Photography @mitchell_sams

パリをふしぎな遊び場に変えたヴァージル・アブロー:Louis Vuitton 2020SS

LVロゴが印象的な、空気で膨らませるビニール製の城が出迎えてくれたLouis Vuitton2020春夏コレクションのショー会場となったドフィーヌ広場。パリらしい風景が広がる広場はストリートパーティの会場へと姿を変え、私たちはヴァージルの目を通してふしぎの国を垣間見た。

by Steve Salter
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02 July 2019, 7:11am

Photography @mitchell_sams

シカゴ出身のヴァージル・アブローLouis Vuittonのメンズ アーティスティック・ディレクターとして独自の新しいヴィジョンを初披露してから1年が経つ。パレ・ロワイヤルを虹色のランウェイに変えたデビューコレクションの会場には2000人のゲストが集まり(そのうち600人はファッション、アート、デザイン、建築を学ぶ大学生たち)、彼らは56名の多様なモデルが、ラグジュアリーを新しい世界へと導くさまを目撃した。

2シーズン目のショーのテーマは、私たちが生きる世界に、希望、多様性、美を見つけることだった。彼のメッセージはこの1年、ずっとブレていない。

「僕は多様性を、そして、現代においてラグジュアリーがもっと広がりをもったものになる可能性を信じているんです」とヴァージルは6月20日に語った。「その信念のもと突き進んでいくつもりだし、少年としての完全無欠の自由、常に学び続けるその姿勢、そういった感覚は持ち続けていきます」

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規範と規範のあいだを軽やかに躍び跳ね、ファッションからアート、インテリアから音楽、と物事の境界線を曖昧にする。そうやって彼は、常に自らに挑んできた。昔から突出していた学習意欲。彼らしさを構成する、少年のような素朴さ。みんなに伝染するほどに強力なエネルギー。3シーズン目となる2020春夏コレクションで私たちは、彼の目を通してふしぎの国を垣間見た。

「想像してみてほしい。1種類の花で埋め尽くされた庭。日光の輝きがない日の出。ずっと昔からある教会の尖塔が突然姿を消した地平線」ショーノートは私たちをこういざなう。「馴染みがあると、私たちは何よりもすばらしい物事を当たり前と思ってしまう」

失われた尖塔とは、ノートルダム大聖堂のことだ。もともとヴァージルは、今回のショーの会場をノートルダムの目の前にしようと考えていた。「あの尖塔が崩れ落ちたとき、ここにあるものをここにいるときに大切にしなければ、と強く感じました」

「毎日ルーブル美術館のそばを通っているかもしれないし、ノートルダムのそばを通っているかもしれない。エッフェル塔だってそうかもしれない。そのときは、自分にはそれらをみている暇がない、と思う。でもそれらが失われたとき、心に衝撃を受けるんです」とヴァージルはプレビューで語った。

ニュースの話題がノートルダムの火災で持ちきりだったあのとき、世界中から哀しみの声が寄せられたのは、まさにその心理が働いていたからだ。そこでヴァージルは、2020年春夏コレクションで私たちをいちど立ち止まらせ、バラの香りを楽しもう、自分の周りの世界を享受しよう、とメッセージを送ることにした。

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ショーを通して想起するのは、パブロ・ピカソの有名な言葉。「すべての子どもは芸術家だ。問題は、大人になってしまったとき、どのように芸術家でい続けるか」。さながらファッション界のピーターパン。ヴァージルは今シーズンの招待状として、凧づくりキットを送付した。最後に凧あげをしたのはいつだったか思い出せなくても、LVモノグラムがあしらわれた凧をあげたくないひとはいないだろう。

ショー会場は結局ノートルダムの目の前ではなく、写真付きポストカードでよくお見かけするドフィーヌ広場となったが、Louis Vuittonはその場所を、ストリートパーティの会場に変えた。LVロゴが印象的なビニール製のお城が私たちを迎え、クレープスタンド、アイスクリーム屋さん、風船、シャボン玉などが空間を彩った。

ゲストたちはLVモノグラム入りのフラッグを手に持ち、様々なカフェのテラスに設けられた席へつく。フランク・オーシャン、スケプタ、ジジ・ハディッドをはじめとする一流セレブたちはLVモノグラム入りの大きなベンチに座って、子どものように地面から浮いた両足をブラブラと揺らしている。

「ユースはグローバル」とヴァージルは今シーズンver.の「ヴァージル・アブロー的語彙集」のなかで語っている。「私たちはひとつ。私たちは世界」

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彼のコレクションは雄弁で、子どものような奇抜な感覚と呼応し、流れるようなテーラリング、フラワーの魅力、技術的な変形など、遊び心のあるデザインに溢れている。昨シーズン、ヴァージルは、規範的なものを特別な何かに変えるには〈3%〉のひねりが必要、と述べた。今シーズンは、隠れた要素の遊び心のある性質を示す〈peekamorphosis(ピーカモーフォシス)〉という言葉を発表し、この割合はさらに強調された。

自分の周りの世界をじっくりと観察するヴァージルは、今回、ファッションにおける定番モチーフであるフラワーに注力した。

「花には様々な表情があり、表現も動きも変化も自由自在」とショーノートには記されている。「僕は多様性を表現するメタファーとして花を取り入れています」とヴァージル。「咲き誇るその花々は、ミクロレベルでもマクロレベルでも同様の美しさを放ちます。どうしてこんなにも綺麗なのか?」

ローズカラーの官能的なスーツから、ボタニカルプリント、生花を編みこんだアクセサリーまで、ヴァージルの花園は、今が見頃だ。そしてLVにおける彼の最初のアイテムであるハーネス(のちにティモシー・シャラメがゴールデングローブのレッドカーペットで着用して有名になる)に満開の花があしらわれて登場したとき、花は最大限のエネルギーを発揮していた。これをレッドカーペットで最初に身につけるのは誰だろう?「ひとつとして同じ花はない」とヴァージルはいう。人間もそうだ。

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「多様性を尊重し、偏見をもたず、さまざまな地位の人たちに敬意を払う。そういう現代的な考えが、僕の信条に訴えかける」。ヴァージルはかつて、i-Dのインタビューにこう語った。「それこそ、僕が作品づくりにおいて追求する、核となるもの。このメゾンで、この地位についた僕には、これからの社会の可能性を表現する責任がある」

今コレクションには、性別を超えるシルクスカートをはじめとする〈ストリートウェア vol.2〉と呼ぶべき着心地の良い日常着から、裏地なしで着られてしまう変形したテーラリング、ナイロンバッグなど、全てがあった。ショーの最後を飾ったのは、モノグラムの箱型カイトを背負った、LAを拠点とするアーティスト、デルフィン・フィンリー(Delfin Finley)。そう、不可能などないのだ。

今回のショーでは、イングランドのサッカークラブチーム、アーセナルでDFとして活躍するエクトル・ベジェリン(Hector Bellerin)が、フューシャのレザーフーディをまといランウェイデビューを果たした。彼はショーのあと、こんなツイートをした。「不可能だ、なんて誰にもいわせるな」

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Credits

Photography Mitchell Sams

This article originally appeared on i-D UK.

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