『君の名前で僕を呼んで』アーミー・ハマー interview

『君の名前で僕を呼んで』のスターが、ルカ・グァダニーノ監督によるまばゆいばかりの傑作への思い、愛、そして居心地の悪いアートについて語る。

by Tish Weinstock; translated by Atsuko Nishiyama
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12 December 2017, 5:46am

「アートは人を挑発するものだ」。31歳の俳優アーミー・ハマーが慎重に話し始める。背後でスマホの画面をタップしているパブリシストの存在を、大いに意識しながら。「今は触れられない話題もあるんだ。だけど僕が言いたいのは、もしある作品が——彫刻でも写真でも、絵画でも映画でも——誰かに居心地の悪い思いをさせたのなら、アートが果たすべき役割がちゃんとなされている、ということだよ」

ルカ・グァダニーノが監督したゲイのラブストーリー『君の名前で僕を呼んで』。今年のサンダンス映画祭でプレミア上映され高い評価を得たこの作品をめぐって、この数ヶ月の間にすでにさまざまなことが言われてきた。80年代のイタリアを舞台とした本作が描くのは、ピアノの才能にあふれた17歳の少年エリオと、彼が激しい恋に落ちる20代の大学院生オリヴァーの物語。心地よく暑く気だるいある夏の日、オリヴァーはエリオの父親の研究を手伝うために一家の別荘にやってくる。

いかにもグァダニーノらしい作風、息を飲むほどの美しさ。オリヴァーを演じるアーミーと、エリオ役のまだ新人と言ってよいティモシー・シャラメが、一分の隙もないパフォーマンスを見せる。けれどプレミア上映が終わるが早いか盛り上がったのは、演技や演出についての評価ではなく、作品の社会的な問題をめぐる論争の方だった。

突如として、扇情的な記事が出回り始めた。スクリーン上でのアーミーとティモシーの大胆な関係や、物語の設定上のかなりの年齢差、演じた俳優たちの実際の年齢差について。ストレートに見える2人がゲイの恋人同士を演じていること、そしてジューシーな桃の登場する、性的行為の場面をめぐっても。さらにアーミーとアメリカ人俳優ジェームズ・ウッドとの間で、ツイッター上の論争が続いた。きっかけは、ウッズがこの映画をこんな風に批判したことだ。「静かに少しずつ、良識の最後の砦が崩れていく」。アーミーは正論で返答した。「あなたも60歳のとき、19歳と付き合ってませんでしたっけ……?」

とはいえ、こういったゴタゴタはすべてどうでもいいことだ。『君の名前で僕を呼んで』の核にあるのは、とてもシンプルなものだから。この作品は、恋に落ちる2人の人間をエモーショナルに描いている。それもただの恋ではない、初恋だ。純粋で混じり気のない喜びに満ちている。いっぽうで心をえぐられ、胸の張り裂けるような痛みも感じさせもする。そして率直に言って、例の桃のシーンは映画全体の核心をなす部分だ。

「脚本に書かれていたのは、2人の恋する人間についての生々しく、嘘のない描写だった。これほどのものは読んだことがないと思った」とアーミーは振り返る。「優しく繊細で、むき出しで。とても引きつけられた。ルカ・グァダニーノは天才だと前から思っていたけど、その思いは確信に変わったよ。もし彼が映画化を実現して、これをスクリーン上でやれるのなら、ものすごく特別なものになると思った」

目を見はるような北部イタリアの景観、オリジナルの美しいクラシック音楽と80年代のヒット曲のサウンドトラック(アーミー演じるキャラクターが酔って野外で踊る最高のシーンで使われているのは、ザ・サイケデリック・ファーズの「ラブ・マイ・ウェイ」)。この映画は五感すべてに祝祭的な喜びをもたらす。

キャストたちは、撮影の間じゅうとにかく素晴らしい時間を過ごした。アーミーとティモシーの演じるキャラクターがひかれ合うさまが、まるで目に見えるように明らかなのは、そのためかもしれない。「出演する映画一本一本が、それぞれに違う独立した経験だ」とアーミーは思いを巡らす。「孤立した小さな世界で、新しくできた親しい仲間たちみんなと一緒に過ごすことになる。撮影が終わるまで、ずっとね。今回の経験で得たことは多い。ルカの演出方法もそうだし、ティモシーからは心を許し合うためにはどうすればよいかを学んだ。僕はティモシーが大好きだ。彼は本当にスペシャルで素晴らしい人間だし、素晴らしい表現者だと思う。彼のような若者が撮影現場に現れ、あれほどありのままに、飾らず誠実でいられることに圧倒された。自分も表現者として、もっと上を目指したいという気持ちにさせられたよ」

195cmの長身に柔らかな金髪、きらめく青い瞳と尖った顎のライン、そして百万ドルの笑顔。アーミーは漫画から飛び出してきたような、ハリウッドのセクシー俳優そのものだ。いかにもアメリカ的で、まるでバービー人形の彼氏のケンのようだが、ちゃんと実在している。これまで演じてきたのは、彼のそんな風貌が反映された役柄が多かった。『ソーシャル・ネットワーク』の体育会系の双子。『白雪姫と鏡の女王』のイケメン王子。そして『ローン・レンジャー』の苦悩するヒーロー。

しかし近年になってアーミーは、超大作映画から徐々に離れ、アート系寄りの作品へと、出演作の路線変更をはかっているようだ。トム・フォードが監督した『ノクターナル・アニマルズ』ではエイミー・アダムズの不倫夫を、ベン・ウィートリー監督のダーク・コメディ『フリー・ファイヤー』では物腰柔らかな銃のディーラーを演じている。そして『コール・ミー・バイ・ユア・ネーム』のオリヴァー役が続いた。積み重ねてきたものが、ついに実を結び始めたようだ。「本当に才能ある監督たちと仕事をする機会に恵まれて、ラッキーだったと思ってる」とアーミーはうなずく。「そのひとりひとりから、必ず何かを学んできたよ」

『君の名前で僕を呼んで』は、2018 年春 TOHO シネマズ シャンテ他にて全国公開。

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