ヴァレリー・フィリップスと友情

最新写真集『ANOTHER GIRL ANOTHER PLANET』を発売したヴァレリー・フィリップス。ユースの魅力に取り憑かれた「ピーターパン・フォトグラファー」だと自認する彼女が女性の友情、そしてユースの女の子が放つ「この星のものとは思えない魅力」を語る。

by Hannah Ongley
|
16 November 2016, 2:45am

「現在に至るまで、ヴァレリーが『もっとも大きな影響』として挙げているのは、子供のころに彼女が大好きだった宇宙や体操、スケボー、そしてダンテ・ガブリエル・ロセッティの絵である」——ヴァレリー・フィリップスのWikipediaページにある一節だが、若き女性を代弁するアーティスト、アルヴィダ・バイストロムがストックホルムからロンドンまで遠路遥々ヴァレリーに会うためだけに飛んだ理由も、まさにそれだったという。そうして出会ったふたりはこれまでにも多くのコラボレーションを果たしてきた。ブルックリンの高校に通うポーランド人の女の子から、スーパースターになる直前の90年代PJハーヴェイまで、過去20年にわたり、とにかく「思春期の女の子の世界観」を撮り続けてきたヴァレリー。彼女について、アルヴィダは「ヴァレリーの世界ではすべてが可愛く、そしてすべてに魂が息づいている。彼女は自身の五感に訴えかけるものすべてに"若さ"を見出さずにいられないアーティストなのだ」と書いている。ヴァレリーの最新写真集『ANOTHER GIRL ANOTHER PLANET』に寄せた序文の中で、アルヴィダはこう付け加えている。「ヴァレリーと撮影をすると、例外なく誰もが髪をくしゃくしゃにされ、服を乱され、変顔をさせられる」

ひとつの被写体に「女の子である」という存在のニュアンスと複雑さを探ってきたこれまでの作品集とは趣を変え、今回の『ANOTHER GIRL ANOTHER PLANET』でヴァレリーは彼女自身が気に入っている作品をコンピレーションとしてまとめている。「撮影でとても楽しく、繋がりが感じられた女の子たちの写真を、気に入るままに集めた本」と、現在はロンドンを拠点に活動をしているヴァレリーは電話越しに教えてくれた。「とにかくハッピーなものにしたかった。収められている写真はどれも、奇跡のようなものが起こったからこそ成立している写真ばかり」とヴァレリーは話す。数多くの作品から選ばれたのは、ソックスとシルクのジャケットのみという姿のフランス人歌手ソコ(Soko)や、馬の絵ばかりが飾られた壁をバックに座るアルヴィダ、そしてそれぞれが独自の世界でイキイキと生きる数多くの女の子たち。ユースという世界観の抗いがたい魅力と、なぜ女の子がファンタジーのキャラクターではないのかについて、ヴァレリーに話を聞いた。

作品の多くは被写体となった女の子たちの部屋で撮られていますね。なぜそのようなプライベートな空間で撮影するのでしょうか?
計算しつくされた写真というのが好きじゃないの。でも私はとにかく現実を捉えようとするようなフォトグラファーでもない。そのあいだの世界観を写真にするフォトグラファーなんだと思う。被写体がどんなひとなのかを探りたいの。どんな世界を見て、どんな環境に暮らして、どんなところで遊んで、どんな服を着ているのかを知りたい。私はまるで被写体の女の子たちと、彼女たちを取り巻く環境に導かれるように写真を撮っているの。全部が全部そうというわけでもないけれど、ほとんどの撮影では、被写体となる女の子の世界へ私が飛び込んでいって、それを私の視点で捉えるという撮り方をしているわ。

女性のユースを写真に捉える方法は、あなた自身が歳を重ねるにつれて変化しているのでしょうか?
たぶん最初の写真集『I Wanted to Be an Astronaut』をリリースした2001年頃に自分のスタイルを見つけて、撮影の方法は変わったわ。それ以前には音楽関連の撮影やファッション、広告の写真を多く手掛けていたんだけど、自分で「見たい」と思うような写真が撮れずにいて。『I Wanted to Be an Astronaut』を作ったことで、頭の中にあるイメージをどう写真にすれば良いかが解ったの——私の世界と、被写体となる女の子の世界をひとつの写真に捉える手段が見えたの。歳を重ねるごとに、そのやり方が馴染んできてるわ。実際に写真を撮る前段階では、プランもなければムードボードもアイデアも考えない。「私と女の子がそこに存在して、遊ぶなかで私がどう彼女の世界を見るか」ということがすべてなの。

あなたはこれまでに「若い女の子を性的にステレオタイプ化して捉えている」と避難を浴びたこともありました。アルヴィダは『ANOTHER GIRL ANOTHER PLANET』の序文であなたと共同で作ったZINEThis Is My Driver's License』に触れ、そのことについて書いていますね。社会がユースを語る際に体毛と薄化粧ばかりが議論の的となるのはなぜだと考えますか?
女の子は、大人の女性の格好をすると実年齢よりも年が上に見えるから、私の写真に捉えられている女の子が幼く見えてしまうんだと思う。私はひとにある生身の部分が好きなの。ファッション写真ではキャスティングという段階があるでしょう。モデル選びの段階で私は、まず宣材写真に見たモデルに惹かれ、興味を持つわけ。だから実際に会ってみるの。写真通りに魅力的だから撮影に起用するのに、現場でヘアメイクがつくと、化粧ひとつでまったく違ったひとになってしまう。だから、そこの権限が与えられれば、私は被写体となる女の子そのものを重要視して撮影をするわ。被写体の女の子には、その女の子のままでいてもらいたい。ファンタジーのキャラクターではなく、その子の生身の部分を引き出したいの。そうやって撮った子たちが13歳に見えてしまうのね。生身の彼女たちはとても幼く見えるから。前はそれが原因でクライアントから多くのネガティブな意見を聞かされたんだけど、今の私なら突き放すわ。

音楽関連の撮影と『I Want to Be an Astronaut』について先ほどお話ししていましたが、今回の写真集は英パンク・バンドThe Only Onesの歌からとったタイトルですね?なぜ『ANOTHER GIRL ANOTHER PLANET』を本のタイトルに選んだのですか?
タイトルや言葉を考えるのは大好きなの。これまではひとりの女の子を被写体として本を作ってきたからタイトルも悩まなかったんだけど、今回の写真集は、さまざまな女の子の写真を寄せ集めたので、タイトルをつけるのが難しかったわ。それらしいタイトルをつけて、印刷をかけた直後に後悔するのもイヤだった。だけど、バスに乗っていたら突如思いついたのよ。私はThe Only Onesが好きなんだけど、特に「ANOTHER GIRL ANOTHER PLANET」が大好き。私は、女の子にこの世のものとは思えない何かを感じるから惹かれる。火星や木星から来た宇宙人なんじゃないかと思いながら写真に収めているの。このタイトルはしっくりきたし、私にとって特別な意味も持っていたから、これに決めたのよ。

あなたはこれまでにアルヴィダと数多くのコラボレーションを果たしてきましたが、これまでに彼女から教わった中で最も特別なこととは?
彼女が彼女自身でいる、ということね。ありきたりな言い方になってしまうのが嫌だけど、彼女はやりたくないことはやらないし、撮りたくないものは絶対に撮らない——とにかくアルヴィダ自身でしかいられないひとなの。昔から彼女は納得のいかないことには「ノー」と言ってはねのけていたわ。くだらないと思うことは絶対にやらない。彼女の価値観や意思、道徳観に背くようなことは絶対にやらないのよ。私はこれまで、すべきじゃなかった妥協をたくさんしてきたから、彼女が生まれながらにして自分自身に嘘がつけないというそのあり方と、面白いアイデアや意見を持った個人であるということに、いつも感心してきたわ。本物のアーティストというものが存在するなら、それは彼女のようなひとを指すんだと思う。ひとは色々なものに惑わされるけど、彼女は惑わされない。そういうひとと同じ時間を過ごせるのは幸せなことね。

valeriephillips.com

関連記事:ヴァレリー・フィリップスが女の子を撮り続けるワケ

Credits


Text Hannah Ongley
Photography © Valerie Phillips
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.