ギャスパー・ノエと行く(バッド)トリップを彩る7曲

今年9月にフランスで公開されたギャスパー・ノエの新作『クライマックス』。記憶に残るそのサウンドトラックから厳選してご紹介。

by i-D France; translated by Ai Nakayama
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05 november 2018, 5:20am

ギャスパー・ノエ監督の新作のポスターの宣伝文句はこうだ。「『カノン』を軽蔑し、『アレックス』を嫌い、『エンター・ザ・ボイド』にうんざりし、『LOVE 3D』を罵倒したあなたへ。今度は『クライマックス』をどうぞ」。パリを拠点とするアルゼンチン人監督ギャスパー・ノエには、ユーモアのセンスがあることは間違いない(そのセンスが彼の作品で発揮されることはなかなかないが)。最新作『クライマックス』は、パリのヴォーグシーンにインスパイアされたダンス映画だ。LSD入りサングリアのせいで、みんなの精神が錯乱していく様を描いている。作品で重要な役割を果たすのがグルーヴだ。音楽は作品の核であり、サウンドトラックは最高。

今年5月、カンヌ映画祭でのプレミア上映後のi-Dによるインタビューで「当初から、全編を通して音楽を流したいと思っていました」と監督は語っていた。「最初は、音楽の権利交渉から着手しました。音楽がなければダンス映画なんてつくれませんからね」。しかし彼が当初使用を望んでいたドナ・サマーの「I Feel Love」は諦めるしかなかったという。権利所有者が、ドナ・サマーを「ドラッグ映画と関連付けたくない」と拒否したのだ。残念だ。その代わり、サウンドトラックに無事収録された曲を聴きながら日本公開を待とう。

CERRONE「Supernature」
クスリまみれのシンセサイザー・シンフォニー「Supernature」。この曲がリリースされたのは1977年。当時の人びとの耳には、さぞかし未来からの賛歌に聴こえたことだろう。2018年の今では、曲に漂うかすかなメランコリーが、逆にトリッピーな感覚を強めている。善と悪、夢と現実のあいだを行き来する「Supernature」は、待ち望んだ週末の夜遊びにぴったりだ。いつまでも続けばいいのに、と願うあの夜に。

クリス・カーター「Solidit」
さて、今度は遡ること1980年。クリス・カーターのソロ作『The Space Between』の収録曲「Solidit」だ。安定性や恒常性を示すタイトルに騙されちゃいけない。クリス・カーターのサウンドは分解し、様々な方向へと永遠に広がっていく。音のあらゆる可能性を追求して。

キディ・スマイル「Dickmatized」
想像してみてほしい。朝起きたら、人の顔が全部ペニスだった。どこを見てもペニス、ペニス、ペニス…。〈dickmatized〉とは、そんな悪夢のような状況のこと。

NEON「Voices」
こちらも80年代の忘れられた名曲。催眠作用があり、セクシーで、熱狂と危険の境界線がぼやけてしまった終わりなきダンスのトンネルへといざなう。煽情的に踊る変なアバターにはぴったりの曲だ。

THE ROLLING STONES「悲しみのアンジー」
THE ROLLING STONESによるカルト的な人気曲。この曲が『クライマックス』のサウンドトラックに収録されているのはうれしい驚きだった。誰に宛てて書かれた曲なのかは諸説あった。キース・リチャーズの恋人アニタ・パレンバーグ? それともデヴィッド・ボウイと当時の妻アンジェラの愛を歌っているのかも? 実際は、キースが歌詞の執筆中に何となく響きがいいから〈アンジー〉を選んだそうで、そこまでロマンチックな話でもない。

Window Licker - Aphex Twin

エイフェックス・ツイン「Window Licker」
「Window Licker」のMVは、まさに見事な映像美の悪夢。クリス・カニンガムが手がけたこのMVは、エイフェックス・ツインの二面性を表している。沈む夕日、人気のないストリート、ピカピカのリムジン、タイトなミニショーツ。つつがなく始まるが、『クライマックス』同様、現実がどんどんねじれていく。

リル・ルイス「French Kiss」
9分41秒のセクシーなディスコループ。この曲をもうちょっと長引かせて、色鮮やかな市松模様のダンスフロア、パーティピープルを少々、最後にLSD入りサングリアボウルを用意すれば、もう『クライマックス』のできあがり。

Cet article a été publié sur i-D FR.