HIPHOPオタクが事件に巻き込まれる青春コメディ『DOPE/ドープ!!』

犯罪多発地域を舞台に90年代のヒップホップをこよなく愛する優等生がドープな世界にはまり込んでいく映画『DOPE/ドープ!!』。黒人コミュニティにおけるオタクとは一体どういう存在なのか? ようこそ、ドープ(最高・マヌケ・薬物)の世界へ。

by Machizo Hasegawa
|
17 August 2016, 9:40am

(c) 2015 That's Dope, LLC. All Rights Reserved.

ロサンゼルスの隣町イングルウッド。荒廃したエリアで暮らす成績優秀な高校生マルコムは、名門ハーバード大学への進学を希望しながら、エッセイ(小論文)とOB面接をどうするかで悩んでいた。そんなある日、たまたま知り合ったギャングのドムから大量のパーティ・ドラッグを預かったマルコムは、面接相手のオースティンこそがその元締めだったことを知ってしまう。大学への推薦を条件にドラッグを闇ルートで売りさばくことを承諾させられるマルコム。はたして、彼はヤバいミッションを遂行して大学に進学することが出来るのだろうか?

リック・ファムイーワが監督と脚本を手がけた『DOPE/ドープ!!』は、劇中でマルコムがエッセイの題材に当初アイス・キューブを選んでいたことに象徴されるように、キューブの俳優デビュー作『ボーイズ'ン・ザ・フッド』が切り開いたフッド・ムービー(ゲットーを舞台にした黒人青春映画)の伝統を汲むティーン・コメディだ。でも2作のあいだには決定的な違いがある。マルコムはコミックや『ゲーム・オブ・スローンズ』をこよなく愛するギーク(オタク)なのだ。

ギークは、従来は黒人にはあまりいないとされていた。そのことはマルコム自身も認識しているようで、ギーク仲間と組んでいるパンク・バンドの名はAwreeoh(「オレオ」と読む。外側は黒いけど中身は白いことから、白人かぶれの黒人への蔑称として用いられる。ちなみに白人かぶれのアジア系の蔑称は「バナナ」)。テン年代にあえて90年代ヒップホップを聴いているというのも、極めて白人的と言えるだろう。

でもあらゆるものがネットを通じてやってくる現在において、こうした嗜好は決して異端ではない。そもそも映画のプロデューサーに名を連ね、Awreeohの劇中曲の作者でもあるミュージシャンのファレル・ウィリアムス自身、ロックユニットN.E.R.D.のメンバーでもあるのだから。マルコムも今どきの黒人のひとりにすぎず、イングルウッドというコミュニティの一員なのだ。そのことを彼はMDMA販売というヤバいビジネスを通じて確認していく。

マルコムを演じたシャメイク・ムーアは、本作をきっかけにバズ・ラーマンがNetflixで製作したヒップホップ・ドラマ『ゲットダウン』で主演に抜擢。ギーク仲間役のトニー・レヴォロリとカーシー・クレモンズもそれぞれ『スパイダーマン』新作とアメコミ大作『フラッシュ』で重要な役を演じることが決定するなど、本作は未来の若手スターのお披露目作としても観ることができる。ヒロインのゾーイ・クラヴィッツ、ドム役を演技初経験とは思えない風格で演じた、ラッパーのエイサップ・ロッキーの好演にも注目してほしい。

『DOPE/ドープ!!』
監督・脚本:リック・ファムイーワ 製作総指揮:ファレル・ウィリアムス マイケル・Y・チョウ 出演:シャメイク・ムーア トニー・レヴォロリ カーシー・クレモンズ ゾーイ・クラヴィッツ エイサップ・ロッキー 2015年 アメリカ 103分 配給協力:ビーズインターナショナル

渋谷HUMAXシネマで絶賛公開中、8月13日(土)よりシネマート心斎橋にて、ほか全国順次公開

http://dope-movie.jp/

Credits


Text Machizo Hasegawa