エディ・スリマンが手がけるCeline初のメンズウェアショー

新たな夜明け。

by Steve Salter; translated by Ai Nakayama
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25 January 2019, 6:05am

Celineメンズウェアのまっさらなページにエディ・スリマンが描いたのは、卓越したテーラードスタイルのティーンエイジャーの反抗。2019年秋冬コレクションでCelineメンズウェアデビューを果たしたエディは、かつて若者が熱狂したサブカルチャーにあった、周囲を巻き込むエネルギーと楽観的な姿勢を現代世界に取り入れ、Celineというブランドに新たなスタイルを授けた。

celine menswear autumn/winter 19 hedi slimane

エディ・スリマンは昨年のCelineデビューのさいに『Le Figaro』に答えた貴重なインタビューで、こう発言していた。「CelineはDiorやSaint Laurentに比べると、過去の遺産がそこまで重くない。ブランドの歴史から脱却するのもずっと簡単だ」。こんな彼の〈警告〉にもかかわらず、彼が発表した個性的なシェイプや細身のスーツは、やはりフィービーマニアたちの逆鱗に触れた。ハナ・モトラーがまとった大きなリボン付き水玉ドレスから始まった、クラブカルチャーを礼賛する全96ルックのファーストコレクション。その披露のずっと前から、かつてのCelineファンが反感を覚えることは確定していたともいえる。案の定ショーのあとにはお悔やみ記事かと思うようなトーンの後ろ向きなレビューが溢れたし、『Hollywood Reporter』誌は「エディ・スリマンはファッション界のドナルド・トランプか?」と題した、さすがに誇張過剰な記事を公開した。しかし今や、時代はエレガンス。パリをはじめとする今シーズンのコレクションに目を向けてみれば、彼のCelineデビューコレクションが、この新しい流れを後押ししたのは明らかだ。

celine menswear autumn/winter 19 hedi slimane

エディ・スリマンは何にも惑わされることなく、エディ史上最高にパワフルなメンズウェアコレクションを発表した。スキニースーツ、ナローなネクタイ、ダークな色調、そして世界のコートの歴史をぎゅっと詰め込んだような、見事なアウター群。そういったエディらしいアイテムのなかにも、ハイウエストのプリーツ入りスラックスや、バギーに近いワイドクロップドパンツをはじめとする新しい挑戦がたしかに見い出せた。

Celineのメンズデビューとなる2019年秋冬コレクションの会場となったのは、パリの中心に設営された大きな黒いボックス。会場から外を覗くとエッフェル塔、コンコルド広場のオベリスク、さらに凱旋門が目に入る。ショーが始まる前、会場に流れていたのはクラシックの有名曲だったが、ショーが始まるとバンクーバーのマルチメディア・コレクティブ、CRACK CLOUDのポストパンクサウンドが鳴り響き、巨大な幾何学的な球体が光る。まるでエディ印の若者の象徴がなだれこんできたかのよう。ショーのクライマックスには球体の光が脈動するなか、1970年代のノー・ウェイブを代表する伝説的サックス奏者、ジェームス・チャンスが演奏を披露し、新生Celineがパリの夜に光を放った。

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ラフ・シモンズの姿勢を象徴するすっきりしたショルダーラインや、キム・ジョーンズによるクチュールの魅力に裏打ちされた現代的なエレガンスなど、新しい服のかたちが提案された今シーズンは、ストリートウェア一強時代の終焉として記憶されるだろう。力強くシャープなルックがCelineのショーの最後を飾り、光の点滅が今シーズンの終わりを告げたとき、エディ・スリマンが再びパリを制した、と感じずにはいられなかった。

エディの創造性は、常に写真と音楽への情熱に根差している。そのため彼が、新しい拠点であるロンドンの最先端のサウンドやシーンへと回帰したのも当然だ。ショーノートによると、今回のコレクションはエディがロサンゼルスとロンドンを行き来していたとき、新しい英国バンドを聴きながら形にしたものだそうだ。エディにとって、このコレクションは「英国のクリエイティブな若者たちを撮影したポラロイド写真」だという。それが、モッズからニューウェーブ、スエードヘッド、そしてポストパンクまで英国のサブカルチャーを旅するシャープなテーラリングに結実した。

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「今回のコレクションの核にあるのは伝統のテーラリング。私が昨シーズンのCelineで取り入れた、長方形的ボリューム感をさらに先へと進めた」とエディはショーノートで語る。「Celineのテーラードスーツやレザージャケットに、ツイード、ドネガル、カシミアのオーバーコートを羽織る。そうすると私が研究を重ねた、絶妙なサイズ感が実現できる」。今回はアウターが豊富で、フードポルノならぬ〈コートポルノ〉とはまさにこのこと。スパンコール付きのクロンビー、オーバーサイズのカーコート、ドレープがあしらわれたレオパードプリントのコート、シアリングのダッフル、クラシックなレザーコート。すべてロック的な不良感を漂わせる。

今回のコレクションで、エディは新生Celineの人気を決定づけた。また彼のコレクションはパリのストリートにすでに影響を与えており、ファッション革命はもう始まっていることを感じられる。2000年、カール・ラガーフェルドがエディのDior Hommeを着たいがために約40kgも減量した逸話はあまりに有名だが、かつてエディがもたらした変化は、それほどの影響力があった。それから19年のときを経た今、エディのCelineを着るためにあなたは何をする?

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Credits


Photography @mitchell_sams

This article originally appeared on i-D UK.