新たな岐路に立った女王蜂

活動再開後、ドラマ主題歌を歌い、全国ツアーを開催、そして今度は最高傑作と断言する2年ぶりの最新アルバム『Q』を発売。勢い余る謎多き女王蜂に迫る。

by Aya Tsuchii
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11 April 2017, 2:40am

心にすとんと落ちてくる歌詞、破壊的なメロディー、そしてその隙間からは繊細さも垣間見える。女王蜂の音楽は儚さ、絶望、希望、そしておとぎ話の世界と現実が絡み合っている。彼女らの約2年ぶりのニューアルバム『Q』が4月5日に発売した。謎に包まれた女王蜂の中核、ヴォーカルのアヴちゃんに今の心境を訊いた。

女王蜂を結成したのはアヴちゃんが学生の頃、当初は神戸で活動をしていた。そもそも彼女が音楽に興味を持ったのは中学生の時だったという。「perfumeが好きだったんです。私もあんな風に歌って踊りたかった。だから思いきって大阪のアフタースクールに電話したんです。そしたら"もう遅い"と言われました。私はステージに立つ人間ではないんだと思い、その後は悶々と学生生活を続けていて。でもある日突然、心が弾けるようにギターとエフェクターを買ったんです。そしてバンドを始め、学校の文化祭で思いっきりパフォーマンスをした。校内で1番の人気バンドになりました。それからライブハウスで歌い始めました。その頃結成したのが女王蜂です」とバンド結成までの経緯を語る。それは2009年の時だった。そして2011年にはメジャーデビューを果たし、その鮮烈な存在感を放つ新進気鋭の新人アーティストはメジャー界を揺るがした。「2度目のライブで今の事務所の人が目をつけてくれたんです。その後は全てがあっという間に進んでいきましたね。新人アーティストの登竜門と言われているフジロックの"ROOKIE A GO-GO"にも参加させてもらい、結成1年半でメジャーデビューが決まり。全てがトントン拍子に進みすぎていましたね」。彼女たちは一気に階段を駆け上がり、スポットライトを浴びるようになったのだ。そしてメンバーはメジャーデビューと共に拠点を東京へと移したのだという。

バンドの露出が増える一方、彼女たちの音楽技術や自身の成長が比例せずギャップが生じ、周りのプレッシャーにも押しつぶされそうになったという。大きな壁にぶち当たり、2013年に活動休止を余儀なくされた。「みんな音楽初心者で、楽器経験者ではなかったんです。気づいたら多くの人たちが私達の周りに集まっていて、バンド名だけがどんどん先へ先へと突っ走っていってしまっていました。私達の技術が追いついていなかった。毎回、ライブの度に投身自殺をする思いだった。本当に命がけで、完全燃焼していました。今振り返ってみれば、活動を休止するのも当たり前でしたね」と、当時の状況を話す。「メンバーがつぶれていってしまった。女王蜂は、10代のきらめきと若いエネルギーで突っ走ってきたバンド。当時は音楽的にというよりは、そのシステムを買われていたような気がします」

「再び活動するにあたって、以前のような勢いだけではダメだと思いました。もう一度女王蜂をみんなに認めてもらうためには、自分たちの実力を上げる必要がありました。製作やライブなど、全てのクオリティーを高め、よりチャーミングでいるためにはどうすればいいのか。休止中は、バンドのことを見つめ直すとても貴重な時間でした」と彼女は真っ直ぐにバンドを見つめ、向き合った。そして約1年の休止を経て、2014年に活動を再開した。彼女は、「女王蜂」がどうあるべきなのか、その存在意義を唱える。「女王蜂は、エッジーで異端なバンドだと思われやすいのですが、私たちはそう思っていません。尖った表現をしているなんて1度も思ったことなかった。いつでも時代や、今のシーンのコアを表現していたつもり。それは未熟で突っ走ってきた頃からずっと今も変わらない。今、バンド結成から8年が経ち、バンドが成熟してきたことを実感しています。最新のアルバムが完成した時、やっと今の音楽のコアを表現できたと思えました」とバンドとともに成長してきたアヴちゃん。今回のアルベムへの自信も見せる。

アヴちゃんは、歌って踊るアイドルやポップな音楽ではなく、なぜバンドという道を選んだのか。「バンドは、曲作りからジャケットのデザインまで全部自分たちで手がけるので、自分の中にあるものを具現化し、そこから見えてきたものを表現するツールとして最適でした。私は私の持っている力というか、他の人より強い表現力を持っていることは幼い頃から感じていました。5~6歳の頃、運動会で走っている絵を描いたんですけど、ある日その絵が突然動いたんです。絵が動いたことに気づいてから、今度はある悪夢に毎日うなされるようになって。私には、私の中にある何かを表現する必要がありました」と幼い頃の不思議な体験を交えバンドの存在の大きさを語る。彼女は、表現することに対しても断固たる姿勢で臨んでいる。「作品を作ることがどれだけ責任を伴うのか、音楽や絵は重量がないものだけど、とてつもない支配力があるんです。曲は私の知らないところに一人歩きしますしね。人一人作り出すくらい責任重大なことなんです」

女王蜂という名前の由来はなんだろうか。「いろいろあるのですが、ファンの子が作った俗説が気に入っています。虫のアブっているじゃないですか。とても蜂に似ているんですけど。アブは蜂に憧れすぎて、蜂とそっくりな様相になったという話があるんです。蜂は刺すけど、アブは噛む。そのファンの子が私に"アヴちゃんは、アブなんだけど、蜂として女王になろうとしているんじゃない?"って言ったんです。なるほど、と思いました」

彼女は作詞作曲、ジャケットのデザイン、そしてプロデュースまで、全て自らで手掛けている。「1曲仕上げるにかかる時間は3~5分。いつもなぐり書きです。思いのままに一気に書き上げたものの持つ力、そして手書きの持つ力ってすごいですよね。修正箇所は、いつもレコーディングの時に言葉尻を合わせるくらいなんです。PVの制作も、私がイメージや案、ストーリーを考え、いろいろと関わっています。頭に思い浮かぶアイデアは、映画一本分くらいの量があり、とてもボリューミーなんです。なので、大体早回ししたり、要約したりしています。音もトリートメントしすぎず、粗さやタッチを大事にしたい。"上手い"と完璧に仕上げるのは簡単。でも、美しさの中に謎や祈り、呪いを表現することはなかなかできない。『モナリザ』の微笑みが持つ不思議な力のような」。「女王蜂」には、彼女のこだわりが詰まっている。深く複雑な、言葉で言い表せない表現を追求し、音やリズムなど、その全てが細部まで計算され作られているのだ。

アルバム『Q』については、「女王蜂って、ピンヒールを履いて何かを守りながら戦っていたんです。眠れる森の美女で例えるなら、眠っている姫を守るため、王子を阻むためにいばらを敷いたいばらの魔女。私は、笑われたくないと思って防御のためにピンヒールを履いていた。私の中で眠っていた"少年"を守るためのピンヒールだったんです。でも、眠っているはずのその少年は眠ってなんていなかった。本当は全部起きて見ていたの。実はその少年は、とても強く、守られる必要などなかった。今回のアルバムは、彼が初めて筆をとって完成させたのです」とアヴちゃんの中に潜んでいた新たな少年の存在を明かす。「本当は別の曲を製作していて、準備もできていました。でもある日『Q』という歌が完成したので、準備していた曲はお蔵入りにしちゃいました。たまたま9曲できたんですけど。"究極"のキューでもあって。きっと私の中にいる少年は、いろいろ計算しているのかも。それに、ジャケットにもこだわりました。これは、少年が目覚めた瞬間なんです。スイッチが入ったような。この撮影のために4~5kg痩せました。特殊メイクを施しているんですけど、レタッチはほとんどしてないんです。やはり、音と同じで粗さを残しました」。少年の登場により、「女王蜂」は新たなスタート地点に立ったよう。そしてバンドが次のステップへ進むように、背中を押したのも彼なのだろう。とにかく今回のアルバムは、バンドにとって重要な1作であることは間違いない。

女王蜂の強さと脆さはアヴちゃんを鏡に映しているよう。「私は、何かが上手くいかなくても、国籍や性別のせいにしたり、人のせいにしたくない。何かのせいにして、私は運が悪かったと思いたくないんです。それに、誰かのせいにしても始まらないしね。」揺るぎない信念を持っている。「LGBTって言葉も、なんでストレート(STRAIGHT)のSが入ってないのかわからないんです。BOY MEETS GIRL / GIRL MEETS BOYがあるなら、BOY MEETS BOY/GIRL MEETS GIRLもあるはず。禁断の恋が報われないなんて、やってみなきゃわからないでしょ?今回のアルバムは、こういう風に、私が普段感じたことや思ったことをひたすら書き連ねました」。現代社会に蔓延る様々な境界線を彼女たちは平気な顔をして超えていく。「職業や性別など、そういったラベルをはがしていきたいな」。そう話す彼女にはタブーを破るパワーが宿っているようだ。

アルバムのキーワードにエロス(生)とタナトス(死)がある。「友達と遊んで朝帰りして、ふと太陽を見ると、夕暮れか朝焼けかわからないんです。その瞬間、とても美しいと感じる。嬉しくて涙が出ちゃったり、悔しくて笑えてきたり。そういう2つの真逆な感情が生まれるのってすごいことだと思う。生と死も同じこと。終わりは始まりなんです。生まれるってことは死へのカウントダウンってこと。私は阪神淡路大震災を幼少期に経験しているので、街が本当に灰色になった瞬間を目の当たりにしました。あの体験が私の中でとても大きかった。でも悲しいという感情だけではなく、いたってフラットに生きています。どんなに悲しんだって、今まだ生きているし、生きていくしかない。今やるしかない。それに悲しいことだってどんなことだって、いつかは思い出になるし」

女王蜂のためならなんでもできると断言する。「女王蜂のためなら、普段できないこともできる。減量のために8kmだって走れるし、漫画も描けます。今回、初回盤には漫画の歌詞カードが付いています。何か新しいことにチャレンジしたくて。あまりにアルバムがあっという間に完成しちゃったので、どうやって聞いてくれる人にストーリーを伝えようかと考えた時、漫画だと思いました。レコーディング中にメンバーのみんなで1曲ずつ仕上げたんです。全部で53ページかな。やろうと思えばなんでもできるけど、マルチに活躍するというのではなく、やっぱり女王蜂はバンドでありたい。便利屋になるのではなく、一線は守っていたいんですよね。音楽をフィジカルに表現できるのはやっぱりバンドなんです」と何よりも女王蜂を大切に、そしてあるべき姿をしっかりと見据えている。彼女を突き動かすものは何か。「私は極力全ての感情を知りたいと思っています。男の子の気持ち、女の子の気持ち、悲しい、嬉しい、貧しい、裕福な感情など、可能な限り、すべてを知りたい」と笑顔で言った。

女王蜂ニューアルバム『Q』発売中

女王蜂 全国ワンマンツアー2017「A」
2017年4月14日(金)大阪府 なんばHatch
2017年4月29日(土・祝)広島県 SECOND CRUTCH
2017年4月30日(日)岡山県 IMAGE
2017年5月6日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
2017年5月12日(金)埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
2017年5月13日(土)千葉県 KASHIWA PALOOZA
2017年5月25日(木)京都府 磔磔
2017年5月27日(土)香川県 DIME
2017年6月2日(金)宮城県 darwin
2017年6月3日(土)岩手県 Club Change WAVE
2017年6月11日(日)石川県 Kanazawa AZ
2017年6月25日(日)愛知県 THE BOTTOM LINE
2017年7月2日(日)東京都 Zepp DiverCity TOKYO

Credits


Photography Kodai Kobayashi
Texy Aya Tsuchii

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