『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』

『6才のボクが、大人になるまで。』のリチャード・リンクレイター監督、待望の新作が完成した。『アメリカン・グラフィティ』『ブレックファスト・クラブ』に連なる新たな青春ムービーの傑作を映画ライター・長谷川町蔵がレビュー。

by Machizo Hasegawa
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25 October 2016, 7:59am

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1980年8月の終わり。テキサスの大学の野球部寮にジェイクら新入部員たちが入寮した。3日後に入学を控える彼らは、早速変人揃いの先輩たちから荒っぽい歓迎を受け、ビールにディスコ、そしてセックスを謳歌するのだが……。

前作『6才のボクが、大人になるまで。』を気に入って、リチャード・リンクレイターの最新作『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』を観た映画ファンは、もしかするとショックを受けてしまうかもしれない。だってリリカルさゼロ! あまりにバカバカしくて全編ダラけまくっているからだ。でも、これもまたリンクレイターの作風であることが、93年作『バッド・チューニング』を観ているファンなら分かるはず。そして、大学生の破天荒な生態がユルユルと描かれる本作は、1976年の夏休み最初の一夜を過ごす高校生たちを描いた『バッド・チューニング』の事実上の続編なのである。

無名時代のベン・アフレックやマシュー・マコノヒーが出演していた『バッド・チューニング』に対し、本作にも未来のスターになりそうな若手俳優が何人も出演している。リンクレイターの分身である主人公ジェイクを演じるのは、『glee』出身のブレイク・ジェンナー。先輩ピッチャー、ウィロビーを演じるワイアット・ラッセルもヒッピーっぽいキャラがハマっていて最高だ。ワイアットはカート・ラッセルとゴールディ・ホーンの息子だけど、本作にはもうひとり2世俳優が出演している。それが、演劇専攻の新入生ビバリーを演じるゾーイ・ドゥイッチ。映画監督ハワード・ドゥイッチとリー・トンプソンの娘なのだけど、母さんそっくり! 基本、登場するのがムサい野郎ばかりなので、彼女の清涼感がハンパなく感じる。

そんなビバリーに影響され、ジェイクは野球を辞めて映画監督への道を歩むことになるのだろう。そう考えると、ひたすら下品な騒動が愛情を込めて描かれていることも理解できる。本作は、前作で巨匠の領域に足を踏み入れたリンクレイターがふと立ち止まり、「バカがバカであることを許された幸せな時代の終わり」を当時のヒット曲とともにほろ苦く振り返ってみせたメモワールなのだ。

『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』
監督・脚本:リチャード・リンクレイター 制作:ミーガン・エリソン、ジンジャースレッジ 出演:ブレイク・ジェナー、ゾーイ・ドゥイッチ、グレン・パウエル、ワイアット・ラッセル、オースティン・アメリオ 2016年 アメリカ 117分 配給:ファントム・フィルム
11月5日(土)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー

Credits


Text Machizo Hasegawa

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