フィッシュネット・ストッキングの始祖:パトリシア・クイン

ロンドンのBFIで、伝説の映画『ロッキー・ホラー・ショー』と『ショック・トリートメント』が2本立てで上映された。その格好がハロウィンの定番ルックとなっているマジェンタ——そのマジェンタ本人であるパトリシア・クインにインタビューを行った。

by Matthew Whitehouse
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14 November 2016, 4:12am

『ロッキー・ホラー・ショー』は最も広く知られた「カルト映画」だろう。リチャード・オブライエンによる1973年の舞台作品を映画化したこの作品は、当初、アメリカ全土の大学キャンパスで深夜に上映されるなど、公開規模は小さかった。劇中の登場人物を真似た服装をして、スクリーンの前で劇中の登場人物たちを真似て演技をするというのがこの映画定番の上映方法なわけだが、いま改めてそれを再現した上映を目の当たりにすると、なんだか旧友に再会したような感慨深さを感じた(編み目の粗いストッキングにヒールといういでたちの旧友を目の前に「懐かしい」と表現するのもいかなものかという意見も聞こえそうだが……)。

今年のハロウィンも、ロンドンのBFIでその伝統が継承された。作者のリチャード・オブライエン本人が「続編でも全編でもなく、独立した物語」と明言している『ロッキー・ホラー・ショー』の次作『ショック・トリートメント』(恐ろしいほど的確に、現代のリアリティTVというジャンルの登場を予見している作品だ)と二本立てで上映・上演されたのだ。本誌は「この機会を逃すわけにいかない!」と、『ロッキー・ホラー』のマジェンタ役であり、"あの唇"のひとであるパトリシア・クインに会いに出向いた。こんなインタビューが実現するなんて!

毎年ハロウィンには今回のBFIのようなイベントで引っ張りだこでしょうね?
ハロウィンだけじゃないわよ!この40年、ほぼ毎日よ!去年で40歳を迎えた『ロッキー・ホラー・ショー』は、世界最大のカルト映画であるだけじゃなく、映画の歴史を塗り替える偉業を達成したのよ。それを聞いて震えたわ!みんなが「『風と共に去りぬ』は?」って言うけど、そう言う人たちに私は「『風と共に去りぬ』と違って『ロッキー・ホラー』は映画の歴史で唯一、初公開から現在に至るまで絶えず世界のどこかで上映されてきた映画なのよ!」って答えるの。

マジェンタの服装は、ハロウィンの定番コスチュームになっていますね。
ハロウィンは、いわば"ロッキー・ホラー・デイ"よ。ずっと「なんでかしら?」って思ってきたけど、ある時「タイトルに"ホラー"って単語が入っているからだ」って気づいたの。初めてマジェンタ役の格好をしているひとを見たのは、ニューヨークの劇場8th Street Playhouseでのことだった。映画のプロデューサーのひとり、マイケル・ホワイトが私たちに電話をしてきて「コスチュームから演技まですべて君たちの真似をして、スクリーンの前で実演してる連中がいるぞ」って言うから、意味もわからずニューヨークへ行ったの。初めて"ロッキー・ホラー"パフォーマンスを観させてもらって、その後にコンベンションが開かれた。対面したマジェンタ役は男の子だったの!『男の子がなぜマジェンタを?』と思ったのが、私が初めて実演キャストと対面したときの思い出。あれから40年が経った今、ハロウィンには数え切れないほどの男の子がマジェンタのコスチュームを選んでくれるようになっているのね。

『ロッキー・ホラー・ショー』のおかげで世界中を旅したのでしょうね。
アメリカではこれまでいたるところでコンベンションに参加してきたわね。それに、世界中のコミコンや、イギリスでのコンベンション、数え切れないほど参加してきたわよ。最近ではストーク・オン・トレントでもコンベンションがあったわ。ストークがどこにあるのかも知らないんだけど、ストークは『ロッキー・ホラー』の世界観を体現したような町だったわ!銀行員からパン屋さん、キャンドル職人にいたるまで、町に暮らすひとたちはみんな仕事を終えて家に帰るとまずお風呂に入って、すね毛を剃ってセクシーな下着を身につけるの。最高だったわ。全員が実演キャストみたいだった。『ロッキー・ホラー』のクラブがあるからかしらね。

上映会の後には、劇中の「Time Warp」をテーマにした特別なパーティがあったそうですが、あの曲が書かれた経緯について少し詳しく教えてください。
監督のジム・シャーマンがジャン=リュック・ゴダールの『はなればなれに』を観たことがあって、そのなかに、強盗になってしまうふたりの男と、彼らが惹かれている女性の3人が、カフェでダンスをするシーンがあるの。3人は突然立ち上がってマジソン・ダンスをするんだけど、レコード1曲分を1本撮りで撮影しているの。素晴らしいシーンよ。ジムがそのシーンを思い出したらしく、著者のリチャード・オブライエンに「リチャード(リフ・ラフ役)、パット(マジェンタ役)、ネル(コロンビア役)の3人に、ステージ上でダンスをさせたい。オリジナルの曲が欲しい」って言い出したの。スクリーン上ではトランシルバニア人たちがいるけど、今回のステージでは私たち3人だけ。「Time Warp」は映画『はなればなれに』に着想を得て作られたんだけど、歌詞がダンスのインストラクションになっているのが素晴らしい。そう思わない?『ロッキー・ホラー』を観たこともない、何かも知らない、でも「Time Warp」は踊れるっていうひとが世界にはたくさんいるのよ。オブライエンは「あの曲のおかげでいい思いをしてきた」って言ってたわ。「そうでしょうね」って言ってやったわ。

『ロッキー・ホラー・ショー』の魅力とは?
才能が集結して作られていることがまずあると思う。監督のジム・シャーマンとデザイン面でのパートナー、ブライアン・トンプソンは、ロンドンで『Jesus Christ Superstar』を大成功させたペアで、コスチュームデザイナーのスー・ブレインは文字どおりパンクを作り出した人物。ヴィヴィアン・ウェストウッドとマルコム・マクラーレンがまだくすぶっていたとき、実はスーがパンクを作り出していたのよ。私たちも破いた服やピンを身につけさせられていたわ。ヴィヴィアンが作り出したものはたしかに大きかったけれど、パンク自体は私たちのステージから始まったの。才能溢れる人材がひとつになって作り出したもの——あんなこと、もうきっと二度と起こらないわ。

ハロウィンにマジェンタの格好をしたことは?
私が?まさか!私がマジェンタなのよ!

Credits


Text Matthew Whitehouse
Artwork © 1975 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved. 
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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