Trance」を使って明るいピンク色で幾何学的な形の唇を作り出していた。ユージン・ソレイマン(は夢に浮いているようなルックをフェザーを使用して担当したヘアを表現した。背中を痛めるほど大きな髪型で知られたマリー・アントワネットだがもし現代に生きていたら、この髪型を試したいと主張したにちがいない。

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Marc Jacobsが見せたさまざまなキャッツアイ
Marc Jacobsのショーではダイアン・ケンダルがキャッツアイ・メイクを創り出していた。ケンダルのメイクは「クラシックなグラマー」をテーマとしていた今季のMarc Jacobsに見事にマッチしていた。しかしケンダルはマッチしたメイクを生むだけでなく、そこに革新を持ち込んで。ケンダル率いるメイクチームはモデルそれぞれが持つ目の形に合わせて8通りのキャッツアイ・メイクを作り出した。ストレートに線をひいて作ったものから、目の周りを強調したもの、長方形のもの、こめかみにまで伸びるものまで、ウェブサイトThe Cutによればすべてのキャッツアイを描くのに30分を要したという。

ネガティブ・スペースをエレガントに使ったRochas
今季Rochasのメイクはシンプルさで注目を浴びた。メイクアップ・アーティストのルチア・ピエローニが60s調の大きなアイメイクの輪郭だけを描いたこのメイクはさりげなくも大胆に観客の目をひいた。とてもユニークで誰もが真似できる素晴らしいメイクだ。

Dilara Findikogluがヴァンパイアに捧げた世界観
誤解を恐れずに言う——悪魔教会はなんともかっこいいことをするときがある。女性が中絶の権利を保持できるよう戦ってまでいるのだ。今季ロンドン・ファッションウィークでショーを初披露したDilara Findikogluはそんな悪魔教会を題材にコレクションを描いていた。メイクを担当したのはイサマヤ・フレンチ。彼女はDilara Findikogluが描いた地獄の業火と激しい情熱の世界を見事にメイクで表現した。リリー・マクメナミーの顔はペンタグラムに、そしてここにあげた写真では、パフォーマンスアーティストのサッシ・サスマンが、おでこに瘤をたたえて『バフィー 〜恋する十字架〜(Buffy the Vampire Slayer)』さながらの世界観を体現していた。唇は赤く染まっていたがそれが血なのか、それとも他の何かなのか、それは誰にもわからない。

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Jour/Neに見た、キラキラのまぶた
メイクアップ・アーティストのライン・デノワイエ(Lyne Desnoyers)の顔をディスコボールに見立てる手法は、いつの時代でも通用するアイデアだ。自分の顔にディスコボールがあれば、クロエ・セヴィニーやケイト・ベッキンセールのような友達など必要ない。Jour/Neのデザイナー、ルー・メナイス(Lou Menais)、レア・セバン(Lea Sebban)、ジェリー・ジョルノ(Jerry Journo)の3人は今季、コカコーラとのコラボレーションで15アイテムからなるカプセル・コレクションを発表した。コカコーラとのコラボレーションということで泡立ちを表現したメイクが考案されたのかもしれない。

Rochambeauの強烈なグラフィック調のブラシ使い
エリン・パーソンズが今季Rochambeauのショーで施した太く、黒いアイライナーが強い印象を残した。テレビ番組『トップ・シェフ』で料理人たちが皿にソースで描くラインを思わせる。パーソンズのメイクは、Rochambeauがアーティストのアーロン・カリー(Aaron Curry)とのコラボレーションで作り出した水滴のグラフィックを白黒でプリントしたコレクションを力強く引き立てていた。

Photography Mitchell Sams

Junya Watanabeのパンク・スタイル上級バージョン
Junya Wanatabeのショーはパリでの開催だが2018SSコレクションのヘアメイクは完全なるロンドン・パンクだった。ヘアスタイリストの加茂克也は70年代後期であれば、「これでいつでもRoxyのナイトに繰り出せる」ようなを髪に編み込んだモヒカンヘアを作り上げた。メイクはイサマヤ・フレンチによるものでモデルの目に立体的な印象を与えるいびつなラインが美しかった。

Photography Mitchell Sams

ルネサンスと原宿の世界をごちゃまぜにしたComme des Garcons
ヘアアーティスト、ジュリアン・ディスは1980年代初期から現在まで、川久保玲とともに作品を作り続けてきた。魔法のような空間を作り上げたことも一度や二度ではない。しかし今季のComme des Garconsは特に幻想的だった。今季コレクションはイタリアのルネサンス画家ジュゼッペ・アルチンボルドが野菜を並べて男性の顔を描いた『ウェルトゥムヌス』などの絵画芸術作品をモチーフとして扱い、服には巨大なパニエやフープが見られた。ディスはショーで中世の王朝を現代の日本に蘇らせたような(おもちゃや小物が髪に盛られ、溢れかえるヘアを見てほしい。)髪型を作り出した。巨大なパフやブレイドが立ち上げられたヘアスタイルが多く見られたが、これを『Washington Post』紙のファッション批評家ロビン・ギヴァン(Robin Givhan)は、「18世紀の盛り髪ヘアのバリエーション」と形容していた。

Photography Mitchell Sams

Molly Goddardに見た、美しい二日酔いの目
今季Molly Goddardのショーは「ギャラリーのオープニングに駆けつけた、楽しいこと好きの女の子」をベースのアイデアとして作られていた(映画『パーティ・ガール』でパーカー・ポージーが演じていたメアリーを想起させる世界観だ)。落ち窪んだような目を演出したアイメイクは前夜に飲みすぎて昼過ぎまで寝ていたように見えるし、ショーに漂うムードは贅沢なホテルパーティを終えたお金持ちの女性が部屋に戻ったときのそれそのものだった。モデルはキャットウォークで実際にシャンパンを飲んでいた。