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小説家たちと洋服の甘美な関係

書かれた物語の服を着るのではなく、書きたい物語の服を着ること。

by James Anderson
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01 August 2017, 9:40am

Joan Didion

This article was originally published by i-D UK.

1990年代の数年間、テリー・ニューマン(Terry Newman)はi-Dで働いていた。その後フリーランスとして、数々の雑誌や新聞へ寄稿するようになり、男の子2人の母となった後、カリフォルニア大学でファッション・ジャーナリズムを教える上級講師となった。

ニューマンの最新プロジェクトは、彼女が愛する「スタイルの世界」と「作家」の接点を探った『Legendary Authors and the Clothes They Wore』だ。このなかで、彼女は過去から現代までの有名作家たちが打ち出した印象深いスタイルを仔細に探っている。パティ・スミス、ジョー・オートン、トルーマン・カポーティ、ゼイディー・スミス、ブレット・イーストン・エリス、ジャクリーヌ・スサン、アレン・ギンズバーグ、クエンティン・クリスプ、ジョーン・ディディオン、その他、世界のファッション・デザイナーたちにインスピレーションを与え続けている多くの作家たちが取り上げられている。わたしたちの旧知の友人、テリーに話を聞いた。

Allen Ginsberg with artist Slava Mogutin

i-Dで働き始めたのはいつ?
1995年に事務職として入社して、はじめのうちは電話番や郵便物の管理、案内広告制作を担当していたの。インターネットが普及する前の時代。i-Dの案内広告は、印刷物版のFacebookのようだった。たくさんの若いデザイナーたちが自己アピールをしていてね。その後は、当時の編集担当だったアヴリル・メアー(Avril Mair)とファッション・ディレクターのエドワード・エニンフルに「スタイルに関して書くページを担当させてほしい」と何度もお願いをした甲斐あって、i-D初のショッピング・エディターになったの。

当時の思い出は?
90年代、i-Dには素晴らしいエネルギーが溢れていた。オフィスには、時代を動かしていた才能溢れるひとたちがたくさん集まっていてね。そんな環境から多くを学んだわ。当時のアート・ディレクター、スコット・キング(Scott King)は、どんな写真も素晴らしい出来にしあげていた。彼には、当時i-Dで写真を撮っていたヴォルフガング・ティルマンスやユルゲン・テラーといった素晴らしい写真家を惹き付ける力があった。当時まだ18歳だったエドワード・エニンフルがファッション・ディレクターを務めていたのも、不思議には思わなかった——彼は明確な方向性を打ち出していたから。オフィスに入ったらエニンフルのデスクにモデルのアレック・ウェックが座っていたことがあって、「こんなに美しいひと、見たことがない」と思ったのを覚えてる。彼女を発掘したのはエニンフルだったのよね。

『Legendary Authors and the Clothes They Wore』はあなたにとって初の著書?
i-Dが発行してきた『Fashion Now』、『Fashion Now 2』、『Soul』にも寄稿をしてきたわ。どれにも携わることができて本当に楽しかった。でも自分の本となると今回の『Legendary Authors and the Clothes They Wore』がデビュー作になるわね。

Truman Capote

あなたはずっと本好きだったのですか?
わたしは常にふたつのものにだけ惹かれて生きてきた。ひとつが本。もうひとつが洋服。『Legendary Authors and the Clothes They Wore』で取り上げている作家はすべて、わたしにとって英雄的な存在。彼らの文章が好きで、彼らの意図していないスタイルが好き。彼らの小説にはいつもインスパイアされるわ。

この本を作ろうと思ったきっかけは?
これら作家の小説を読みながら育ったわたしには、小説そのものと同じくらい作家自身が興味深く思えたの。彼らと、彼らの実体験にとても興味をそそられたのね。クエンティン・クリスプやオスカー・ワイルドはロマンチックでエキゾティックな個性を放っていた。御法度とされている世界を体現してしまう個性はわたしを魅了し続けたわ。今回の本に収められている作家たちはそれぞれが独自の世界観を放っていて、取り上げないわけにはいかなかった。

スタイルの面においてどの作家がもっとも好きですか?
本当に全員が好きなんだけれど、だれかひとりに自分がなれるとしたら、レトロ感があってビートニクスっぽくクールなシモーヌ・ド・ボーヴォワールか、異色で不思議な魅力を持った両性具有的存在感のあるパティ・スミス。もしくは、英国エキセントリックの王道ナンシー・ミットフォード。

「不向き」としてこの本から除外した作家はいますか?
この本のポイントは、「不向きでも関係ない」ということ。この本で取り上げている作家はどれも、それぞれ活躍していた時代に必ずしも"ファッショナブル"とは考えられていなかったけれど(ゼイディー・スミスを除いてね)、独自のスタイルで無二の存在感をもつ作家ばかり。それこそがわたしが服に興味を持つを最大のポイント——いかにしてひとはスタイルを自分のものにしていくのか。ファッションは追うよりも、自分のスタイルを築き上げるほうが良いのだから。

Quentin Crisp

なぜ作家は個性的なスタイルを持っているのだと思いますか?
作家はそれぞれの世界を持っていて、そこに生きている——ひとがどう思うか心配することなく自由に服を着るからかもしれない。天才的な作家には思い込みが激しくて芸術的なひとが多く、彼らはどうやっても自身でしかいられない。それが、彼らの書く物語にも服装にも現れるんだと思う。それもまた、とても魅力的なの。

作家に関するエピソードで、この本を書き進めるなか初めて知ったことはありましたか?
わたしは若い頃、ずっとジョー・オートンに夢中だったの。それで大学生のときには、ヴィヴィアン・ウエストウッドに魅了されてもいた。でも、不思議なのことに、このふたりのつながりを知ったのは、この本を書いているときだった。オートンの戯曲『Loot』が公演された際のポスターには切り貼りのレタリングが用いられていたんだけれど、ヴィヴィアンとマルコム・マクラーレンはそのポスターに影響を受けて、あのパクスタイルを築いたみたいなの。それと、オートンの未完作に『Prick Up Your Ears』というのがあるんだけれど、それがVivienne Westwoodの「ワールズ・エンド」コレクションの有名なTシャツ作品を作り出したそう。ゲイのセックスを描いた絵をシルクスクリーンでプリントしたものね。オートンは「保守派中流階級のイギリス人階層はセックスに激高する」と発言をしていてるんだけど——そう、ヴィヴィアンとマルコムが1974年に作ったショップの名前も「SEX」だった。

昔の作家たちは、現代の作家たちよりも良い身なりをしていたと思いますか?
パティ・スミスは今でも変わらず素晴らしいし、ゼイディー・スミスもわたしは変わらず好きよ。現代作家にも素晴らしいスタイルを打ち出しているひとたちは多いけれど、いまは作家が公的な場所に現れるとき、決まってスタイリストがついている——それが、もちえたかもしれないスタイルをその作家から奪うことになっているかもしれない。昔はそんなこと起こらなかった——この本に収められている作家たちは、彼ら自身が生み出したスタイルをまとっていたのよ。

テリー・ニューマン著『Legendary Authors and the Clothes They Wore』は、HarperCollins社出版でHarper Design社より7月27日より発売開始。

Credits


Text James Anderson
All images creative commons