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      fashion Anders Christian Madsen 18 May, 2017

      ニコラ・ジェスキエールが語る、クルーズ・コレクションの意義

      滋賀のMIHO MUSEUMで、ニコラ・ジェスキエールが日本の伝統装束をLouis Vuittonの世界観のうちに表現した。「クルーズ・コレクションには、“発見”がなければならない」

      ニコラ・ジェスキエールが語る、クルーズ・コレクションの意義 ニコラ・ジェスキエールが語る、クルーズ・コレクションの意義 ニコラ・ジェスキエールが語る、クルーズ・コレクションの意義

      先週、日本には静かにして圧倒的な衝撃が走っていた。第1部がカリフォルニアのパームスプリングス、第2部となる昨年はブラジルのリオデジャネイロと続いたLouis Vuittonクルーズ・コレクション3部作──ウィメンズ・コレクション アーティスティック・ディレクターのニコラ・ジェスキエールは、完結編となる第3部発表の地として、京都を臨む荘厳なる滋賀の山中を選んだ。3月、Louis Vuittonは、2018年秋冬コレクションを、建築家イオ・ミン・ペイ設計のルーブル美術館で発表した。そして去る日曜、ルーブルがあるパリから遠く離れた滋賀の山中で、わたしたちは長いトンネルを抜け、そこに同じくイオ・ミン・ペイによる設計の無骨なモダニズム建築、MIHO MUSEUMにたどり着いた。

      ジェスキエールが初めてMIHO MUSEUMを訪れたのは、5年前、元日本代表サッカー選手中田英寿に連れられてのことだったという。「とにかく荘厳な場所だと思った。聖域のように感じました」と、ジェスキエールは今回のショーの後に、初めてここを訪れたときのことを回想し、語ってくれた。京都の市街地からそう遠くはない山の中にペイが建てたMIHO MUSEUMは、現代のノイシュヴァンシュタイン城といった佇まいを見せている。そこには理想郷のような雰囲気が漂う。ジェスキエールは、こここそが日本にまつわる彼のファンタジーを具現化できる場所だと感じた。

      「クルーズ・コレクションには、"発見"がなければならない──訪れた国の文化をフランスの、そしてパリの視点から解釈して、メゾンの世界観に落とし込むのがLouis Vuittonのクルーズです」と、ジェスキエールはショーのバックステージで語った。「20年以上にわたり何度も日本を訪れているけれど、出会う誰もが歴史と歴史的遺産の伝承を重んじている。それと同時に先進的で、現代のテクノロジーにも明るく現代的──その対比にいつも驚かされてきました」

      彼が口にした言葉は、ジェスキエールがこれまでに手がけたコレクションすべてに共通する要素といえる。未来的でハイテクな世界観と、ほとんど民族的ともいえるリアルさが同居しているのだ。よくよく考えてみれば、ジェスキエールの服は、ペイの建築とも多くを共通している。古代の未来観とでもいうべきものだ。ジェスキエールは今回のコレクションで、彼の服作りを日本の伝統に織り込んでみせた。ショーのオープニングから、異素材使いを用いて柄を描きながら日本の伝統装束をパッチワークのようにつなぎ、彼の強みである素晴らしい作りのジャケットを立て続けに披露した。それらのジャケットを着たモデルたちは、山から始まり、ダムに見るような橋を渡って美術館建物へと続く壮大なランウェイを歩いた。ショー中盤ではレザーを編み込んだ鎧のようなジャケットも登場し、モデルたちが次々に登場するさまは、侍の行列さながらだった。

      ジェスキエールは今回の作品群を「アーバン(都会的)」と呼んだ。たしかに、『ゴースト・イン・ザ・シェル』でスカーレット・ヨハンソンが着ていてもまったく違和感を感じさせなかったであろう世界観だった。「京都で素晴らしい生地や職人技術を目の当たりにして感動しました。そこで出会った生地を使い、スーツやドレスを作った──それが今日見せた作品です」と、ミシェル・ウィリアムズやライリー・キーオーらとのバルコニー写真撮影を終えたばかりのジェスキエールは説明した。「数年前、70年代の東京を舞台に女性バイカーたちを描いた『野良猫ロック セックス・ハンター』という映画を観たんです。そして最後に日本に来たとき、映画のようにバイクを乗り回す日本人女性を街中で見かけた。彼女たちにひどく惹かれて──ショー冒頭に出てくる女性像は、そのときに見た女性のバイカーたちをテーマにしています」

      光沢のある素材を使ったパンツと合わせられたダメージ加工のレース・ドレスや、デザイナー山本寛斎(ショーにも駆けつけていた)によるモチーフを配した服が、戦闘的世界観を打ち出し、芸者にヒントを得たようなメイクも相まって、バイカーの女性像は、ディストピア的世界観にまで高められていた。

      「都会だからこそ生まれる服の着方というのがあると思います。それはストリートということではなく、"女性の生き方、女性のあり方"に関係するもの。それはいつの時代も都市に強く反映される。それを表現しようと思いました」とジェスキエールは言う。「日本を楽しく描きたかった。それで、デヴィッド・ボウイの素晴らしい衣装を手がけた山本寛斎にデザインをしてもらうように依頼したんです」。山本寛斎は70年代にボウイの彫刻的なスーツを作り出して、一躍時の人となったデザイナーだ。「寛斎は、日本人として初めてパリでショーを行なったデザイナー。その彼を讃えるという意味も込め、今コレクションのためにいくつかのデザインを依頼しました。今回のコレクションは、僕がこの数年にわたって作り出してきたLouis Vuittonの都会的なシルエットを寄せ集めた世界。歌舞伎、能、侍といった、僕たちが日本の象徴として捉えている歴史と文化は、"素晴らしい"のひと言に尽きる。そんな素晴らしい世界観を、Louis Vuittonのシルエットに織り込むプロセスは、本当に素敵な経験でした」。ファッションを傍観する人々にとって、クルーズ・コレクションのショーは常軌を逸したサーカスまがいの狂乱に見えるかもしれない。しかし、Diorのマリア・グラツィア・キウリが先週カリフォルニアで見せたように、ジェスキエールもまたクルーズというショー形態を完璧なレベルで披露した。そう、クルーズ・コレクションとは旅に根づいたコレクションであり、旅とはいつでも、異文化に触れて何かを悟ることに他ならないのだ。

      Credits

      Text Anders Christian Madsen
      Photography courtesy Louis Vuitton
      Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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      Topics:fashion, reviews, fashion reviews, louis vuitton, louis vuitton cruise, kyoto, nicolas ghesquiere, miho museum, cruise 18

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