Photography Kat Aileen

ブラッド・オレンジやソランジュのバックシンガー、EVAがソロデビュー

リアーナのためにDJすることや自身のデビューEP「Evergreen」について、エヴァ・トールキンがi-Dに語った。

by Emily Manning; translated by Atsuko Nishiyama
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11 January 2018, 9:35am

Photography Kat Aileen

This article was originally published by i-D US.

エヴァ・トールキンにインタビューする3日前、ソランジュのデビューEP「True」が発売5周年を迎えた。トロント生まれ、ポップミュージックの錬金術師エヴァはこのレコードをとてもよく知っている。この1枚で彼女の人生が変わったと言っても大げさではない。

5年前、エヴァはモントリオールからNYCに移り住んだ。本人曰く「大した計画もなく」。友人でファッション映像作家のゴードン・フォン・シュタイナーのもとで、制作に必要なリサーチや音楽の監修の仕事をし、ウィリアムズバーグにある彼のスタジオに住んでいた。そんなある日、ソランジュのマネージャーからバックシンガーのオーディション会場としてスタジオを使用できるかと打診があった。彼女はイエスと答え、そして「私もそのオーディションを受けるかも」と告げた。

冗談のつもりだった。一応は。「『True』が出た年の夏で、私はあのレコードを毎日聴いてた。すべてのハーモニー、すべての歌詞が頭に入ってたの! これはオーディションを受けてみるべきだと思ったけど、まさか本当にそうするつもりはなかった」。結果的に、彼女はその仕事を手にした。それ以来、ソランジュやブラッド・オレンジ、リッキ・リーやチャーリー・XCX、その他数え切れないほどのアーティストたちと共に世界中をツアーし、歌ってきた。あなたも知らないうちに、彼女の歌声を聴いているかもしれない。

私がエヴァに会う前日、彼女自身のデビューEP「Evergreen」がリリースされた。3つの曲が10分という時間の中にタイトに収まったこのEPは、エヴァがこれまで同時代のポップミュージック界で最先端の作り手たちと仕事を重ねてきたことを、豊かに物語っている。デヴ・ハインズのリスナーは、温かみのある80年代風のシンセのストラクチャーとキラキラしたギターの音を、このレコードからも感じるはずだ。カーリー・レイ・ジェプセンのファンなら、彼女に通じる遊び心あるボーカルを、ここにも期待してほしい。

エヴァが優秀な学び手であることは間違いない。けれど同時に、フレッシュでダンサブルな珠玉のポップソングを、自分流に作り上げてもいる。「Evergreen」の1曲目、繰り返し聴きたくなる「Another Lover」は率直で、かつ最高にチル。ポリアモリー(複数間での恋愛関係)について歌った曲だ。「(私の曲では)テーマをぼやかしたり、微妙な感じで表現することはあまりしたくない」と彼女は言う。「これは、彼氏にもう一人の恋人を家に連れてきてよ、と頼むことについての曲。すごくダイレクトでしょ!」

彼女が輝きを放つタイミングがなぜ今なのか、エヴァが自分の言葉で説明してくれた。

——ゴードン・フォン・シュタイナーと仕事をし始めたきっかけは?
彼とは幼馴染。ずっと親しい友達どうしで、ニューヨークに来るようにと熱心に誘ってくれたんです。彼の言う通りだった! ここに移ってきてすべてが変わったから。最初は彼の制作に必要なリサーチをしていて、すぐに音楽のスーパーバイザーに。今でも彼とはよく仕事をしています。ほとんどの場合、彼の撮影現場で私がDJをします。基本的に私の役割は、例えばナタリー・ポートマンが3日間の撮影中、何を聴きたいか考えること。楽しい仕事でしょ! 私はプロのDJではないけど、たぶん人とか場の雰囲気にマッチする音楽を考えるのが得意なんです。衣装を見て、セットやモデルを見れば、どの曲をかければいいかわかります。

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——誰のためにDJをしたのが自分の中でいちばんの驚きでした?
過去2年、ゴードンがメットガラでフォトブースをやっていて、私がそこで流す曲を選んでいます。狭いブースの中に座ってるんだけど、そこに『Vogue』のアシスタントが飛び込んできて「マドンナが入ってきます」って。マドンナが何を聴きたそうか、1秒くらいで考えなきゃいけないの! 彼女がそこにいる時間もたった3分しかないし。次に一体どのセレブが入って来るのか全然わからないんです。ありえないでしょ。

——緊張感がありますね!
それがずっと続くんです。「ファレル入ります」「リアーナが来た!」「あ、セリーヌ・ディオン」「アナ・ウィンターだ」って。最初の年は、自分がそこでDJをするなんて前日まで知らなくて、あるものだけでなんとかしなくちゃいけなかったんです。でも、それがかなりうまくいって。カニエが褒めてくれました。確か、昔のキャムロンの、エピックなトラックをかけたかな。

——私だったらパニックになりそうです。
緊張の瞬間は本当にピリピリするけど、すごく満足感もあるんです。ぴったりの選曲ができて、アーティストが楽しんでくれて、すごくいい映像が撮れたときは、もう最高。最初の年、廊下でソランジュとビヨンセにバッタリ会っちゃって、ソランジュが「ここで何してるの? どうやって入ったの?」って(笑)

——ゴードンのもとでの仕事が、ソランジュとの仕事につながった経緯を教えてください。
まさに奇跡的なつながり方というか、不思議な偶然で。最初のオーディションは、イモージェン(・ストラウス。ソランジュの元マネージャー)だけが来て、ゴードンのスタジオで私が歌うのをスマホで撮影しました。笑える話のタネになるかな、という感じでした。「実は私、ソランジュのオーディションを受けたことあるの」みたいなね。でもその後3回も声がかかったんです。数週間後にソランジュが直接会ってオーディションしたがっている、と言われました。すごく緊張して不安になっちゃって。子供の頃に聖歌隊で歌っていたのと、大学時代にアカペラのグループに入っていた以外は、何の経験もなかったので。それでもオーディションを受けて、最終的に仕事を得ました。

実は、友達のアクア(Akua)も一緒にオーディションに受かったんです。1人だけの予定だったので「アクアが受かるだろうな。ソランジュの前座をしたこともあるし、声も最高だし」と思っていました。オーディション中、すでに2人が一緒に笑ったりしている声が聞こえてきて。でも私もそこまでは行けたし、それだけでもすごいことだと感じていました。オーディションの後、電話がかかってきて「ソランジュが2人一緒にやってほしいそうです」と言われて。

——ええ、すごい!
信じられなかった。一緒に世界ツアーも回りました。アクアなしでは、私はどうなってたことか。

——これまでやったことがないことに飛び込んでいくのは、どんな感じでしたか?
聖歌隊にかなり長い間いたことで、実はバックボーカルに最適な訓練ができていたんです。つまり、いかにサポートするか、ということ。良い耳を持たなくてはいけないし、他の人たちの声を圧倒するようなシンガーであってはならないし。合唱での歌い方というのもかなりそれに近いものがあります。隣の人の声に耳を傾けて、ちょうどいいバランスを見つける。とは言っても、本当に自分がバックシンガーとしてやっていける、と思えるようになるまで、かなり時間がかかりました。デヴ(・ハインズ)と歌ったときに初めて、そんなに悪くないのかも、と感じたんです。彼は私にソロを歌わせてくれ、1歩前に踏み出させてくれました。今では自分のことをいいバックシンガーだと言えます。大変なのはソロで歌うシンガーになること。自分に本能的にその素質が備わっているわけではないと思うので……。

——デヴと一緒に歌うようになった経緯は?
彼と歌いたいとはずっと思っていたんです、とにかくギグが楽しそうだから! コーラスの誰かがやめて、急遽その穴を埋める必要が出てきて。それが1年半くらい前で、それからずっと一緒にやっています。彼はすごくクールで、周りに手を差し伸べてくれる人。(ブラッド・オレンジの)「Sandra’s Smile」のレコーディングにも参加させてくれて。彼はたくさんのシンガーを知っているので、その中から私に声をかけてくれた、というだけでもう大興奮。だけど彼の素晴らしさはそういうところなんです。彼自身もたぶん気づかないうちに、何度も私の背中を押してくれました。

——ソロで歌う素質は自分には備わっていない、と先ほど言っていましたね。今その道に踏み出そうとするのはなぜでしょうか。
長い間、自分が曲を作るようになるとは考えませんでした。でもやれば楽しいし、他の人のために曲を書く仕事もできるかもしれない、と思って。ただ、でき上がった曲はどれもそのまま「私」という感じだったんです。その数曲をまとめて、なんとか形にしてみたくなりました。好きな人はいるだろうし、踊っても楽しい曲ばかりだし。だから、やってみようかな?と。プロジェクト全体を、親友のエリック・クロスとのコラボレーションで進めました。彼がすべてのプロデュースを担当し、曲作りでも足りない部分を補ってくれました。私としては、ひとりでやるより他の人と作業する方がずっとよくて。とにかく楽しみました。

——「Another Lover」のPVは最高ですね。
最初から最後まで素敵な経験でした。メイクアップアーティスト、振付師、プロデューサー、ディレクター、出演者、みんなが友達どうしか、友達の友達かで。キーナン(・マクウィリアム、ディレクター)と私は常に共通の認識を持っていたから、コンセプトや雰囲気を決めるのも簡単でした。曲にマッチするように、ビデオもとにかく遊び心があって、シリアスになりすぎないようにしたかった。ちょっと笑える感じで。私が大好きな、昔のファッション広告にインスパイアされたセンスです。衣装も私のクローゼットから持参したものをかなり使いました。パーティみたいだった!

——これから先の計画を教えてください。
来年の前半にはまた3曲入りのEPを出せたらと思っています。でも、あまりがんばりすぎないようにしようと思います。私の人生、特にこの5年間は、流れに身を任せて次に来るものを待つことで進んできました。毎月違う冒険をしている感じで。新しい冒険が、また始まります。

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