「お茶の間的でない」ポップ・ミュージックの現在:Klan Aileen インタビュー

2人だけの等身大ロック・バンド、クラン・アイリーン(Klan Aileen)。群れず、騒がず。ただひたすら演奏に没頭する孤高のロッカー。彼らはどこから来て、どこへ向かうのか。

by Hisashi Murakami
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02 November 2018, 8:25am

ヴォーカル兼ギターとドラムという最小限の2ピース編成ながら、爆音を鳴らすクラン・アイリーン。ジメッとしているのに乾いてて、ボンヤリしているのに覚醒を促す彼らのサウンド。そんなロックが、なぜ日本の土壌から誕生し得たのだろうか。

クラン・アイリーンは鹿児島で結成され、現在は東京を拠点に、松山亮(ヴォーカル&ギター)と竹山隆大(ドラム)の2人で活動している。5月に発表された最新アルバム『Milk』から、ポスト・ロックの匂いを嗅ぎつける“洋楽リスナー”は多いかもしれない。が、そんな先入観は取っ払ったほうがより楽しめるうえ、見えてくるものがあるはずだ。実際に話を聞くと、彼らはもっと多彩なジャンルの音楽から影響を受け、自由に音楽と向き合っている。

サーストン・ムーア・バンドやクラウド・ナッシングスなど、海外アーティストの来日公演も多くサポートしてきたクラン・アイリーンは、11月8日(木)に行われるシェイムの来日公演にもゲストとして登場する。彼らに話を聞くべく、今回、最新アルバム『Milk』のレコーディング・セッションを行った浅草橋のツバメスタジオを訪ねた。

──まず『Milk』というアルバムタイトルの由来から教えてください。

松山:食べ物を連想させるタイトルがいいねって。あと音楽的なイメージが〈白〉だったので、豆腐?牛乳?豆乳…って考えたときにやっぱり『Milk』かなと。僕らの音楽はシリアスなイメージが強いんで、軽やかなほうがいいかなっていうのもあったんです。僕らとしては親しみやすい音楽を作ってるつもりなんですが(笑)。

──そう言われれば可愛いタイトルですね。もっとオドロオドロシイものが背景にあるのかと勘ぐってました(笑)。

松山:あ、でも若干は性的な意味もあるから、それも面白いかなと思ってます。

──確かにそういう曲もありましたね(苦笑)。その『Milk』がリリースされてしばらく経ちましたが、振り返ってみてどうですか?

松山:2枚目までは僕がほとんどひとりで作ってた感じですが、『Milk』に関しては2人で作ったなという気がするので、到達点といえば到達点だし、出発点といえば出発点という感じです。いいもの出来たね、というのはありますね。
竹山:これまで松山の中で完結してたんですよね。曲のイメージというのが。それを壊したくないというのがあったんですが、さすがに今回は煮詰まりすぎててヤバそうだったので、とりあえず自分もやりたいことをやってみた感じです。
松山:今までは、自分のやりたいことを押し切ってたところがあったんです。でも今回は彼もやりたいサウンドというのがあって、「ドラムの音色どういうのやりたい?」っていうところから始まって全体のサウンドが完成していったんです。結果、良かったです。

──そこまで煮詰まってしまった理由というのは?

松山:こんなふうになりたいな、というバンドがそれまではずっとあったんですよ。でも制作段階の2017年、ロックバンドがまったく面白くなくて。誰にも憧れないというか、サウンドのリファレンスだとか目指す場所、やりたい音がどこなんだろう…何をやればいいんだろう…となってしまって。

──じゃあ、自分たちで作るしかないと?

松山:いや、そんな張り切ってないです。これで合ってんのか??っていう感じ。

Klan Aileen

──欧米のロックからの影響は大きいと思うのですが、そもそも海外の音楽やカルチャーに興味を持ったきっかけというのは?

松山:僕らの世代(30歳)は、まだ洋楽好きはいるほうで、そんなに珍しくないと思うんですよ。
竹山:学校とかでもビートルズ、カーペンターズ、オールディーズなど洋楽が流れていましたし。掃除の時間にビートルズのベスト盤の『1』がかかってたのかな。知らないうちに全曲歌えるようになってましたね(笑)。高校の帰りにCDショップ行ったり、雑誌も買ってたし、あとインターネットが出てきて、それまで一方通行の情報だったのが双方向になったんで、こっちからも掘れるようになり、どんどんハマっていきました。

──聴き流してしまってもおかしくないのに、ハマっていったのはどうしてだと思いますか? 何か性格的な部分や育った環境などが影響しているとか?

松山:う~ん…結局、あまのじゃくだからですかね?ウチって転勤族で、小学5年から種子島に3年いたことがあったんです。今思うと島だから閉鎖的なんですよ。馴染めないし、軽いイジメにもあって、それでちょっと卑屈になったのかな…。要は誰も自分の味方がいないって状況を経験すると、じゃあいいよ誰もいなくて、みたいになるじゃないですか。それがたぶん大きいかなと思います。
竹山:僕は自然に自分の好きなものを選んでいったら、みんなと全然違ったという…。絵を描くときに、白よりも色乗りがいいと思ってピンクの画用紙を選んだら笑われてしまったり。でも笑われたという自覚もなくて、ずっとヘラヘラしてました(笑)。周りにどう思われるかとか、まったく考えずにやりたいことを選択して生きてきましたね。

──とはいえ、今はこうして音楽仲間や交友関係も広がったわけですよね。

松山:う~ん、でも群れたくないんですよ(笑)。今は、本当にいいなと思えるバンドもいることが分かったので、そういう人たちとは積極的に友達になろうとは思ってます。けど、始めた当初は、他は全部ダッッセェ……と思ってたんで、絶対仲間になりたくなかったです(笑)。

──少し折れちゃったわけですか?(笑)

松山:絶対無しと思っていたことが、これも有りなんだという理由が見えてきたというか。このアーティストを聴くお客さんにとっては、こういうところがいいんだろう、というのがわかるようになったんです。

──なるほど。クランの音楽は、分かる人にだけ聴いて欲しいですか、それとも広くみんなに聴いてもらいたいですか?

松山:分かる人にはもちろんですが、広くみんなに聴いて欲しいです。ポップ・ミュージックだと思ってますから。

──えっ?

松山:ポップ・ミュージックだと思ってますから。

──とはいえ、ポップにしようとは思ってませんよね?

松山:いや、思ってますよ(笑)。ポップに完結させようと思ってます。

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──ただそのポップというのが、いわゆるポピュラー音楽とは違っている?

松山:ああ、そうですね、歌謡曲みたいな意味ではないですね。お茶の間的ではないポップ・ミュージックですね。今の時代のポップ・ミュージックではなく、過去のポップ・ミュージックかなと思います。
竹山:たとえばピンク・フロイドだって、あの時代のポップ・ミュージックだったわけじゃないですか。みんなが、世界中のひとが聴いていた。プログレッシヴ・ロックではあるけど、ポップ・ミュージックでもあった。何事もポップになり得る性質を帯びているのがポップだと思うんです。と考えると、クランの音楽はギターがギャンギャン鳴ってるからポップじゃない、という考えは当たらないと思います。だから僕らもポップと言っていいんじゃないかと思うんです。

──確かに。じゃあ自らをポップと呼ぶからには、上昇志向もあるんでしょうか?

竹山:ジェット機買いたいとか、ベンツ乗って毎日遊びまくりたいとか、そういうのはないですね(笑)。ただ、美味しいもの食いてえって思ったときに、食えるぐらいの生活はしたいかな。

──一体感などは求めてないですよね?

松山:はい。夏祭りみたいな一体感なら欲しいですけどね。夏祭りって余興でバンドとか出ますけど、みんなそれだけを観に来てるわけじゃないですよね。夏祭りを楽しみに来ていて、そのなかで音楽を媒介にして一瞬みんながまとまるというか、盛り上がる。ああいうのは大好きなんですけど、作品の鑑賞会の延長線上にある一体感は、なんかこう閉鎖的で好みではないですね。

──ところで、いろいろネットで調べたけれど判明しなかったのが、グループ名の由来なのですが。

松山:キンクスのライナーノーツを読んだ時に「Kの復権」という話があって、ナイフ(Knife)やナイト(Knight)のKって発音されないじゃないですか。それがすごく印象に残ってて、辞書を引いていろいろ探してたらKlanというのを見つけたんです。秘密結社っぽくていいなと。それと竹山が高校時代に好きだった女の子がアイリちゃんだったので、アイリーン(笑)。

竹山:卒業後に付けたグループ名なので、本人は知る由もないんですけどね(苦笑)。

Credit


Text Hisashi Murakami
Photography Koichiro Iwamoto