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クラブ文化を扱った傑作映画10選

この週末は、夜の街にくりだす前に、クラビングを描いた長編映画やドキュメンタリーを観てはいかが?

by Colin Crummy
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23 September 2016, 2:45am

Pump Up the Volume: The History of House Music
2001年にイギリスのChannel 4が制作したこの145分にも及ぶ長編ドキュメンタリーは、クラブカルチャーを主題とした映画のなかでも傑作の1本として名高い。シカゴのアンダーグラウンドシーンでハウスミュージックが開花した様子から、DJたちが次々にスーパースターの座へと押し上げられ、クラブの名前は世界中に轟き、クラビングがひとつの生き方へと昇華した、その流れまでをつぶさに追っている。音楽が素晴らしいのはいうに及ばない。

トレインスポッティング
「世界は変わり、音楽もドラッグも変わり、男と女も変わる。これから1000年後には、男でも女でもない、クズみたいな人間だけが残ってるんだ。俺にはそのほうが好都合」と、主人公のマーク・レントンは1997年にクラビングの未来を総括している。監督のダニー・ボイルは「クラブナイトこそが全て」という"あの"感覚を、こともなげに見事に映像化している。

『ライムライト』
これに関してデリケートでなどいられない。オーナーが自身の経営するクラブを舞台に、ボロ儲けできる犯罪へとその手を染めていき、一度は頂点を極めたナイトライフの聖地が陥落していく様を追うこの映画は、クラブシーンの裏で少しでも犯罪に関わる取引に関係したことがあるひとなら、誰でも見入ってしまうはずだ。1990年代初頭、眼帯がトレードマークのピーター・ガティエンは、当時ニューヨークのナイトライフに絶大な影響力を持っていたTunnel、Palladium、そしてLimelightという3大クラブをすべて動かす、クラブ経営の王だった。ビリー・コーベン(Billy Corben)監督によるこのドキュメンタリー『ライムライト』は、ガティエンが経営するクラブのなかでも特に悪名高かったクラブ——ワイルドなセックスが横行し、ドラッグが飛び交い、セレブリティまでもがそのインダストリアルテクノを体感したいと懇願するとして知られていた伝説のクラブ、Limelightに焦点を当てている。最高のクラブじゃないかって?その通り、Limelightは最高のクラブだった。しかし、当時のニューヨーク市長ジュリアーニにとっては事情が違っていたようだ。ジュリアーニは、マンハッタン全体の浄化計画の一環として、Limelightの閉鎖を押し進めた。コーベンは、エキセントリックなクラブを取り巻く狂気と歓喜、そしてクラバーたちの憧れの場所を破壊にまで追い込んだ保守主義の力を映像に捉えることに、見事成功している。

『ラスト・デイズ・オブ・ディスコ』
ジェーン・オースティンが頻繁に描いた社会政治の世界を、ニューヨークのStudio 54のダンスフロアに再現したホイット・スティルマン監督の『ラスト・デイズ・オブ・ディスコ』は、ナイトクラブを"のし上がり"と"ステータス向上"のための場としてシャープに描いた傑作映画だ。クロエ・セヴィニーとケイト・ベッキンセールが、黒いドレスに身を包む典型的白人女を見事に演じている。スティルマンの脚本もまた、ウィットに富んでいて素晴らしい。

EDEN/エデン』
1990年代のパリに生まれたフレンチ・ハウスのシーンを映像化した『EDEN/エデン』について、監督のミア・ハンセン=ラヴは「クラブカルチャーを真剣にとらえた映画が他になかったから」と、その制作のきっかけを語っている。この映画、たしかにクラビングがただの背景としては描かれていない。むしろ、主人公ポールの人生を完全に支配する存在として描かれているのだ。フェリックス・ド・ジヴリ演じるポールは、ダフトパンクやカシウス(Cassius)、ジャスティスなどが活躍するフランス・ダンスミュージック・シーンに現れたDJ。しかし、それらのビッグネームたちほどの国際的成功は、なかなかポールに巡ってこない。この映画はクラビングを信仰ともいえるほどの熱狂として描き、またそんな熱狂が引き起こす後遺症も描いている。同時に、この映画は当時のパリ・クラブシーンの克明な記録としても素晴らしい作品だ。ダフトパンクが登場するシーンには、誰もが歓喜の叫びをあげるだろう。

『パリ、夜は眠らない』
ジェニー・リヴィングストンが、80年代マンハッタンのLGBTQ Ball大会の様子を捉えたスナップは、とにかくイキイキとしている。その色、そのウィット、そしてその絢爛さには、ボールルーム・カルチャーの影響を前面に打ち出している『ル・ポールのドラァグレース』の再放送でさえも決して敵わない深みがある。『パリ、夜は眠らない』の核には、大きな悲劇の存在がある。出演しているヴォーガーたちは、貧困や差別、コミュニティを容赦なく襲ったエイズなど、全員がそれぞれの問題に直面しているのだ。しかし、この映画の軸となるのは、やはりディスコのビートに踊るヴォーガーたちの、断固として祝福の姿勢を貫く生き様だ。「クラビングとはコミュニティなのだ」と改めて気づかせてくれる、文句なしの作品だ。

『ヒューマン・トラフィック』
「酔っ払って、音楽を全身で感じて——これぞ最高のひとときだ!」。映画にクラブのシーンが出てくると必ず冷めてしまう。そんな経験はないだろうか?それは、監督(少なくとも10年はダンスフロアを見ていないであろう中年のヘテロ白人監督がほとんど)が、若き日を懸命に思い出しながらクラビングのシーンを描いているからこそ起こる、拒絶反応だ。その記憶やムードは記憶のなかで美化されすぎていて、現実のクラビングにある無茶苦茶な世界を捉えられていないのだ。『ヒューマン・トラフィック』は、そんな問題を難なくクリアし、90年代クラブシーン最盛期のウェールズに暮らす5人の若者を描いている。そこには、クスリにまみれ現実逃避に溺れるウィークエンド・クラブカルチャーがまざまざと描かれているのだ。どうやら続編の制作が決まったようで、次作では5人がイビザへと向かうらしい……。次作でもダニー・ダイアが自室で鏡を前にマスターベーションをしてくれるだろうか?

『ワイルド・コンビネーション』
70年代後期から80年代初期にかけて、ニューヨークはダウンタウンのディスコシーンに現れたひとりのアーティストがいた。彼の名はアーサー・ラッセル。アヴァンギャルド音楽の作曲家、シンガー、ソングライター、そしてディスコプロデューサーであった彼は、実験的な音楽を支持することで伝説となったクラブThe Kitchenで多くのファンを得ていた。このドキュメンタリー映画は、監督マット・ウルフが当時の映像を集め、そこに、ラッセルを知る人物たちのインタビュー映像を織り交ぜた、繊細で感動的な作品となっている。そこに浮かび上がるのは、ありあまる才能と複雑な人間性を宿すアーティストの全容だ。クレジットの向こうに流れる"時代の音"に、あなたはきっとラッセルにしか作れなかったサウンドを聞くことになる。

54
Studio 54を舞台にした物語は数多く映像化されている。語り継がれるクラブ神話のなかでも"群を抜いてアイコニックな存在"として必ず登場するStudio 54だが、マーク・クリストファー(Mark Christopher)監督の『54』を観れば、その理由が解るはずだ。この映画は、天使のように無垢な給士人、ライアン・フィリピー演じるシェーンの目を通して見た、毒々しいほどのグラマーと快楽主義に溢れたクラブの世界を描いている。シェーンは、ディスコライトのもとで起こるすべてに陶酔する。映画は当初、ゲイ要素を抑えて一般公開されたが、昨年になりディレクターズカットのバージョンがリリースされ、後にも先にもニューヨークで最も伝説的なクラブと称されるStudio 54の魅力を完全に描き出した映像として蘇った。

Don't Forget to Go Home (Feiren)
タイトルも秀逸、内容も強く記憶に訴えかける力があるこの映画。観ていると、性的興奮剤として使われたビデオヘッドクリーナーの匂いや汗の匂い、そして不眠を続けた果ての精神状態までが、リアルに蘇ってくる。それほど良くできているのだ。BerghainやWatergate、Bar 25、Club Der Visonaereなどで、72時間ノンストップのクラビングが繰り広げられるベルリンカルチャーを追っている。断っておくが、この映画は、ナイトライフの表面だけを切り取って美しく見せたりはしない。クラバー自身がカメラを前に生々しい証言をする、それがこの『Feiren』だ。そのローファイなアプローチも、映画のリアリティに大きく貢献している。Berghainで起こった乱交についてクラバーが語るくだりを見れば、きっとあなたも自分の半生を味気なく感じるだろう。

Credits


Text Colin Crummy
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.