インドの若手女性アーティストたちの挑戦

インドで活躍する15人の女性アーティストが参加した『Girls Only India』展。キュレーターのマーシュがi-Dのために参加アーティストたちにインタビューを行なった。

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06 May 2016, 6:00pm

poulomi basu

Girls Only India』展は、Girls Onlyの発起人でもあるイギリス人キュレーター、アントニア・マーシュ(Antonia Marsh)による最新の展覧会だ。写真からペインティング、パフォーマンスアート、彫刻、ドローイング、詩まで、多様な手法と表現をふんだんに盛り込んだこの展覧会は、インドで活躍する女性現代アーティストたち15人の作品を展示している。ロンドン、コペンハーゲン、そしてニューヨークで個展を終えたマーシュだが、自分以外の女性アーティストたちを祝福し、サポートすることにも注力している。

ボンベイの共有ワークスペース、Ministry of Newにオープンした『Girls Only India』展は、夏にロンドンのCob Galleryに巡回することも決まっている。i-Dは今回、この展覧会から選りすぐった作品を紹介するとともに、マーシュが参加アーティストの3人にインタビューした模様をお伝えする。

Shreya Dev Dube

ヴィダー・ソーミヤ(Vidha Saumya

あなたの作品に出てくる女性は全員くしゃみをしていますよね。快感と苦しさが混じりあった瞬間を捉えようというアイデアはどこから来ているのですか? 
このシリーズは、スタジオポートレート写真への賛歌です。この作品に登場する女性は丹念にメイクをして、髪型も整えて、見栄えのする壁紙の前で撮影されるのを待っているところです。私はどうすれば彼女たちがよりドラマチックになるか、自問して、"混乱"の要素を作中に入れたいと考えるようになりました。彼女たちのくしゃみによって、待機時の静けさがかき乱されるのです。あなたがさっき言ったように、ひとがくしゃみをするときは、最も無防備でありながらも早く開放の快楽を味わいたいと願う状態です。コミュニケーションを取ったり、他のことをすることもできません。タイトルをつける段になって、世界で起こった大規模な自然災害の名称を調べたのですが、どれにも女性の名前が付けられていることに気づきました。不条理な一致を突き詰めていくと、コミカルな状況になります。女性が自分たちを笑い飛ばせるようにと思って作りました。

他の作品では、体に関する政治的問題やボディイメージ、セクシュアリティなど本質的な問題について触れています。女性アーティストとして、インドでこのような作品を発表するのはどうのような体験でしたか?
声を上げれば、聞いてもらえる可能性は高くなる。私は、現時点においては作品、主にドローイングを通して声を上げています。そのようなアイデアを表現できる自由があること、そして、私が解っていることに関して表明できる声をもっていることをありがたく思います。対立させるのが作品の意図ではありません。対話へ導くようなものでありたいと考えています。

Julianna Byrne

Jinal Sangoi

シュレヤ・デヴ・ドゥベ(Shreya Dev Dube

今回、あなたは過去10年のフォトグラフィーを展示していますが、それは精神的に精神自浄のようなプロセスでしたか? それともストレスを感じる行為でしたか?
はじめは、10年のあいだに撮りためていた写真につながりを見出せず、とても悩みました。私の目も常に成長しているからです。ですが、興味深いことに被写体との関係のあり方は昔から変わっていませんでした。

ミャンマーで映画撮影をした経験について聞かせてください。3年後の今、撮影をしたら作品は違っていたと思いますか?
2013年、ミャンマーにいたとき、「50年前のインドはこんな感じだったんだろうな」と思いました。多くを持たず、でもそこに暮らす人々は寛大で優しさに満ちているという場所に、それまで行ったこともありませんでした。彼らは、写真を撮っているのが女性とわかると興味津々で、プライベートな場所に連れて行ってくれて。3年後の今でも、本当に起こったことだったのかなって思うくらいです。今は観光地化が進んで、人々も写真を撮られることに慣れてしまっているかもしれないですし。

Poulomi Basu

Vidha Saumya

アクイ・ターミ(Aqui Thami

ポスターに「女性がここで性的いやがらせを受けた」という言葉を添えた意図は何ですか? また、作品の展示場所はどのようにして決めたのかを教えてください。
あの言葉を入れたのは、公共の場でのハラスメントが、私たち女性に「どこへ行っても誰かに見られている」という消えない居心地の悪さを感じさせ続けているからです。それが昔から変わらずに続いている現状や、どれだけネガティブな感覚を女性たちに抱かせるかについて、多くの人が理解していないことにも驚くばかりです。心的・身体的な苦痛だけではなくて、公共の場でのハラスメントは女性たちの行動を妨げ、公共の場へアクセスする権利を侵害する行為なのです。ジェンダーの不平等と、公共の場からの女性を除外することは、都市環境のパブリック空間をどんどん男性化させていくでしょう。そうなると、女性は社会的地位を得るために型にはまった女性像を演じなければならなくなる。公共の空間は安全だと思われています。私自身がハラスメントを受けた場所にこのポスターを貼って回ることで、「安全」と信じて疑わない公共スペースへの認識を問い直し、ハラスメントについて話し合うきっかけになればと思っています。バンドラやフォート、コラバ地区、チェンブールといった、私がよく行く場所にも貼りました。

この作品はあなたの個人的な思いから作り出されたものですか? それともインド女性、もしくはより一般的に世界の女性の気持ちを代弁しているのでしょうか?
個人的な思いです。パブリックな空間でハラスメントを受けて孤独を感じたり、傷ついていたり、「自分が招いた事態なのかもしれない」と悩んでいる女性がいるかもしれない。そうした女性たちとコミュニケーションしたいという私の個人的な情熱から生まれた作品ですから。彼女たちと団結したいという思いがあると同時に、ハラスメントがもつネガティブな影響を認識せずに日常的な出来事として捉えている男性たちとの接点を見出したいという思いもありました。この集団的な女性特有の体験が語られることはほとんどありません。沈黙の文化です。誰かが発言したとしても、声を潜めて語られます。"礼儀正しい女の子になれ"と育てられる私たちは、ハラスメントを受けても、社会的な地位を守るに、それを無視してその場を立ち去るよう教え込まれている。こんな風に一般論として語れるほど、私の周りでハラスメントを受けたことがない女性は誰一人としていません。だから、私の行っているような表現や活動は、インドだけでなく、世界的にも重要な意味があると考えています。若い女性たちは、私たちのように「これが世の中だ」「男だからしょうがない」なんて思わずに育って欲しい。男の子たちも、女性を性の対象として扱って良いなどと思わずに育つべきです。家父長制社会は誰もが傷つく結果を招くし、この体制的な暴力はもう終わりにしなければならなりません。私の作品は、それについて声を上げるための小さな試みです。

Poulomi Basu

Shreya Dev Dube

Credits


Text Tish Wienstock
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.