BMXに魅せられたポーランドの若者たち

写真家トリ・フェレンクが、盛り上がりを見せるポーランドのBMXシーンについて語る。

by Lula Ososki
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20 May 2016, 5:50am

ドキュメンタリーフォトグラファーのトリ・フェレンク(Tori Ferenc)は、世界中の人々と出会うきっかけとしてカメラを使う。スタンフォードヒルにあるハシド派ユダヤ教のコミュニティから、ダンケルク郊外へと亡命しているクルド人の子供たちまで、彼女の独特な雰囲気が漂うモノクロ世界は、アイデンティティと帰属意識を感じさせる作品ばかりだ。最新プロジェクトで、彼女は自身の故郷であるポーランドへと戻り、現地で盛り上がりを見せているBMXシーンと、その中にいる若者のポートレートを収めている。「若くて退屈な年頃って、選択肢をたくさん持っているわけじゃない」とフェレンクは言う。「でも、この子たちは情熱を傾けられるものを見つけているの。それがBMX」。フェレンクとのインタビューを行い、ポーランドにおけるBMXシーンと、撮影を通して築いていった被写体たちとの関係について探った。

ポーランドにあるあなたの地元はどんな雰囲気の土地なのでしょう?
私の地元はどちらかといえば小さい町で、子供だった頃はこれといってすることもない場所だったの。当時、ポーランドは共産主義が崩壊した直後で立て直しの過程にあった。資本主義化していくなかで、国営の工場はその変化についていけず、大勢の人たちが職を失っていたの。その状況は今でこそ改善してきているけど、私の町にはいまだに、あの時代で時間が止まってしまったみたいに、変わらない雰囲気が残っていて。だけど、同級生たちの多くが今、他の都市に何年も暮らした後に地元に帰って行っているの。町を活性化させるために、みんなが素晴らしい活動をしている。おかげで、地元は年を追うごとに良くなっていっているわ。

あなたの故郷の若者たちがBMXに惹かれる理由はどこにあるのだと思いますか?
BMXがチャレンジしがいがあるスポーツだからこそ、夢中になるんだと思う。彼らはとても熱心で、小さい頃からBMXを始めた子も多いの。ひとつのトリックをマスターするのにどれだけ怪我や骨折をするのか知ってびっくりしたわ。でもね、それをマスターしたとき、彼らの満足は目に見えてわかるの。撮影した1人の男の子がね、「10段のステップを飛んだり、360度のフリップをきめたときのあの感覚を超えるものはない」って言うのよ。言葉にできないほどのものなのよね。転んで悔しいからトライを繰り返すし、トリックがきまると気持ちいいから、もっと自分の限界に挑戦したくなる。彼らがBMXに没頭するもう1つの理由には、コミュニティの感覚というのもあると思う。みんな兄弟みたいに接しているわ。

写真を撮る上で、被写体と関係を築くことはどの程度重要なのでしょうか?
被写体と関係を築くことはとても必要なことよ。関係が築けていなければ被写体の内面を写すことなんてできないの。でも、何も強要してはならないし、欲しい画を作り出すために私が演じてしまってもいけない。そういうことをすると、写真にそれが出てしまうから。誠実さが大切なんだと思う。トリッキーなことだけどね。写真はすごく主観的なものだから。写真が写すのは、現実のほんの一部分でしかないし、それも簡単に操作できてしまうから尚更ね。今回被写体になってくれた子たちが私を信頼してくれたのは、いとこがバイカーでみんなを知っていたっていうこともあったの。いとこは、彼らと同じグループでBMXをやっていて。だから、私がその場にいて彼らの世界を覗こうとしていても、彼らはとてもリラックスしていたわ。

ポーランドと他国のBMXシーンは何か違いがあるのでしょうか?
違いはそれほどないと思うけど、たとえばアメリカではBMXの歴史が70年代にまで遡るのに対して、ポーランドで比較的新しいスポーツなの。だから、このスポーツでプロを目指すのであれば、西側諸国に行ったほうがチャンスは多い、とは言えると思う。撮影をさせてもらった男の子たちは、国外に遠征したりするんだけど、そこで、たとえばスケートパークについてこう言うの。「BMXへのサポートが俺たちの地元よりしっかりしてるな」って。私の地元のバイカーたちは、自分たちでスケートパークを作らないといけなかった。もともとあった公共のスケートパークを、地元当局が閉鎖してしまったから。

どのようにして様々なコミュニティを探し、ドキュメントしているのですか?
新たなプロジェクトを思いつくには色々な経緯があるわ。簡単に言えば、目を開いて、(そしてもっと大切なことだけど)心を開いておくことでアイデアが生まれるの。私がコミュニティに惹かれてしまうのは、そこにアイデンティティや帰属意識があるからだと思う。私が祖国を離れて暮らしているから、何かに無条件で属している感覚や、そこに属しているというアイデンティティを感じることはもうできない。だから、そういう感覚をとても恋しく思う。そんな理由もあってか、どこへ行ってもグループを集団的に捉えたポートレートを撮ろうと思うのかもしれない。今はロンドンの南部に暮らしていて、ペッカムとブリクストンをベースに、ストリートフォトとポートレートをミックスしたようなプロジェクトを進めているの。ただ外に出て、そこで出会った人たちと少し話をして、「写真を撮らせてもらってもいい?」って訊くのね。特定の被写体が持つ、私がずっと魅了され続けている何か。カメラでそれをリサーチしたいって考えるの。

写真の何に最も惹かれますか?
カメラを口実に様々なひとを知り、彼らの話を聞けることをとても嬉しく思っているの。カメラがないとそれができないってわけでもないけど、あるとそれができやすい。フィルムを現像するときのワクワクは楽しいし、知らないことを学ぶのも楽しい。魔法みたいだと思うのよね。私の写真を通して、見る人がそれまで見えていなかった何かに気づいてくれたりする。そして、外に出て人々の写真を撮るのが大好き。だって、楽しいから。そのプロセスが楽しいの。

次はどこで写真を撮りたいですか?
見たい場所はたくさんあるけれど、今1番中国に行きたい。何十年も前、ハエや蚊による疫病を死滅できると信じて人々が殺虫剤を大規模に使ったことで、国内のほとんどの地域から蜂や他の昆虫がいなくなってしまったらしいの。それ以来、中国では農家の人々が自ら木に登り、ブラシを使って自らの手で受粉をしているらしくて。世界の多くの人々は、人間の存在がどれだけ地球環境に打撃を与えているかを気づいていないと思うし、中国と同じことがどこでも起こり得るという認識を高めるのはとても重要なことだと思う。1度見てしまえば、もう無視はできないものだから。

Credits


Text Lula Ososki
Photography Tori Ferenc 
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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