デイヴィッド・ホックニーが絵画制作を再開

亡きアシスタントとの思い出に突き動かされて制作を再開したホックニー。彼の描いたポートレート群が、ロイヤル・アカデミーで展示されている。

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jul 19 2016, 4:33am

David Hockney, Rufus Hale, 23rd, 24th, 25th November, 2015

2013年5月、デイヴィッド・ホックニー(David Hockney)のアシスタントだったドミニク・エリオット(Dominic Elliott)が、酒とドラッグ大量摂取の末に排水管洗浄剤を飲み、事故死した。ドミニクは当時、まだ23歳の若さだった。ホックニーは悲しみに暮れ、しばらくの間、創作活動を休止していた。ロサンゼルスのスタジオに引きこもったホックニーだったが、ここにきてようやく創作活動に復帰。80を超えるポートレートを描いた。それらのポートレートが、現在ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ国立美術学校で一般公開されている。展示されているポートレートには、ホックニーが抱えるもうひとりのアシスタント、JPの愛称で呼ばれているジャン=ピエール・ゴンサルヴェス・デ・リマ(Jean-Pierre Goncalves de Lima)を描いたものもある。この絵で、ドミニクの死を受け入れられないJPは、椅子に座り、手に頭を抱えている。

JPのポートレートを描いたのをきっかけに、ホックニーは創作意欲を取り戻したようだ。ホックニー作品は、特にその豊かな感情が宿り、表現されていることで広く知られている。恋愛関係の終焉からAIDS危機まで、パーソナルな絶対的悲しみも、社会的なトラウマも、ホックニーは絵に描くことでその本質を暴き、またそんな無情な現実から逃避するために絵を描いてきた。また、人生における危機的な状況にあるとき、彼が多く描いたのがポートレートとロサンゼルスだった。今回の作品群は、そういった意味で、ホックニーの原点回帰といえる世界観が描かれている。

David Hockney, Barry Humphries, 26th, 27th, 28th March, 2015

BBCとのインタビューで、ホックニーは今回のシリーズを創作した経緯について次のように話している。「しばらくの間、ほとんど創作活動をしていなかったんだ——庭の絵を描いたりはしたけれどね。JPの絵を描いたことをきっかけに、"もっと描きたい"という衝動に駆られた」。JPの絵を描いたことでヴィジョンが広がった彼は、友人や家族、仲間、ロサンゼルスのクリエーターたちのポートレートを次々に描いた。

ロスチャイルド男爵やジョン・バルデッサリ、バリー・ハンフリーズらのモデルたちは、ホックニー作品の特徴であるブルーやターコイズといった色彩をバックに、全員が同じ椅子に座っている。統一されたセッティングでもそれぞれの作品が見る者に訴えかけてくるのは、モデルひとりひとりから溢れる個性と感情が捉えられているからだろう。このシリーズに込めた意味について訊かれたホックニーは「私たちは皆、それぞれが個人であるということ。外面も違えば、内面もまた違うのだということ」と答えている。

来年にはテート(Tate Britain)にて、自身にとって最大規模となる回顧展の開催が予定されているホックニー。今回ロイヤル・アカデミーで公開されるポートレートシリーズで、回顧展への期待もさらに高まることとなるだろう。

David Hockney, 82 Portraits and 1 Still Life runs from 2 July — 2 October at the Royal Academy.

David Hockney, John Baldessari, 13th, 16th December, 2013.

Credits


Text Felix Petty
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.