ボノボが話題のMVのメイキング映像を公開

モチーフとなったのは日本の社会現象である「引きこもり」。合成やCG技術を使用せず、ワンカットで撮影され話題を呼んだミュージック・ビデオの製作過程が明らかに。

by Naoko Okada
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17 February 2017, 5:52am

The xxの『I See You』がリリースされ、メディアがThe xx一色に染まったのは記憶に新しい。しかし同日、もう1枚のアルバムが世に放たれた。それがボノボ(Bonobo)の新作『Migration』だ。熟成された至高のクラブ・ミュージックは重厚かつ美しく、内なる本能が静かに燃えているようなサウンドは聴くほどに深みを増す。それは音楽評でよく目にする「エモーショナル」などといった言葉では形容してはいけない気持ちになるほどだ。本作もまた2017年を代表するアルバムのひとつであることは間違いないだろう。フジロックにてファン待望のバンドセットでの出演が決定しているが、そのアクト、やもすると今年もっとも見逃してはいけない瞬間かもしれない。

最新アルバムから、チェット・フェイカーことニック・マーフィーをフィーチャーした楽曲『No Reason』のミュージック・ビデオが公開された。そこでは「引きこもりの青年」の苦悩が描かれ、我々はその生活の一片を覗き見ることになる。部屋から出れども永遠と同じ部屋が続き、どれだけ進んでも出口はない。追いつめられていく青年と楽曲の焦燥感が重なり、まるで悪夢を見ているような気分になる。そういった心理描写がリアルに描かれているのだが、このビデオの面白さはなんといってもその撮影法にあるだろう。ワンカットで撮影されCG技術などは一切使用していないということだが、であれば少しずつ変化していく室内の装飾ひとつとっても、かけられた手間がどれほどのものなのかが想像でき非常に興味深い。製作背景を想像することもまた、ミュージック・ビデオ鑑賞の醍醐味である。そして今回、そのメイキング映像が公開された。アートディレクターの言葉とともに製作過程が明らかにされており、絡まった糸がするすると解けていくような快感を得られるドキュメンタリーとなっている。ミュージック・ビデオを手掛けたのはロンドンの若手映像作家オスカー・ハドソン。彼はビデオについて以下のように語っている。

「サイモン(ボノボ)は、ツアー中に出会った風景や訪れた場所と彼自身との関係の中から、新しいアルバムのインスピレーションが生まれたと話してくれた。そのテーマについて深く考え、調べていくうちに「引きこもり」という日本の若者の間に起こる現象について知ったんだ。彼らは、日常生活のプレッシャーに圧倒され、何年も寝室にこもり、そこから出られなくなるという。僕は、これが物理的空間と心理的空間が交差する不思議な場所のように感じたんだ。独創的なセットを使って、環境と心理を直接的に結びつけた映像を作ろうと思ったんだよ」―Oscar Hudson

ミュージック・ビデオを正面から見るのではなく、一歩進んで裏側から観る面白さを感じてみてはいかがだろうか。

Credits


Text Naoko Okada