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二元的なジェンダーを超えて:Comme Des Garçons Homme Plus 2020SS

ウィーン国立歌劇場で今年12月に上演されるオペラ『オルランド』の衣装制作を手がけることが決まったComme des Garçons。今シーズンの川久保玲は、性、アイデンティティ、セクシュアリティという3つのテーマを追究する。

by Steve Salter; translated by Nozomi Otaki
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01 July 2019, 9:55am

Photography Mitchell Sams

2019年に必要なのは、あらゆる性を愛し、性を自在に行き交うヒーロー/ヒロイン。それこそがヴァージニア・ウルフによる91年前の小説『オーランドー』の主人公だ。当時も今も鮮烈なこのキャラクターは、今年のパリ・ファッションウィークに繰り返し登場し、私たちを楽しませてくれた。6月20日に行なわれたカール・ラガーフェルドの追悼イベントでは、ティルダ・スウィントン(サリー・ポッター監督による映像化作品『オルランド』で主人公を演じた)が『オーランドー』の一節を引用し、川久保玲も同作をもとに、Comme Des Garçons Homme Plus 2020年春夏コレクションをつくりあげた。

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川久保玲が口を開けば、私たちは耳を傾ける。そして私たちは、彼女の言葉をしっかりと心に留める。彼女のショータイトルはいつも謎めいていて、詩的で哲学的だ(個人的なお気に入りは〈Body Meets Dress〉〈Dress Meets Body〉〈Lumps and Bumps〉〈Bad Taste〉〈2 Dimensions〉〈Infinity of Tailoring and Not Making Clothes 〉)。熱狂的なファンたちは、貴重なインタビューの断片をかき集めて、なんとか行間を読み取ろうとする。川久保自身が「時間の流れに伴う変化と解放」と説明したHomme Plus最新コレクションのヴィジョンは、トランスジェンダーを主人公にした最初の英語小説ともいわれる作品に基づいている。

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「『オーランドー』という1500年代に始まり、現在まで続く伝記」「ヴィタ(・サックヴィル=ウェスト)を、性別が変わるという変更を加えて描くこと」とウルフは自身の日記のなかで、1928年に出版されたこの長編小説について記している。

この作品はオーランドーというひとりのキャラクターの1588年から1928年までの冒険を描いているが、いわゆる〈伝記〉とは全く違う。これは、時と共に変化していくジェンダー、アイデンティティ、セクシュアリティにまつわる省察なのだ。

川久保は『オーランドー』の今なお色褪せることのない物語を念頭に置いて、それを自身のコレクションに織り込んだ。その結果、二元的な性を超え、時の概念を歪ませるような、私たちの感性を揺さぶるコレクションが完成した。

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彼女が提示したのは、エリザベス朝からクラブのダンスフロアのアイテムまで、全く異なる時代のアイテム。フロックコートにはドレスとNikeエアマックス95を組み合わせ(Nikeがこのモデルのシルエットの変更を許可したのはこれが初めてだ)、さらに、ブランドロゴをあしらったパールのネックレス、フリルの隙間からへそがのぞくシャツなど、ファッション史に何度も登場してきたアイテムが、大胆かつモダンにアレンジされていた。

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『オーランドー』を今、再び紐解くのに川久保玲以上にふさわしい人物はいない。Comme des Garçonを率いる女王は、50年にわたって衣服のルールを捻じ曲げ、打ち破ってきた。彼女は今でも挑戦を続け、大胆なリファレンス、シルエットの改革、革新的な技術によって、現状に挑み続けている。

2017年、ニューヨークのメトロポリタン美術館で開催された展覧会「Comme des Garçons: Art of the In-Between」は、先見の明をもつ彼女の反逆的なファッションを称えたが、彼女の革命はさらに続くのだ。

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オペラ『オーランドー』のワールドプレミアは、今年12月に開催される。作曲を担当するのは、ウィーン国立歌劇場が指名した初の女性作曲家、オルガ・ノイヴィルト(Olga Neuwirth)。Comme des Garçonsが担当する衣装は、それまで目にすることは叶わないが、このコレクションは、それと同じくらい大胆に違いない、社会的に抑圧されているアイデンティティを解放し、自由を祝福する魅力的な服を垣間みせてくれた。 Louis Vuittonのヴァージル・アブローJW AndersonLoeweのジョナサン・アンダーソンも、二元的なジェンダーからの解放に挑んだが、川久保玲ほど大胆かつ見事に成し遂げたデザイナーはいない。

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Credits

Photography Mitchell Sams.

This article originally appeared on i-D UK.

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