Keith Haring. Image courtesy Getty/Corbis Historical/Nick Elgar

バスキアやウォーホル、ダリは何着てた? ファッションは偉大な芸術家たちに学べ

キース・ヘリング、ジャン=ミシェル・バスキア、シンディ・シャーマン、アンディ・ウォーホル、フリーダ・カーロ━━伝説的な芸術家たちが何を着ていたのかを解き明かす著作『Legendary Artists and the Clothes They Wore』が刊行。

by James Anderson; translated by Ai Nakayama
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10 October 2019, 4:28am

Keith Haring. Image courtesy Getty/Corbis Historical/Nick Elgar

1990年代、インターネットが雑誌の姿を変革してしまうずっと前、テリー・ニューマンはi-Dでショッピングエディターを務めていた。時は流れて2019年現在、彼女はファッション講師/作家として活躍している。

彼女の最新著書『Legendary Artists and the Clothes They Wore』は、長らくファッション界に身を置いてきた彼女の集大成だ。過去および現在のアーティストたちのワードローブを詳細にわたって調査した結果が集められた本書は、彼らの衣服、アクセサリー、ヘアスタイルだけではなく、具体的なリファレンスやコラボプロジェクトを参照し、彼らのスタイルや作品が、古今東西のファッションデザイナーたちにどんなインスピレーションを与え続けてきたかを明らかにしている。

数々の貴重な写真、ストーリー、発言、逸話を収録した本書では、業界を代表するファッションスターだけでなく、キース・ヘリング、ジャン=ミシェル・バスキア、シンディ・シャーマン、マリーナ・アブラモヴィッチ、ロバート・メイプルソープ、リー・バウリー、アンディ・ウォーホル、フリーダ・カーロなど、i-Dでもフィーチャーしてきた画家、写真家、パフォーマンス/インスタレーションアーティストたちが登場する。

扱われているブランドも、Comme des Garçons、Martin Margiela、Marc Jacobs、Raf Simons、Vivienne Westwoodなど実に豪華だ。

誰もが愛するカルチャーアイコンたちが紡いだファッション史を深く探り続けるテリーに話を聞いた。

leigh Bowery
Leigh Bowery. Image courtesy Getty/Redferns/Kerstin Rodgers.

──アーティストといえば、一般的に薄汚い格好だったり、服に絵具が飛び散っていたり、とスタイリッシュなイメージがないというひとも多いですが、実際はどうなのでしょうか。

私がみてきたアーティストのワードローブは、彼らの性格や作品をさまざまな意味で反映しています。たとえば、ロバート・メイプルソープのスタイルは「こぎれいでタフ、アンドロジェニックでブッチ」と称されていました。ボロボロのレザージャケットに、セクシーなポエットシャツ、ビーズの首飾りを身につけた彼は、男性のヌードと美しい花々がリンクするかのように表現したフェティッシュな写真を撮影しました。

草間彌生は、トマトレッドのボブヘアとドット柄の衣服で、自らがさながら〈歩くキャンバス〉。そのスタイルは自身の作品だけでなく、Louis Vuittonとのコラボなどファッションにも反映されています。彼女は、小汚い格好をしようと思ったことなんてないと思います。

──2年前に発売された前作『Legendary Authors and the Clothes They Wore』では、有名作家のファッションをテーマにしていました。やはりアーティストは作家に比べて、自らのイメージに意識的だったり、実験的な格好をすることが多いのでしょうか?

アートの世界で重要なのは、自己表現とイメージの力。なので当然ながら、アーティストは自分が他人に与える印象に意識的ですし、そんなの気にしてない、というふりをしていても実際は気にしていると思います。アーティストと作家それぞれのファッションを研究することで、それぞれの才能たちの趣味嗜好が垣間見れる。

ワードローブをすごく意識的に選んでいるアーティストもいますし、逆に直感で選ぶアーティストもいます。たとえばシンディ・シャーマンは服が大好きで、フロントロウの女王ですよね。自分が好きなものもわかっていますし、デザイナーブランドも好んでいる。アート、またはファッションショーのためにドレスアップすることは、彼女にとってすごく自然なことのようにみえます。作家はそれとはまたちょっと違いますが、それでもやはり自己表現的な要素はあって、それが興味深いです。

Warhol
Andy Warhol. Image courtesy Getty/Ullstein Bild.

──若い頃のあなたは誰のスタイルに憧れていましたか? そのスタイルは、彼らの作品、そしてイメージやライフスタイルと関連していたのでしょうか。

私はずっとオノ・ヨーコに憧れていました。彼女のコンセプチュアルなスタイルは最高にクールだと思ってましたし、彼女の髪型もサングラスも好きでした。彼女のイメージも作品も、洗練されていて魅惑的です。

ニキ・ド・サンファルを知ったときも心を奪われました。ジャンプスーツを着用し、ライフルを構えた彼女の姿はアートそのもの。私はジャンプスーツは着ませんが、ジャンプスーツをまとう彼女はすばらしいですし、その決然とした姿勢は私のインスピレーションとなりました。彼女とアンディ・ウォーホルとのStudio 54でのツーショットも好きでした。彼女がラメのターバンを巻いている写真です。

──90年代、あなたがi-Dのエディターとして活躍していた時代に、当時のファッション業界に影響を与えていたアーティストは誰ですか? また、彼らの何がいまだに印象に残っていますか?

NYのアンダーグラウンドを代表するアーティストたちの影響力がかなり強かったと思います。今も強いですしね。たとえばロバート・メイプルソープ、キース・ヘリング、バスキア、ウォーホル。彼らはアートを、その時代を象徴するもの、ファッショナブルなものとして提示し、アウトサイダーにスポットライトを当てました。それは新鮮で、90年代のi-Dの精神と合致したんです。

それに彼らのスタイルもクールでしたし、それ自体に価値がありました。バスキアはComme des Garçonsのモデルを務めましたし、ヘリングはNikeのAir JordanにミッキーマウスのTシャツを合わせていました。

Rodchenko
Image courtesy The Norman Parkinson Archive/Iconic Images.

──本書では一流アーティストが数々登場しますが、特に世界に大きな影響を与えたのは誰のスタイルだと思いますか?

ルイーズ・ブルジョワですね。圧倒的です。ヘルムート・ラングは彼女とのあいだに「強く絶対的な絆」があると語りましたし、彼女はメイプルソープが撮影した広告の被写体も務めています。ファージャケットを着て、ゴムでカバーされたペニス型の彫刻作品を脇の下に抱えている写真です。彼女と川久保玲の作品にも、偶然の一致が多くあります。それは2017年にメトロポリタン美術館で開催されたComme des Garçons展で指摘されていました。

また、私はリー・バウリーの大ファンで、アートとファッションが混ざり合う彼の奇妙なワードローブも、インスタレーション作品も大好きなんです。それも多くのひとのインスピレーション源となっています。アレキサンダー・マックイーン、リック・オウエンス、マルタン・マルジェラなどは皆、リーの作品をさまざまなかたちでサンプリングしています。彼のクリエイティビティはこだわりが強く、新奇です。史上最高のデザイナーたちからもその価値を認められ、数々のオマージュを捧げられています。

──スタイルにタイムレスな魅力があるのは誰でしょう?

本書に収録したアーティストたちは、どの時代であってもみんな、ファッションのシステムから飛び出してなお魅力的なスタイルをもっていると思います。彼らがまとった衣服は、彼らのアイデンティティのいちぶなんです。ひとが着るものというのは、だからこそ面白い。だからこそ彼らは多くのデザイナーのミューズとなったんです。

よくLevi’sやLeeのジーンズに白のTシャツを合わせていたジャクソン・ポロックは、破滅的でとことん急進的で、まさにアート界のジェームズ・ディーンでした。彼のスタイルはとても現代的で、今見てもカジュアルな着こなしです。いっぽう、ダリやデュシャンのワードローブは都会的なテーラードスーツで、コレクションに登場してもおかしくない。でもアーティストのファッションは、世間のイメージとは違い、デザイナーファッションが多いんです。たとえばリー・ミラーはフィービー時代のCeline、ニキ・ド・サンファルはDior、メイプルソープやウォーホルはRaf Simons、などのように。

Mapplethorpe
Robert Mapplethorpe. Image courtesy Getty/Redferns/Leee Black Childers.

──あなたはキース・ヘリングやロバート・メイプルソープのオリジナル作品を所有していると噂を聞きましたが…。

私が学生の頃、夫のアンドリューとふたりで好きだったのがグレイス・ジョーンズの写真なんです。キース・ヘリングが彼女にペイントを施し、ロバート・メイプルソープがその姿を撮影した写真。私たちはその写真のポストカードを、ふたりで暮らしていた小さなワンルームの壁に貼っていました。幸運なことに、その後何年も経って、オリジナル写真を購入することができたんです。ギャラリーにあったメイプルソープのセルフポートレートも気に入り、購入しました。

キース・ヘリングの作品も長年かけていくつか手に入れました。私のお気に入りは、地下鉄に施され、その後剥がされたチョークのドローイングです。オークションで購入しましたが、チョークがかなり薄くなっていて、持って帰ったときに修正液か何かでなぞったほうがいいかな、と思ったりもしました。ヘリングの卓越した、同時に一風変わった作品は世の中にたくさんあるんですよ。彼は優しくて寛大なひとだったので、子どものキャップにドローイングをしたり、誰かに頼まれれば必ずスケッチを描いてあげていました。彼の信条は「すべてのひとのためのアート」でしたからね。

Haring
Keith Haring. Image courtesy Getty/Corbis Historical/Nick Elgar

──アートとファッションの融合という点において卓越しているとあなたが考えるコレクションといえば?

私はスキャパレリとダリのコラボが大好きです。1937年に発表された、シュルレアリスムを体現する、かの有名なロブスタードレスはすばらしいですし、2014年にMartin Margielaのクチュールで登場した、ビーズでこのドレスを再現したアイテムもすてきです。1983年のVivienne Westwoodの〈Witches〉コレクションも、全アイテム集めたいくらい。このコレクションの服は、ヘリングが描いた蛍光色のグラフィティや魔術的なイメージで装飾されているんです。2009年のLouis Vuittonとスティーヴン・スプラウスのコラボで発表されたネオンのハンドバッグも最高。

でも私が特に好きなのは、ファッションがファッションの枠を超え、それ自体がコンセプチュアルなアートへと変身しているようなコレクション。たとえばComme des Garçonsの1997年春夏コレクションの〈Lumps and Bumps〉や、2000年のHussein Chalayanのテーブルドレスコレクション。あとは回る台の上に立つシャローム・ハーロウの白いドレスが機械でスプレーペイントされていく演出が印象的だった1999年のAlexander McQueenも。

──本書執筆のための調査でわかった新事実があれば教えてください。

1989年、パリのリッツホテルに宿泊していたキース・ヘリングが、ホテルのレストランでハイカットのスニーカーを履いていて、「ちゃんとした靴」を履くよう何度も注意されたこと!

Legendary Artists and the Clothes They Wore is published by Harper Design

This article originally appeared on i-D UK.

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