Ellie wears all clothing Chanel. Fragrance Chanel No.5 L'eau (worn throughout).

イギリス映画界の未来を担う女優:エリー・バンバー

高校を卒業してハリウッドへ——Chanelのブランド・アンバサダーに任命されたエリー・バンバー。トム・フォード監督最新作『ノクターナル・アニマルズ』の大役に抜擢され、一躍スターの階段を駆け上ること間違いなしの彼女に話を聞いた。

by Holly Shackleton
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12 October 2017, 8:11am

Ellie wears all clothing Chanel. Fragrance Chanel No.5 L'eau (worn throughout).

This article was originally published by i-D UK.

エメラルドグリーンのビキニにChanelのサングラスという出で立ちで南仏の陽光のなか横たわるエリー・バンバー(Ellie Bamber)は、どこをとってもスターの素質を感じさせる。エリーはChanelのゲストとしてカンヌ国際映画祭に参加するため、コートダジュールにいる。その透き通るような肌、太陽の光に輝く赤褐色の長い髪、そしてデリケートな目鼻立ちで、若き日のジュリアン・ムーアやニコール・キッドマンを彷彿とさせる——そこに、その髪の色の熱い狂気にも似た個性が加わり、エリーは「映画に花を添えるために生まれてきた」と思わせる美しさを放っている。Chanelもそれに魅了され、彼女をブランド・アンバサダーに任命した。エリーは今、嵐の前の静けさを満喫している。満喫すべきなのだ。なぜなら、間もなくトム・フォードの監督作品2作目となる『ノクターナル・アニマルズ』が公開となり、公開されればエリーはもう静かな生活を送れなくなること必至だからだ。

「『次作の製作を進めているトム・フォードのためにオーディション・テープを作りなさい』とエージェントから言われたときは、それほど何も考えずにテープを作ったわ」とエリーは真っ白なガウンに着替えながら言った。「そんな感じで作ったテープだったのに、トムは気に入ってくれて。数日後、エージェントが『トムがとても気に入ったようで、今度彼のオフィスに来てほしいそうだ』って」。トム・フォードのオフィス、Pimlico本部でのひとときを彼女は生涯忘れないという。「Pimlicoでは男性は全員がスーツ、女性は全員がスチレットヒールを履いていたの」とエリーは楽しそうに目を見開いて話す。「それとDiptyqueのキャンドルがいたるところに置かれてた。あの日は何を着ていくか悩みに悩んだわ。だって、天下のトム・フォードだもの。パジャマみたいな格好で行って彼に認めてもらえるなんて誰も考えないでしょう?」。フレアジーンズにシャツ、そして足元にはサボという服装だった彼女を、トムは「素晴らしく君らしいスタイル」と褒めたという。「あの年最高の瞬間になったわ!」とエリーはそのときのことを思い出しながら笑う。初対面から2週間後、エリーは再びトムに呼び出された。興奮に飛び跳ねながら出向いたエリーに、トムは「君を僕の映画に」と起用を告げた。

『ノクターナル・アニマルズ』は、観終わった後も観客の想像力のなかに登場人物たちが生き続けるような、ダークで力強いスリラー作品だ。幸せなはずの生活を送りながらも心満たされないロサンゼルスの美術商スーザン・モローをエイミー・アダムスが演じ、処女作となる小説『Nocturnal Animals(夜行性動物)』を送りつけてスーザンの2度目の結婚生活を揺すぶる元夫トニーをジェイク・ギレンホールが演じている。小説の物語に心動かされたスーザンは、妻ローラ(アイラ・フィッシャー)と娘ヘレン(エリー)を車に乗せてアメリカ南西部のモハーヴェ砂漠にある別荘へと連れて走るトニーを想像する。しかし、道中で彼らはアーロン・テイラー=ジョンソン演じる男の率いるギャングに襲われる。物語のなかのこの物語は、残忍ながらも、トム・フォードの指揮のもと、とにかく美しく描かれ、すでにスターであるキャスト全員から息を飲むほどの深みを引き出している。エリーもまた、女優として新たな道を示されたと同時に、彼女自身のなかにあった感情的な深みを引き出されたという。「感情的に疲労困憊するときもあった」とエリーは明かす。「映画が物語るストーリーは、観るものの心に傷を残すほど悲しい。私は家族から無理やり引き離されたりする、とてつもなく辛いシーンを役として生きなければならなかった。自分がそんな状況に立たされたらどんなふうに感じるか、どんなことをするかを深く想像しなくちゃならなかった」

そのように作り出されたシーンの力強さに、エリーは予期せぬ感情を引き出されたという。「夜通し泣き続けるという感情的なシーンを撮影し終えて、ホテルに戻ったのが朝の5時——部屋に入ると、また涙が止まらなくなったの」とエリーは語る。「あの感覚は今でもうまく説明ができないわ」。またある時、エリーは突如として衝動に突き動かされ、走り出したことがあったのだそうだ。「ある夜中、いてもたってもいられなくなって、ホテルにあったランニングマシーンでひたすら走り続けたの。パジャマのままで。クタクタに疲れたところで部屋に戻り、ぐっすり寝たわ」と彼女はそのときのことを思い出しながら話す。トムや他の俳優たちは、そんな感覚との付き合いかたに関し、エリーを手助けしてくれたのだろうか?「いや、それは自分自身で学ばなくてはいけないことなんだと思う。泣いたり、さまざまな感情を実際に体験したうえで、それをコントロールして、自分のなかに落とし込まないといけないんだと思う」

エリーはトム・フォードから多くを学んだ。彼は、彼女が女優として初めて挑んだ大作の監督、というだけではない。トムは現場以外でも彼女に多くの影響を与えたという。「彼を見ているだけで多くを学ぶことができた。あの優雅な存在感、あの美の感覚、あのヴィジョン——トムがこだわるディテールには驚きっぱなしだった。フィッティングのとき、忙しく駆けずり回っていたコスチュームデザイナーのネイルポリッシュを見て『エリー、君の爪にもあの色を』と突然言ったの。トムはなんでもそんなふうにインスピレーションを得て、そんなふうに決めていく。だけど細部の細部にまできちんと考えを巡らせているの。そんな全てが感動的ですらあったわ。そういう彼の選択から、キャラクターに関する可能なかぎりの情報を得ていった」。彼女に割り振られた役はテキサス州の少女ヘレン。アメリカ中西部の少女になるため、エリーは1973年映画『地獄の逃避行』のシシー・スペイセクや、テレビドラマから映画化もされた『プライド栄光への絆』を観続け、撮影期間中は共演者たちと共にテキサス訛りのまま生活を送ったのだという。「役になりきる方法については、ジェイクが大きく手助けしてくれた」と彼女は撮影当時を回想する。「アイラはとにかく面白いことばっかり言ってた。本当に楽しいひと!」

エリーは1997年、バークシャー州クロウソーンに生まれた。物心がついた頃から女優になることを夢見てきたという。キーラ・ナイトレイ(「完璧としか言いようがない」)とジュリアン・ムーア(「素晴らしいの一言!」)、そしてニコール・キッドマン(「『ムーラン・ルージュ』でのあの美しさ!」)をアイドルとして育ったエリーは、映画を観るだけでは満足いかなくなり、自分もそのなかに生きたいと願うようになった。「演技が自己表現の方法になったの。思春期って、不安や問題で胸も頭もいっぱいになるでしょう?演劇でそんな不安や問題に直面し、解決してきたの」と彼女は話す。学校での演劇でその才能を見出されたのが11歳のとき。その後、13歳でデイヴィッド・ガーネット著の小説をミュージカル化した『アスペクツ・オブ・ラブ』に起用されてイギリス演劇界の名匠演出家トレバー・ナンと舞台を作り上げた。そして、ミュージカル・コメディの名作『上流階級』がオールド・ヴィック・シアターで上演された際には、ケヴィン・スペイシーと共演し、主役を務めた。「若い頃は本当に度胸があったと思う。舞台に立たせてくれるなら、どんな役でも受けた。そんな私にママはいつでもヒヤヒヤしていたけど、私はいたって冷静だったわ」とエリーは当時について話す。そんな彼女が念願の映画デビューを果たしたのは、2014年の『The Falling』だった。メイジー・ウィリアムズとの共演作で、エリーの役どころは端役だったものの、これをきっかけにエリーは『高慢と偏見とゾンビ』で主役の座を射た。この映画撮影の準備として、エリーは人里離れた森の中の小屋に暮らし、格闘技を学んだという。「やみくもに技を繰り出したりするから、何度も相手にニアミスして怪我をさせそうになったわ!」とエリーは大笑いした。

エリーは音楽と友達が大好きな、いたって普通の19歳の少女だ。「音楽は大大大好き。90年代のヒップホップや、ストーン・ローゼズ、ドレイク——ビヨンセの「Lemonade」なんて何回聴いても聴き飽きない」。エリーはファッションも大好きだという。「完全にショッピング中毒なの!」。Tom FordとGiles Deacon、そしてChanelの世界観が好きだそうだ。Chanelのブランド・アンバサダーとして、エリーはChanelのプレタポルテとクチュールのショーに招待されている。彼女が観たショーは「ただただ素晴らしかった!」とのこと。今でも家族と共にサリー州に暮らしているエリーだが、そろそろロンドンにフラットの購入を考えている。友達が大学で勉学に励んでいる今、自らは夢を追って女優の道を突き進んでいるということを、ときに辛く感じるときもあるそうだが、それでもその犠牲を払ってでも彼女はこの道をひた走りたいようだ。「仲良しの友達がみんなでパーティに行ったり、海外旅行に行ったりしている一方で、わたしは映画の撮影をしていたりすると辛くなるときもある。仲間はずれになったような気分になる」とエリーは明かす。「でもそんなときは『いま私は、子供の頃からの夢を実際に生きてるの』って自分を鼓舞するの!」

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Chanel CC Cream and Hydra Beauty Nourishing Lip Care.

Swimsuit Eres.

Credits


Text Holly Shackleton
Shot at the Chanel fields in Grasse during the Rose de Mal Harvest
Photography Angelo Pennetta. Styling Julia Sarr-Jamois
Hair Perrine Rougemont. Make-up Valeria Ferreira using Chanel Fall 2016 and Hydra Beauty.
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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