90sの傑作ミュージック・ビデオ秘話

グウェン・ステファニーの水玉ドレスからニルヴァーナのストライプ・スーツまで、コスチューム・デザイナーのナンシー・スタイナーが「90s」という時代をデザインした裏側に迫る。

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jan 5 2017, 3:41am

インディーズ界きってのコスチューム・デザイナーとしてキャリア30周年を迎えたナンシー・スタイナー(Nancy Steiner)は、これまでに錚々たるアーティストたちの衣装を手掛けてきた。『リトル・ミス・サンシャイン』でアビゲイル・ブレスリンが着ていて強烈な印象を残したビューティ・コンテストのボディスーツから、『ヴァージン・スーサイズ』でのリスボン姉妹、『ロスト・イン・トランスレーション』でのピンク色のウィッグなど、映画での活躍も素晴らしいが、後世まで語り継がれるスタイナーの世界は、ミュージック・ビデオでひときわ発揮されている。90年代というミュージック・ビデオ黄金期に私たちを魅了したアイドル的存在のアーティストたちほぼ全員が、一度はナンシーの衣装を着たことがある——そう言っても過言ではない。シェリル・クロウ、スマッシング・パンプキンズ、ニルヴァーナ、ノー・ダウトに至るまで、スタイナーは時代を彩ったアーティストたちの衣装を通して、時代の色を作り上げた。i-Dは、シルバーレイクにある彼女のスタジオを訪れ、彼女が手掛けたビデオの中でも特に印象深い作品について、秘話を聞いた。

「Tonight Tonight」byスマッシング・パンプキンズ(1995)
これまで手掛けてきた数多くの作品の中でも、特にお気に入りの作品。「19世紀末から20世紀初頭に活躍したフランスの監督ジョルジュ・メリエスの世界観に、ヴィクトリア王朝時代をモチーフにしたコスチューム」をテーマに作りました。大好きな友達、ジョナサン・デイトンとヴァレリー・ファリスと一緒に作品作りができたのが嬉しかった。ふたりのことは、私が17歳のときから知り合いで、まだ誰もこの業界で働くようになる前に出会いました。それが1989年あたりからは3人でたくさんのミュージック・ビデオを手掛けるようになった。そこからはビデオだけじゃなくTVコマーシャルや映画も作るようになって、そしてふたりは2006年に『リトル・ミス・サンシャイン』を作ったんです。この「Tonight Tonight」のビデオに関しては、ロンドンにいた私にふたりが電話をかけてきて、「こんなビデオを撮ろうと思ってるんだけど、それまでにアメリカには戻る予定?」と。「素敵な企画だから、それだけのためにでも何とかして戻る!」って答えました。スマッシング・パンプキンズをああいう風に解釈してヴィジュアル化するのは最高に楽しかったし、月の生物たちのコスチュームを作るのは最高にクリエイティブで楽しかったです。

「Don't Speak」byノー・ダウト(1995)
グウェン・ステファニーの格好は、あの当時に私自身がしていた服装そのままです。それまでグウェンはパンツにクロップド・トップというスタイルばかりで、ドレスは着たことがなかったらしいんですが、あの服装をすごく気に入ってくれて。グウェンの友人でありこのビデオの監督も務めたソフィー・ミュラーと話し合って、曲調や歌詞も考慮に入れて、服装はソフトでフェミニンな世界観を打ち出そうということになりました。グウェンを説得してあのドレスを着てもらったら、ビデオは大盛況でした。さっきも言ったように、あのドレスは私の私物だったような気がするんだけど、当時はドット柄のドレスをたくさん持っていたので。

「In Bloom」byニルヴァーナ(1992)
長身のクリスに小柄なカート、ちょうどその真ん中あたりの体格のデイヴ——あれだけ体格が違う3人に、同じストライプのスーツをお揃いで見つけられて本当にラッキーでした! Western Costumeで調達したスーツですね。Western Costumeはノース・ハリウッドにある最高に面白いショップ。衣装探しをするときにまず行く、頼りになるお店です。

「33」byスマッシング・パンプキンズ(1996)
フロントのビリー・コーガンと、彼が当時付き合っていた恋人イェレナ・イェムチュクがふたりで監督したビデオ。イェレナは素晴らしい写真家です。歌詞の一節一節に物語が配してあって、それが映像化されているんです。25節あったと思うんですが、すべてに違うシーンを使っているはずです。映像は、歌詞を映像化したものもあって、例えば「Graceful swans…(優雅な白鳥)」という部分には、羽根がついた女性の映像が配されていたり。歌詞をベースにしていない部分の映像は、ただ撮ってみて私たちが気に入ったものを使いました。舞台芸術の世界観で、楽しくて最高でしたね。

「Bachelorette」byビョーク(1997)
ビョークとミシェル・ゴンドリーという鬼才ふたりと一緒に作品を作れるなんて、夢のようでした。この作品以降、ミシェルとはたくさんの作品作りを共にしてきたけど、いまだにあの頭の中がどうなってるのか理解できない。ミシェルの映画デビュー作『ヒューマン・ネイチュア』でも衣装を担当させてもらって、ミシェルの才能には感服しているし、大好きなひと。ビョークの衣装は「各シーンで彼女が際立つように」と、主にカラーで決めました。

Credits


Text Jane Helpern
Polaroids courtesy and copyright Nancy Steiner
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.