i-Con : 坂本龍一

70年代から日本を代表する革新的なミュージック・アイコンであり続ける坂本龍一は、世界中のオーディエンスを歓喜させる音楽の探求と創造を繰り返してきた。同時に、日本と海外でアクティビズムを声高に訴えながら、自身の影響力を活かし、原子力や森林伐採がもたらす危険といったエコロジカルな問題への意識を高めてきた。2015年にガンから復帰し、今年の3月29日には8年ぶりのアルバム『async...

by Georgia Graham
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08 May 2017, 8:20am

長年アメリカで暮らしてきて、今のアメリカの政治情勢をどう感じていますか?
民主主義がないがしろにされている気がしています。でも、半数近くのアメリカ人が毎週のようにデモをしているので、希望はありますよ。日本の政治も似た状態になっていますが、抗議の声は残念ながらそれほど大きくありません。これがアメリカと日本の違いでしょうね。

ガンから復帰して間もないですが、ニューアルバムを発表しました。リハビリの過程で音楽は重要な存在でしたか?
治療期間中は音楽を聞くことも、音楽のことを考えることも、まったくできませんでした。9.11の直後も同じ状態になったんです。およそ1カ月間、作曲や演奏はもとより音楽を聞くことすらできずにいました。あまりに緊迫していたせいです。音楽とアートを楽しむには、健康と平和がほんとうに必要だってことですね。

音楽は社会を癒す力になると思いますか?
僕たちは今まで以上に音楽とアートを必要としています。なぜなら、世界がとても暴力的な場所になりつつあるからです。強力な美の力が、かつてないほど必要なんです。

あなたの音楽を聞くと、遊び心やイノベーションや実験精神の素晴らしさがたびたび伝わってきます。代表を務めるmore treesでは、フォロアーに向けて"悲観的に考えて、楽観的に行動しよう"と呼びかけ、"歓びに満ちた森づくり"に参加しようと促していますね。楽観的でいると同時に、若くて好奇心溢れる精神を保っている方法を教えてください。
きっとそういう性格なんですよ。あらゆるジャンルや分野に興味があります。僕はいつでも心の奥で「音楽って何だろう?」「なぜ人は音楽をするんだろう?」と自分に問いかけているんです。それは「人間とは何か?」という問いと、ほとんど同じです。どんなものであっても、その答えと無関係ではないので、僕はあらゆるものごとに目を向けているんです。温暖化のデータや、ビニール袋を飲んで死亡する海洋動物のデータを調べていると、もちろん悲観的になりますよ。それでも僕は、人間には良い面が必ずあると思っています。例えば、僕にはバクテリアが希望です。バクテリアは38億年前に誕生し、想像もつかないほど過酷な時代を切り抜けてきた生物ですからね。

今の世界に不安を抱く若い人たちにアドバイスは? 彼らが希望やインスピレーションを得るには、どうしたらいいでしょう?
自然を知ること。自然はとてもたくましいんですよ。僕たちはそのたくましさを信頼していいんです。若い人たちには、海でも川でも森でもいいので、ぜひ自然に触れてほしいと思います。

現代の若者にはどんな責任があると思いますか?
"未来の世代のことをもっと考えて"と年上の人たちを動かしてください。うちの息子がそれをやっていますよ。環境問題だけでなく、レイシズムや、セクシズムといった社会問題を懸念しているからです。僕たちはそんな活動から学ぶんですよ。哲学者の鶴見俊輔が「若さは常に正しい」と言っています。この言葉、いいですよね。 私たちは今、誰の声を聞くべきでしょうか? 2011年に日本で大地震と津波が起こったことで、自然の声を聞く大切さに気づかされました。

アクティビズムに非常に熱心な理由を教えてください。
理由は、僕の子どもたちです。子どもたちが僕の歳になった日のことや、今のペースで僕たちが消費し続けた場合の世界を想像していたら、ものすごく怖くなりました。それで何か行動しようと思ったんです。例えば、CDには生分解性の素材でできたケースを使うようになりました。自分にできる小さなことから始めています。

あるインタビューで、自分のゴールは"完璧なアルバム"を作ることだと言っていましたが、それが今回のアルバムですか?
"完璧なアルバム"というものは存在しないでしょうね。完璧なアルバムがあるとしたら、それは自分が生み出したものに甘んじているということでしょう。甘んじるのは、嫌ですね。アーティストにとって、満足しない気持ちこそ無限の原動力ですよ。あの歌みたいにね。"I can't get no satisfaction"!

Credits


Text Georgia Graham
Photography Zachary Chick
Hair and Make-Up Yoko Okutsu at Shizen
Translation Hiromitsu Koiso

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