Vetementsでモデルを務めた溶接アーティスト:リリー・オルセン

VetementsとBALENCIAGAでモデルを務め、スタイリストのロッタ・ヴォルコヴァの新しいミューズになったリリー・オルセン。写真を撮り、彫刻を学ぶ芸術家でもある彼女の全貌に迫る。

by Georgia Graham
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02 November 2016, 2:00am

ニューヨークのローワー・イースト・サイド。リリー・オルセン(Lily Olsen)の自宅に程近いカフェで彼女に会った瞬間、私は衝撃を受けた。モデルにしては小さな162.5cmの体に、溢れだす大きな人間性。今最も売れているモデルに数えられるリリーは、芸術家にして同性愛活動家だ。16歳で溶接を始め、現在は彫刻や写真、#itslegalNYCや#freethenippleに呼応したインスタレーション作品など幅広い形式でアート作品を生み出している。リリーが撮影する同性愛の女性を被写体にしたポートレイト作品はリアルで「異質感」に対する信念に心を動かされる。

リリーはコネチカット州グリニッジで生まれ育ったが、「お金持ちの良家ばかりで、ゴルフ場や教会で集まるような人たち」が住むその保守的な場所から抜け出し、ニューヨークに移り住んだ。今年2月、InstagaramのDMをきっかけに、パリで行われたVetementsとBALENCIAGAのショーでモデルを務め、成功を収めた。モデルとして、また芸術家としてのキャリアも積む23歳。創造力や同性愛、そして初めてのヨーロッパについて話を聞いた。

BALENCIAGAからDMが届いた時はどう思いましたか?どういう経緯だったのでしょう?
スタイリストのロッタ・ヴォルコヴァが私のInstagaramをフォローしていて、彼女がニューヨークのマーサーホテルでBALENCIAGAとVetementsのショーのオーディションがあるから受けてみないか、とメッセージをくれたんです。そのときは事務所に入っていなかったから、宣材写真も何もなくて。会場に着いて、そこで一番偉そうな男性の隣に座ってみたんだけど、その人に「リリーです」って挨拶したら「みんな知ってるよ」って言われたんです。私は有名人じゃないのに、本当に驚きました。
その日はバレンタインで、オーディションの後にデートに行ったから携帯を見ていなかったんだけど、BALENCIAGAから合格通知のメールが入っていて。とにかく驚いたけど、でもすごく嬉しかった。それまでヨーロッパに行ったことすらなかったし。

さまざまな分野で芸術活動をされていますね。どんな作品を作っているのですか?
彫刻を勉強していて、金属加工が専門です。それから写真を撮るようになって、主に同性愛の女性を撮影しています。彼女たちを撮影するときには、幸せや強さを表現し、力付けるような作品にするように意識しています。ただ綺麗なだけで能天気なものではなく、女性性について考えてもらえる作品にしたいと思っているんです。意識することに関しては、脇の毛ばかりが主張してしまうような作品にはならないよう心掛けてもいます!

今は撮影される側でもありますね。
元カノがファッション専門のフォトグラファーだったこともあって、18のときにモデルを始めました。彼女には私が活動するアートの世界でもモデルをするべきだと言われたんだけど、身長も162.5cmしかないからファッションの世界でモデルをするなんて想像もしなかった。最近キャス・バード(Cass Bird)と仕事をして、ずっと前から彼女のファンで作品も大好きだったんだけど、実際に会ってみて本当に面白かったです。新たにゲイのお母さんができたみたいで、とても近しく感じました!

溶接や金属を加工して作品を作るあなたですが、ファッション界に捻じ曲げられてしまっているように感じることはありますか?
ファッション界からの要望には応えたいと思う自分がいる一方で、私の場合、人と違っていること、自分でもコントロールできない素の自分を出すことで、注目を集めているという現実があるのも確かだと思うのです。私を型にはめ込もうとする人たちに従うのではなく、私が彼らの概念を変えられるようになりたいです。

i-Dの前号は『female gaze(女性の視点)』の特集です。#itslegalNYCプロジェクトについて教えてください?
#itslegalNYCは、私が#freethenippleに賛同して始めたプロジェクトです。上半身裸の男性と女性の顔出しパネルを作り、胸に対する人々の反応を調べました。ニューヨークの夏は本当に暑くて、トップスを脱ぎたくなることがよくあるんですが、脱ぐと凝視されたり、写真を撮られたりするから、実際には脱げないんです。男性だったら問題になりませんよね。ニューヨークでは、女性が街中で上半身裸になっても捕まりはしないものの、タブーだから誰もしない。この男女差をなくしたいですね。私は街中で一般の人に向けて作品を展示するのが好きです。見たくて見るのではなくて、否応なしに作品に触れることになるので。みんな胸のある方のパネルを避けていましたね。性的な目で、そういう対象として見られることになるから。

パリでデビューを果たしたニューヨーカーとして、パリのファッションシーンに持ち込みたいニューヨークらしさはありますか?
ニューヨークはエネルギーの街。過剰とも言える活発さや刺激をパリに持ち込みたいと思います。それとブラックユーモアも少し!

BALENCIAGAVetementsのモデルをする前から、Vetementsのブームには気づいていましたか?
全く知りませんでしたが、調べたらすぐにわかりました。Vetementsはユーモアのセンスがありますね。ミームカルチャーを理解し、ファッション業界に柔軟な切り口を見せたことは革命的だと思います。

若い芸術家として、ファッションに挑むVetementsの姿勢に刺激されることはありますか?
ええ、もちろん!反発することは、ある意味で個性を表現することだと思います。私が育ったコネチカットの町では、反発など一切なかった。それに従おうと思ったけど、イライラするし、本心でもないので、結局耐えられませんでした。

芸術家のリリーとモデルのリリーは違う存在なのでしょうか?
両方が組み合わさったリリーがいいと思いますね。芸術家としての私がファッションの世界に導いてくれ、芸術家たちと仕事をしたことがモデルをするきっかけとなったから。それにファッションを通じて学んだことや出会った人が、すべて私の作品に生きています。

モデルが一個人として注目されることが多くなっていますが、この傾向は励みになりますか?
もちろんです。縛られることなく自由だと感じられると自信が持てます。自分が特別な存在だと思えるし、私らしくいられるから。このソーシャルメディアの時代では、私たちの世代でも自分自身のブランディングが大切。私の世代は受容と個性の世代ですが、この世代が好きですし、その1人として活動していきたいですね。

先シーズンは初めてのパリ、初めてのランウェイと、初めてづくしでしたね。今シーズンにはなにを期待していますか?
なにが起こるか楽しみです!誰がこの小さいモデルを起用してくれるのか——新しい出会いやアフターパーティーも楽しみです。先シーズンのBALENCIAGAのアフターパーティーは最高だったから。

Credits


Text Georgia Graham
Polaroid courtesy Ford Models, Artwork courtesy Lily Olsen
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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