「当たり前」へのオルタナティブ:Aマッソ インタビュー

比類なきエキセントリックな笑い。型にとらわれないメディア発信。若手芸人のなかで抜群の存在感を放っているAマッソ。加納と村上が、キャラ偏重のテレビ業界、嫌なものにフィットしないことの大切さ、自分たちの“武器”を語る。

by Michiyo Nishimori
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21 January 2019, 7:47am

この記事は『i-D Japan No.6』フィメール・ゲイズ号から転載しました。

テレビの世界では、なんらかのキャラがないと勝負できない──そんな風潮が大前提になっている現在、お笑い芸人のAマッソは「オルタナティブな/別の」やり方で自身の道を切り開こうとしている。彼女たちは、自分たちの容姿や体形で笑いをとることもないし、必要以上に自虐しないでもいいと思っている。そんなふうに、キャラではない何かで実直に芸人としての自己を確立しようとしている。

しかし、今の女芸人を見渡してみると、必要以上に「女」というキャラを求められていると感じる。女芸人たちは、番組のアンケートで「彼氏は?」「経験人数は?」と訊かれ、イケメンが登場したら必要以上に興奮してリアクションしないといけない。そのうえ、女芸人は女優やタレントと違うキャラを見せないといけないから、ブスやデブであるというふるまいをすることが前提であり、自らがそれに乗っかって自虐的に行動することを期待される。今挙げたことは、私も思っていたことでもあるが、実は、テレビ東京の『ゴッドタン』の「腐り芸人セラピー」に出演した際に、Aマッソの加納が挙げた女芸人としての疑問点でもある。こうした疑問を呈することは、今までの女芸人にとってはタブーだ ったかもしれないが、加納の問いかけは、視聴者である私たちには大いに響いた。

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今回のインタビューでもこうした話は飛び出した。「番組のアンケートとかで〈彼氏がいるか?〉っていう項目にも困ってて。〈めちゃめちゃ経験人数多いです〉っていうボケで黙らせるってことをずっとやってたんです(笑)」と村上が語ると、加納も「別に、そういうキャラでもないので、板についてなくて、ふぁふぁふぁ……って立ち消えるという(笑)」とあっけらかんと語る。

こうした彼女たちの、「女芸人」に求められてきたセオリーを壊そうとする姿勢を「尖っている」と紹介する番組もある。それに対して加納は「それは、うちらがはっきりとこういうキャラですということを提示していないので、とっかかりやすさとして『尖ってる』と表現してくれてるんでしょうね」と分析する。こうして話していても、彼女たちから「尖っている」という感じは受けない。「女」は、「女芸人」は、こうであれという既成概念に反抗しようとしているというよりも、それを逆手にとって、明るく笑いながら遊んでいるようにも見える。

しかし、世の中には、女性がなんらかの疑問をちょっと呈しただけで、反抗的ととられることは多い。それに対して、「いつも怒ってるわけちゃいますよ」と加納が言うと、村上も「鼻歌ばっかり歌ってるもんね」と続ける。「ただ、私みたいなタイプの芸人も増えてるとは思います」と加納は言う。「ジェンダーフリーな意見に共感する人もいて、そんな需要もあるから。私が特別というよりは、こんなん言っていいんや、ということになったら、後続は増えると思いますね」。たしかに「#MeToo」のハッシュタグとともに、一般の女性たちのこうした意見をよく見かけるし、最近の女芸人の一部にも、変化があるのも感じる。そうやって、「こんなん言っていいんや」を続けているふたりは、女芸人であることで息苦しさは感じないという。「わりと嫌なことは避けられるもんね」と村上が言うと、「ちゃんと向き合ったら避けられます。ただ、なんかにフィットさせようと思ったら、持っていかれますね」と加納も言う。

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誰もが「フィットさせないで、持っていかれない」ようになればいいが、そうすることにまだ躊躇する人もいる。そんな人はどうすればいいのか、そう訊くと、「なんでも言うたらいいと思う。自分から息苦しいこと選ばないでいいと思うし。人前に立つ仕事でこんなこと言うのもなんですけど、こっちもこっちでやってるんで、みんなもみんなで好きなことやればええがな! と。あの女芸人どうですか?とか訊かれても、知らんがな!ですね」という言葉が返ってきた。加納の言葉にこっちまで勇気づけられる。確かに、いつも心に「知らんがな!」を持っておくと安心だ。これまでの悪しき習慣や古いルールをつきつけられたときは「知らんがな!」と心のなかだけでも言っていけば、こんなに強いことはない。「東京は、いろんな芸風を受け止めてくれる感じはしますね」と加納はいう。彼女らが世間に認められるようになったのは、NHK BSプレミアムの『爆笑ファクトリーハウス 笑けずり』という、7組の若手芸人のネタ作りを追った番組で、最後の週まで勝ち進んだ。芸人が芸人のジャッジをする番組に「女だから」と色眼鏡で見られることはなかった。それ以降はネタ番組に呼ばれたり、バラエティでも注目されることとなった。

今でも、バラエティでキャラを押し出し人気を得ようとするよりも、自分たちの考える面白さをネット配信の番組「Aマッソのゲラニチョビ」で具現化し、それを地上波に乗せたり、全国放送に乗せようという活動を中心に頑張っている。これも、彼女たちの「オルタナティブな/別の」やり方だ。

ただ、考えてみると、彼女たちのやり方はオルタナティブだが、その結果、到達すべきところは「ネタ」によって結果が認められる「王道」の世界だ。それは、実は芸にとってのオルタナティブであるはずの“キャラ”が王道に入れ替わっているねじれを示唆しているようでもある。彼女たちが欲しているのは、ネタでジャッジされる“当たり前”なのだ。最後に、「Aマッソにとって最大の武器は何ですか」と、どこかのドキュメンタリー番組のテンプレっぽい質問を気恥ずかしさも交えながら聞いたところ、加納が「なんですかね、ネタかな。まあ他をやってないんでね」と照れながらも真っすぐに答えていたのが印象的だった。

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Credit


Text Michiyo Nishimori.
Photography Asami Minami.
Hair Yuko Aoi.
Make-up Chacha at beauty direction.

AIKO AND AI WEAR ALL CLOTHING CARHARTT.