Underworldのカール・ハイド、自伝的写真集への思いを語る

写真集であり、自伝でもある『I Am Dogboy』に詰まった思いとは? 出版記念で来日していたカールにインタビューを行った。

by Minako Shimatani
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21 November 2016, 4:00am

金髪のショートヘア、ストライプのニット、フォトグラファー奥脇に向かって機敏でファンキーなポーズを取る、ステージ上と変わらないカール。常に走り続ける彼にとっての『I Am Dogboy』とは、36年間ともに活動を続けるリック・スミスとの素晴らしいパートナーシップを書き記したものだという。

この度リリースされた写真集『I Am Dogboy』について教えてください。
これは写真集ではなく、写真も挿入されている"自伝"なんだ。16年間続けているブログのコンピレーションだよ。ブログには、音楽を始めたときからUnderworld初期の頃の自分、路上で撮った写真、歌詞を作る初期段階のアイデアなどを毎日書き留めているんだ。本を形にしていくプロセスで、内容にパーソナルな要素が強いことに気付いたから、その部分をよりみせる"自伝"にしたんだ。各ページにそのときに聞いてた音楽を載せているんだけど、3歳から10代に聴いていた音楽も載っているよ。ちょっとしたプレイリストになると思う。

その時代毎に聞いていた音楽を覚えているんですか?
音楽はとても大切なもの。自分にとって音楽はその時代を示すものだからね。そして『I Am Dogboy』には、人生の過ちも含まれているんだ。もし読者のなかに自分のキャリアに対して自信を失った人がいても、僕の間違いから望みを見出してほしい。こんな僕でも今はハッピーなキャリアを歩んでいるという事実からね。

自伝のタイトル『I Am Dogboy』にはどういう意味があるのでしょうか? 『Born Slippy』から来るもの?
そうDogboyは『Born Slippy』からきているんだ。それは僕自身がDogboyだからね。自分にとってDogは若い男性を表現したものなんだ。若くって犬のように夜を徘徊しているようなね。何かを求めて、何かを見つけるためにハンティングしているイメージ。ときには群れでハンティングするし、たまに一匹オオカミのようにね。でもいつも何かを求めて、とてもハングリーなんだ。自分もそうだった。

ライブを見ていると、昔と変わらずステージで楽しんでいますが、今でもハングリーですか?
昔はね。今はそのハングリーさはクリエイションに活かしているんだ。当時の自分は、とてもダークな場所にいたからね。

今は、何をしている時が最もハッピーですか?
ヴィジュアルアートを創っているとき。音楽に関しては、1人で音楽を創っている時間よりも、人と音楽を創り上げてコラボレーションをすることの方が好きだね。それから、ステージでパフォーマンスするのは大好きだよ。ステージはとても落ち着く場所なんだ。7歳のときからバンドを組んで、13歳の頃からライブ活動をしているから、ステージはとても静かで穏やかな気分にしてくれる特別な場所だよ。

過去と今で、変わったことと、変わらないことはありますか?
多くのことが変わったね。18年前にアルコールをやめたんだ。それは自分の人生の大きな転機だった。そのおかげでハッピーになれたよ。変わらないのは、恐怖や不安感という感情。あとは毎朝続けている、書くということ。普段ロンドンでは、毎朝7時半頃からカフェで1時間ほど書き、日常の写真を撮り続けている。

恐怖や不安感は今でもありますか?
もちろんだよ。僕は自分でもナルシストだと思う(笑)。本当の幸福を感じるときもあれば、すごくダークな場所に自分を陥れることもあるし、自分を見失うこともある。小さい頃から、自分の居場所がないと感じることが多かったんだ。だからアートに取り組んでいるときだけ、自分の居場所があると感じていた。自分のなかにあるダークな場所から自由になれたんだ。でもアーティストは、自分の作品が出来上がった瞬間はハッピーだけど、またフラストレーションが溜まっていくというサイクルを生きる動物なんだ。そのフラストレーションから次の目標を追求していくんだと思う。僕の娘もアーティストでバンドを組んでいるんだけど、彼女にも「アーティストはみじめな存在だよ。だから辞めたほうがいい。ほんの一瞬だけハッピーで、その他は自分を失って、ダークな気分になり、もう一生良いものができないような気分になる」と忠告したんだけど、彼女は「自分の血がそうさせる」って言うから、逆らえなかった。たまに彼女のバンドのことで相談や文句を聞くんだけど、「ほらね」って言って話を聞いているよ(笑)。

娘さんのライブは観に行ったりしますか?
昨日武道館でライブした同じ日にロンドンで彼女がライブをしていたんだ。初めて彼女のライブを見逃したよ。見れなくて残念だけど、結果を連絡待ちなんだ。彼女たちは本当にいいバンドで、サウンドも独特だし、自分たちの道を切り開いているところを尊敬するよ。

娘さんはお父さんを尊敬しているでしょうね!
お互い尊敬しあう仲だよ。もう1人の娘は違う道を進んでいるけど、2人の娘とは友達みたいな関係なんだ。

なぜ、今のタイミングで16年間書き留めていたものを出そうと思ったのですか?
『I Am Dogboy』の前に2冊の本 『Mmm…Skyscraper I love you』と『In the Belly of Saint Paul』を出版していて、その2つは僕が書いた詩を載せたものだった。今回は、ロンドンオリンピック、ソロレコーディング、ツアーなどが終わったタイミングで、自分が歩んできた素晴らしい行路を思い返したときに「伝えたい」と思ったんだ。それから、今回の自伝は、自伝でありながら、36年も続いているリックとの素晴らしいパートナーシップを讃えるものでもある。読み終わったら、一緒に仕事をしているパートナーへ感謝の気持ちを伝えたいと思えるはずだよ。

2017年1月公開予定の『トレインスポッティング2』には、また「Born Slippy」がサウンドトラックとして使われるのですか?
本当にわからない。リックが映画のための音楽をアレンジしたりしているけど、映画の音楽は状況がコロコロ変わるからね。ダニー(・ボイル)が映画にふさわしいものを判断するんだ。

日本に来ると必ず訪れる場所はありますか?
必ず明治神宮に行くよ。そして、夜の街を歩く。歩きながら写真をたくさん撮るんだ。街のいたるところにある標識やカリグラフィーがすごく好きでね。東京の街中で写真を撮っていたときに、絵を描くインスピレーションを得たんだ。そして日本に何度も来るうちに、自然と絵を描き始めたよ。

写真はいつから撮り始めたのですか?
本格的に撮りはじめたのは80年代半ばぐらいかな。ストリートで色々な写真の撮り方を実験しはじめたんだ。森山大道は僕にとってのヒーローで、彼の撮る写真もストリートで撮影されたLo-Fi写真ばかり。その手法のチャンピオンだと思っているよ。ストリートでLo-Fi写真を撮影する写真家とは、特に強い絆を感じるね。

ストライプの洋服がアイコンな理由は?
本でも触れているんだけど、理由は2つある。1つは、平行線に心奪われているということ。小さいころから大好きで、昔は良く平行線を描いていた。線と線のあいだからエネルギーを感じるんだ。そしてもう1つの理由は、小さい頃に"右利きのピカソ"って呼ばれていたんだ。ピカソもストライプをよく着ていたから、潜在意識的に着るようになったんだ。シンプルでいて、とてもダイナミックなエネルギーがあるからね。だから仮に僕の体調が良くなくても、洋服からはエネルギーが出ているんだよ(笑)。

最後に、日本のファンにメッセージを。
僕の人生を変えてくれた国よ、ありがとう。本当に感謝しています。 たくさんのインスピレーションと幸せをもらっています。そして、僕は日本を第二の故郷のように思っていて、飛行機から降りる度に、いつもここが自分のいるべき場所だと感じるんだ。

Credits


Text Minako Shimatani
Photography Takanori Okuwaki

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