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yahyelが掲げる時代へのアンチテーゼ

ポスト・ダブステップ以降の音楽シーンと同期する音像で支持を集めるyahyelが11月に初のフルアルバムを発売。楽曲、MV、ライヴを通じて欺瞞に満ちた時代へのアンチテーゼを掲げるような彼らの魅力に迫った。

by Hiroyoshi Tomite
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15 December 2016, 5:20am

METAFIVEの前座や今年のFUJI ROCK"ROOKIE A GO-GO"に出場するなど、現在勃興する東京インディシーンで注目を集めているyahyel(ヤイエル)。11月に発売された初のフルアルバム『Flash and Blood』に収録された楽曲は、無機質で冷たい音像にもかかわらず、この時代に抗い生きようとする強い意志や熱を感じることができる。また楽曲のみならず、dutch_tokyo(こと山田健人)が手がけるMVやライヴでのVJなど演出も異彩を放っている。結成からの歩みのなかで制作された楽曲群と背景と演出を含んだライヴ表現を通じて目指すものとは。ボーカルの池貝峻とサンプリングなどを担う篠田ミルに話を聞いた。

yahyelはDATSというバンドでボーカルギターを務めていた杉本亘とサンプラーなどを務める篠田ミル、そして直前まで海外に留学していたボーカルの池貝峻3人の音楽プロジェクトとして2015年3月に誕生した。彼らの化学反応は、結成したその日の夜からはじまっていた。

池貝峻(以下、I):はじめて集まった日の夜に「Midnight Run」という曲ができました。そこでyahyelという音楽プロジェクトをどのような方向性で進めるかの大枠が形づくられたと思います。

篠田ミル(以下、S):「Midnight Run」は池貝がアコギで制作していたデモをベースに、DTMでどういう表現にするか、話し合いながら作っていきました。そのときに彼の黒っぽいR&Bのフィーリングのあるボーカルを活かした音像は何かを議論しました。そのなかで参照点で上がってきたのが、XXYYXXやJames Blakeといったポスト・ダブステップ以降の音楽でした。

2015年9月、VJに映像クリエイターとしても活躍するdutch_tokyoこと山田健人、そしてドラマーに大井一彌が加わってから活動は一層加速していく。初のフルアルバムとなる本作は、「yahyelが結成してから現在に至るまでの活動を通じて、自分達のプロジェクトを定義づけていくようなものだった」と篠田は語る。活動をプロジェクトと銘打ったり、アーティスト写真は表情が分かりにくいものになっていたりするのにも理由があるのだろうか。

I:プロジェクトといっても、自分達が作る楽曲に主張がないわけではないです。むしろ伝えたい想いが強いがためにバランス感覚を大事にするべくプロジェクトと読んでいるんです。それは楽曲だけではなくって、僕たちの主張の魅せ方というか、どんな演出でライヴをするかにおいても同じです。「なんでわざわざ顔が暗く隠れてVJを投影させているか考えてみ?」といった具合にプロジェクトを通じて疑問を投げかけている感覚はありますね。

S:分かりやすく言うと僕たちの通奏低音になっているのが皮肉なんです。それは宇宙人を意味するyahyelという言葉を名前にしたことも然り。かつてYMOが世界に打って出るためのギミックとして黄色人種を意味する言葉を選んだのに近い感覚です。今の世界の人達にとって僕たちはきっとyahyelみたいなものじゃないかって思ったんですよ。

I:僕らはメンバーそれぞれ海外留学経験があって。海外で日本人は「変わった奴ら」というフィルターを通じてしか見られないことを肌で体感しているんですよ。しかもロンドンなどの世界のレコード屋では日本のミュージシャンはジャンルではなく、ワールドミュージックという枠でしか売られていない。これって悲しいことじゃないですか。だから自分達が何者であるかは関係なく、楽曲として評価してほしいと思っているんですよね。

デビュー前にも関わらず、世界に目を向けていた彼らはいくつかのレーベルやライブハウスに直接メールで楽曲を送っていた。その結果今年の1月にロンドンでツアーを行ない、名門レーベル「ROUGH TRADE」でのパフォーマンスをすることに成功した。しかしそれでも奢りはなかった。

I:手応えを感じたというより、自分達の活動の答え合わせができた感覚に近いですね。向こうのシーンで鳴らされる最前線の音楽とそれを享受している音楽リスナーに対して自分たちがどこまでできるかを確かめたかったんです。結果、僕らのパフォーマンスに彼らはきちんと反応してくれた。だから「やっていることは間違っていないな」と言う感覚を得ることができました。楽曲制作やライヴに対する姿勢もそこでの経験は血肉になっているかもしれませんね。

yahyelの楽曲の最大の特徴は無機的にミニマルに鳴らされるトラックであるが、歌い方はファルセットを多様するなど起伏に富んでいて、池貝が描く歌詞は人間関係の軋轢や断絶をテーマに描かれるものが多い。資料によれば、本作はジョージ・オーウェールの『1984年』や、伊藤計劃の『虐殺器官』などディストピア小説にもインスピレーションを感じたというのだ。ただ、冷笑的に時代を受け止めるのではなく、個人が感じた違和感に対して疑問を呈する強い意志がそこにある。

I:今の社会自体に違和感を感じていても、分かりやすく批判できる対象がない/主張するべきモノが見つからないことが、そもそもの構造的な問題だと思っています。その上で僕らの世代は人口が圧倒的に少ないから、民主主義が続く以上、自分たちが声を上げても社会のなかで意見が通りにくいという環境が続いています。それ故にどこにも帰属できない感覚がある。だからこそ、リアリティを持って打ち出せる表現が個人レベルでの軋轢や摩擦、あるいはそこで感じる怒りや絶望なんです。

S:トラックを担当する身としては、無機的なものと熱を感じるボーカリゼーションという具合に、相反するものを提示したいと考えています。彼の歌詞や歌い方が情緒的であるなら、トラックは無機的になっていく必要がある。メロディやフレーズがシンプルであるなら、意識的にトラックに揺らぎを作る。なぜなら、歌い手の感情を一辺倒に表現するようなトラックより、楽曲全体で相反するものを提示して表現している方が今の時代にフィットするリアリティがある気がするんですよ。矛盾したものを並べたときにこそ皮肉が機能すると思いますし、そこで浮かび上がる情感を大切にしていますね。

楽曲の構成は「The Flare」から最後のトラック「Why」にかけて、畳み掛けるように感情の揺らぎや高ぶりを感じるようなエモーショナルな楽曲が並んでいる。そこには明確な意図があったようだ。

I:疑問を投げかけて終わりたかったので、アルバムは「Why」という楽曲で終わらせることを早い段階で決断しました。最後に「Why」というフレーズが残響されて終わるんですけど、それは『疑い』が今回のアルバムに通じるテーマだから。今の状況に対する違和感に対して、しっかりと疑問を呈したい。このアルバムを通じて伝えられるのは、そういうメッセージなのかなと。

『Flesh and Blood』(血肉)という人間を表す言葉がタイトルになっているのも音像が無機的だからこそ風刺が効いている。それにしても結成から僅か2年足らずでそこまで冷静にプロジェクトを打ち立てて、活動できている原動力はどこにあるのだろうか。

I:正直、これまで日本の音楽シーンが消費してきたカルチャーや、今の安直にハッピーな音楽が支持されていることに辟易しているんです。例えば日本で成功するには、歌自体も演歌由来のメロディでないといけないとかバンドはギターとベースがいないといけないという固定観念とかリアリティを感じられない。

そんな現状を打破するために僕らは、国際的なシーンで打って出たい。きちんと世界で評価されるようになって、自分たちの声を大きくして行かない限り、もう日本での音楽のカルチャーは衰退していくだろうなという危機感も感じています。大きなことを達成するなら、冷静でいつづけるしかないじゃないですか。

S:自分たちの音楽性ってすごく今の時代においては自然なことなのに、あらゆるところで「日本人離れした」みたいな謳い文句がつくことも残念に思う。「そういうの、もう終わりにしませんか?」といいたいんですよ。

彼らは時代をシニカルな視点で捉える一方で、自分たちが成し遂げたるために必要なことも厳しく見つめている。だからこそその言葉は真摯で鋭い。

I:注目してもらえていることはありがたいですが、正直に言って1stアルバムをリリースしただけで、まだ何もやっていないという実感です。批判ではなく自戒の意味を込めて、同世代で海外に打ってでているバンドもまだ世界の人達に見てもらえるほど大きな存在になっていないと思います。だから冷静に続けていく、挑戦を重ねていくしかないなと。僕は国際的な音楽シーンで評価されることではじめて「声が大きくなる」と思うので、活動を通じてこのつまらないと感じる現状をぶっ壊していきたいですね。

S:池貝が言うように、今作を通じてやっと自分達の名刺になるような素材が揃っただけの状態。しっかりと今の状況を見据えて、yahyelの声を大きくさせるために、次の制作に向けてトライしていけたらと思います。まあでも今僕たちが言った小難しいことは置いといて、ライヴや楽曲を純粋に楽しんでもらえたらと。その方が皮肉が効いていて面白いじゃないですか。

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Credits


Text Hiroyoshi Tomite
Photography Shun Komiyama