コインランドリーの中のフェミニスト書店

ブルックリンのブッシュウィック在住の女性たちが、クリエイティブな手法で地元への貢献を実現したセックスショップ「トロールホール」。地域の活性化、そして同じ商品の価格を人種やジェンダーによって変えるという斬新なアイデアについて、オーナーたちに聞いてみた。

by Hannah Ongley
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20 July 2016, 7:20am

ニューヨークには、十分すぎる数のコインランドリーとセックスショップがある。しかし、良質のセックス・コインランドリーの数は常に不足している。セックスと洗濯、これらふたつを組み合わせるなど、大失敗間違いなし--と思いきや、マーメイド・ロンドロマット(Mermaid Laundromat)がブルックリンのブッシュウィックに24時間営業でオープンしたトロールホール(Troll Hole)は、セックスと洗濯サービスを提供する店として異例の成功を収めている。トロールホールは、単にコインランドリーの中に設けられたセックスショップとは違う。フェミニズムとクィアというテーマを明確に打ち出し、同人誌や雑誌、ステッカー、トートバッグまで扱うユニークなショップなのだ。トロールホールのInstagramでは、ゲイ漫画の巨匠・田亀源五郎の作品『冬の番屋/長持の中』や、ケニヤ生まれの詩人、現在27歳のワーザン・シャイア(Warsan Shire)による素晴らしいパンフレット『Teaching My Mother How to Give Birth』などが紹介されている。ブッシュウィック在住で、Netflixドラマ『Orange Is the New Black』出演をきっかけに一躍有名女優となったリー・デラリア(Lea DeLaria)は、すでにトロールホールの常連客だという。

トロールホールのオーナーは、ブッシュウィック在住のヘイリー・ブラット(Hayley Blatte)、ジャスティン・ショック(Justin Shock)、モニカ・イー(Monica Yi)の3人組。ネットではなく現実世界で面白いものを売る店を探したとき、ひとつとして彼女たちのお眼鏡にかなうショップがなかった。それが出店を考えついたきっかけだったという。出店場所をへんぴな所にしたのは、地元コミュニティのためのビジネスを願った結果だったそうだ。トロールホールの開店記念パーティが開かれた際、そこで得た収益金はその2ヶ月半ほど前にデカルブ・アベニューで起きた大火事の被害者に寄付された。また、外に屋台を出しているラテンのカップルからスラッシー(かき氷のような飲み物)を買ってから入店すれば、店内の全商品が10%オフになるという特典が用意されている。もちろん、夜10時に洗濯のため来店した人々の間では、様々な交流が行なわれているという。オーナーの3人はいずれも昼間の仕事を持っているため、営業時間はその時々によって異なる。i-Dは今回、地域活性化、ジェンダーや人種によって変える価格、そしてどう地域に関わっていくかについて彼ら3人に聞いた。

昼間はどのような仕事をしているのでしょう? そしてなぜこのプロジェクトを立ち上げようと思ったのでしょうか?
クリエイティブ業界という機械の歯車の一部として働くこと--それが私たちの仕事。勤務時間の大半は、白人ヘテロ男性至上資本主義とは無縁の、フェミニストの理想郷に妄想を膨らましてる。トロールホールをオープンさせたかったのは--そうね、あなたはこれまで、女性の視点で作られた、セックスを完全に肯定しているショップをニューヨークで見たことがあるかしら?セックスショップってどれも無機質かケバケバしいかで入りにくいでしょう。ネットでも現実世界でも、女性用のセックスショップって、大抵は元気がなくなってきた旦那のために250ドルもする前立腺刺激玩具を買えちゃうようなお金持ちの中年白人女性向けの所がほとんど。そうでなければ、独身最後の夜を女友達で過ごすパーティのプレゼントを買うためのお店ね。そしてニューヨークにあるほとんどの"そういう"本屋は、男性向けか、アートの勉強をしたような特定の購買層にターゲットを絞っていて、一般の知的な女性を対象とはしていないのよね。潤滑ローションや興奮剤、フェミニズム関連のグッズが買えるクールな場所がなかったの。ニューヨークでは受け入れられにくい世界観のようね。だから自分たちで作ったの。

それをなぜコインランドリーの中に作ろうと思ったのですか?
そのスペースが可愛かったし、あそこが唯一私たちに払える家賃の価格帯だったの。それから待ち時間で退屈している人たちに面白いサービスも提供できる。すべてしっくりきたの。私たち3人が住んでたアパートのちょうど中間地点にあったし、ここしかないと思ったわ。

店内のクリーニングサービス従業員や、ただ洗濯をしに来た人々の反応はどうでしたか?
従業員の働きぶりは素晴らしい。従業員ミアと姪っ子のジョリーナのおかげよ!私たちのこと、気に入ってもらえてるといいけど......最高のテナントであろうと心がけてるから。洗濯をしに来る人たちも色々よ。たまにしか来ないひともいれば、頻繁に顔を見る客もいる。ブッシュウィックに生まれ育った地元の人たちの多くは私たちのプロジェクトを支援してくれてるわ。イングリッド・マルケスという女性がいてね。彼女はふらっと店に来て、作家クラリッセ・リスペクトール(Clarice Lispector)の本を寄贈してくれた。それと、他にも、ザ・ブラッド・シスターズが1995年に出したアルバム『Hot Pantz: DIY Gynecology Herbal Remedies』のオリジナル版を寄贈してくれた人もいたわ。

お友達が少しだけいた下着を売ろうというアイデアはどこから?
需要が供給を作り出す、でしょ?

Troll Hole's opening party, by Nik Adams of @womanhood

ジェンダーと人種の違いで生じる賃金格差は、物品の価格にどう反映されているのでしょうか?
一般的に、白人男性の収入が1ドルの市場では、白人女性の収入は78セントという比率になると言われているの。それがヒスパニック女性だと55セントになる。もう2016年だっていうのに、現実はいまだにそんな風に腐ってるわけよ。そこでまず私たちが打ちだしたのは、コンドームは販売して、ナプキンやタンポンは無料で配布するというものだったの。女性用衛生品って課税対象になってるって知ってた?全般的に、私たちは価格を最小限に抑えていて、ときには定価を下回る価格にしたりもしてるの。商売って大変なのよ!うちで扱っている冊子はほとんどが5ドル前後。無料配布のものもある。地元の女性がハンドメイドで作った商品も置いていて、地域経済に貢献できればと思ってる。最近はね、「女性である私自身をもっと愛してあげよう」っていうモットーのもと、ロングアイランドで"女性による女性のための"ライフスタイル事業を展開しているEmbrace Your Nakednessとの取引も始めたわ。Embrace Your Nakednessの入浴剤は最高よ。もしかすると、価格を客の特徴によって変えるというのもアリかもしれないわね。この本は、有色人種女性なら10ドル、白人女性なら11ドル、白人男性なら20ドル、とかね。そんなの最高じゃない?

他にブッシュウィックで参加している活動はありますか?
地元ブッシュウィックを祝う日に、Arts in Bushwickに参加したわ。とても意義のあるプロジェクトだった。デカルブ・アベニューで起こった火事は大惨事にまで発展したでしょう?火事は生活のすべてを人から奪ってしまう。そこで、くじ形式のチャリティーをやって、そこで得た収益金をすべて、火事で経済的困窮に追い詰められている犠牲者の人々に寄付したの。Mi Casa No Es Su Casa: Illumination Against Gentrificationっていう素晴らしい団体から、あの火事について聞いたことがきっかけだった。それと、Feeding NYCを運営している素敵な女性たちと一緒に、母の日にブランチを開催したの。軽視されがちながらも、世のため人のために力強く生きている女性、中でも母親が、この世にはたくさんいる。ナタリー・シルヴェラという女性が、ブランチでホームレスの問題や彼女の娘について語ったのが印象的だった。集まったのはトラウマや痛みをとても建設的でポジティブなものに変えている素強い女性ばかりだったわ。

今後はどのようなコラボレーションを計画していますか?
書いたりアート作品を作っていたり、ジンを企画することができて、フェミニズムに精通した有色人種の女性と何かしたいわね。そして、70年代の素晴らしさを理解しているゲイやクィア、毛深い女性、性教育の専門家、それにそうしたグループに属するひとで、スクリーンプリントかリソグラフ印刷に精通しているひと一緒にプロジェクトをしたいと考えているの。我こそはと思う人は、trollholenyc@gmail.comにメールするか、店に立ち寄ってもらえれば嬉しいわ。でも営業時間は日によって異なるから、来る前にInstagramをチェックしてね。

Credits


Text Hannah Ongley
Photos courtesy of Troll Hole
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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