ユースによるユースのための雑誌『WOMB』

フォトグラファーでありキャスティングディレクターでもあるケヴィン・アマト。彼が、若いアーティストや写真家、モデル、ミュージシャン達を育成することを目的に、まったく新しいタイプの雑誌『WOMB』を立ち上げた。

by Zio Baritaux
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20 July 2016, 3:15am

「例えば君に356kのフォロワーいるとする。それが示すのは、君の作品が誰かの目に留まる機会が多いということ。でも、肝心の作品は取るに足らないようなものかもしれないだろ?」と、ケヴィン・アマト(Kevin Amato)は言う。彼はこれまで、Instagramでユニークな人材を多く発掘してきた。そして、発掘した人材をHood by AirやJOYRICH、Bobby Ableyなどでモデルとして起用させてきた。その彼が、ソーシャルメディアでありストリートファッションのショップでもあるVFilesとタッグを組み、"ユースによるユースのための"季刊誌『WOMB』を刊行した。『WOMB』のコントリビューターはクラウドソースで募り、その中からアマト自身が選出している。アマトが求めているのは「確固たる目的意識と勢いがあって、独自の美的感覚とスタイル、アートやデザイン、ファッション、音楽へのアプローチを持っている」キッズ、とりわけ彼が自身を投影できるキッズだそうだ。選ばれたクリエイターには使い捨てのカメラが支給されるが、それを使って何をどう作り出すかについてはほとんど何も指示を出さないという。「唯一の指示は、解釈の幅がある議題やフレーズを"独自に解釈する"こと」だそうだ。この"ゆるさ"により、10代から20代の若きクリエイターたちは思う存分に独自の創造力を発揮し作品作りを進めることができる。その結果として彼らの世代に訴えかけられる雑誌が生まれるのだ——35歳になるアマトの世代ではなく、あくまでもユース世代によるユース世代のための雑誌なのだそう。「僕たちは話さない」とインタビューの中でアマトは語っている。「僕たちはただ彼らの話に耳を傾け、彼らを育てているんだ」

WOMB』の趣旨とは一体何なのでしょうか?誰をターゲットとして作っているのでしょうか?
WOMB』はユースによるユースのための雑誌。僕に似た、クリエイティブなキッズ——確固たる信念と勢いがあって、アートだけでなくデザインやファッション、音楽、そしてライフスタイルやサブカルチャーの一般的な要素への独自の美的感覚やスタイル、アプローチを持ったキッズたちのための雑誌なんだ。無意識の自由な流れと呼ぶべき現代のアートの世界——インターネットが、作品自体の重要性やクオリティーをないがしろにすることなく、作品を正当に発表できる場を作り出してくれた。すでに著名な新進気鋭の才能だけでなく、無名の才能をも同じ尺度で扱い、そしてキュレーティングしてくれているんだよね。皆が自分のことだけを考えるのではなく、皆でサポートし合っているのが今のアートの世界。僕は新しいものに興味があるんだ。Hood by AirやMykki Blanco、Travis Scott、Luka Sabbatといった新たな才能たちが、過去のクリエイティブな試みとどう作用するのか、といったようなことにね。

WOMB』の何がユニークなのでしょうか?
僕たちは何も口出ししないで、ただ若いアーティストたちの話を聞き、彼らの才能を伸ばしているだけなんだ。僕たちはまず、目をつけたクリエイターに声をかけて、彼らにカメラを支給する。現時点ですでに、50台ほどの使い捨てカメラを世界各国のクリエイターたちに支給しているんだ。彼らは、写真を撮ったらそのカメラを現像処理のために僕たちに返送する。そこに写っていた写真を編集加工して、それをアーティストに送る。フィルムで撮影するように言うんだ。フィルムでの撮影で起こる、予測不可能な実験的プロセスを大切にしてほしくてね。VFilesのプラットフォームだからこそ見つけられる才能がある。VFilesはユニークなコンセプトの空間で、近いうちにもユーザーが製品や作品を販売できるようになるんだよ。僕はVFilesのその強みを『WOMB』に取り込むことで、若き才能たちに存在と作品のアピールができる場を与えてあげたい——同時に、彼らの作品や服、音楽を販売できるマーケットプレイスを作ってあげたいんだ。

創刊号(first issue)は「We've Got Issues(言いたいことがある)」です。「号」と「問題」というふたつの意味を持つ単語"Issue"を使った面白い言葉遊びですね。どうやってこのようなコンセプトを思いついたのでしょうか?創刊号はどのような号になるのですか?
ひとの感情や状況を想像する力に欠けるひとが増えている今の世の中に、遊び心をもって問いかけているんだ。世代間でのコミュニケーション欠如がテーマ——世の中には、いい作品を作り、言いたいことがあるにもかかわらず作品発表の場がなかったり、過小評価を受けている若いクリエイターたちがいる。『WOMB』は、そんな彼らの声を集めたもの。VFilesの創始者ジュリー・アン・クエイ(Julie Anne Quay)が「"今"だけど、同時に"力強くクリエイティブな未来"を表すもの」として、あのタイトルを思いついたんだ。「現状に不満がある。俺たちの言うことを聴いてくれ」ってね。『WOMB』は僕の好奇心と、破壊的だけどひたむきで同情心あふれる感受性を満たしてくれる、クリエイティブな捌け口なんだ。

Photography RowanLiebrum.Vfiles.com

雑誌のコンテンツはどのようにして選ぶのでしょうか?キャスティングディレクターとしての経験が、いまエディターとしてコンテンツを選出する際に役立っていると思いますか?
そうだね。カルチュラルキュレーターとして、僕は今、才能あふれる多様な若い才能に数多く出会う機会に恵まれている。VFilesと手を組んでそういったアーティストたちの作品を世に送り出していけるということが、今、僕にとって大きなインスピレーションになっている。僕たちは、画一化された善悪の概念を植えつけられ、「こう生きろ」と道を示されて育つ。アートの道を志しても、親や家族はそれを趣味や"非現実的な夢"としてしか見てくれなかったりする。僕は今、やりたいことがやれていて、必要なものにすぐアクセスできるルートを持っている。このラッキーな状況を、気骨ある若い才能のためにシェアしていきたいと強く思うんだ。

WOMB』には、あなた自身の写真作品にあるリアルでパーソナルな感触が反映されていると思いますか?
大切なのは僕ではなく、若いひとたちに声を上げさせること、そうやってひとつの大きな声を作り出すことなんだ。個人的な問題や社会意識、プロフェッショナルな体験や夢について声を上げ、語ること——ナンセンスなことを語るだけでもいい。若い人たちが語る、その熱意を大切にしたいんだ。とはいえ、僕が自分の作品で大切にしていること——物語性や、作品に反映されるべき作者の内面は、彼らにも大いに求めるところだけどね。

Photography EddyLjr.VFILES.com

若さとは、自覚なくその貴重なときを無駄に過ごしてしまうものだと思いますか?
立ち向かうべき立ち向かうべきものに立ち向かうことをためらっている時間は、たしかに無駄だと思うね。若い人たちは、自分たちが手にしている力に気付いていない。それぞれがユニークな声を持っていて、それが市場でも商業でも政治でも社会保障でも農業でもファッションでも音楽でも、どんな分野でも大きな力となりうるんだっていうことに気づかないんだ。若者たちは、がむしゃらであるべきだと僕は思う。感情や失敗、喪失感、感情移入といったものを思い切り体験すべき。テクノロジーの登場によって、リアルな人生経験や、記録されることを前提としない直接的な社会交流の多くが奪われてしまった——それが現代という時代。でも、ユース——青春というのは、心の状態だからね。誰もが破壊的な自分を経験し、感情移入を経験し、びしょ濡れになると分かっていても水たまりに飛び込むような、ああいう生を経験すべきなんだよ。

Photography Remy Barreyat 

Credits


Text Zio Baritaux
Lead photography Ghettoprimitives.Vfiles.com
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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