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Gucciと4人のコンテンポラリー・アーティスト

アレッサンドロ・ミケーレによるGucciワールドをそれぞれに再解釈して作品を作り出した4人のアーティスト。エキシビション『Gucci 4 Rooms』参加アーティストたちにインタビューを敢行した。

by Tess Lochanski
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20 October 2016, 8:20am

アレッサンドロ・ミケーレによるGucciの世界観は言語化するのが難しい。さまざまなモチーフがぶつかり、競い合って、その美しさは果たして力強い調和のなかにある破壊なのか、それとも破壊のなかにある調和なのか……それは、バロックの世界観にある不和にも似た美にも通じるものがあり、目に見えるカオスの向こうに秩序が覗く。ミケーレが作り出すGucciは嵐のようだ。外界に触発されて作られた美しさながらも、そこには完成された独自の世界が成り立っている。東京で公開が始まったエキシビション『Gucci 4 Rooms』で、Gucciは4人のアーティストに「ブランドの世界観をインスピレーションに、それぞれ独自の解釈でGucci空間を作ってほしい」と依頼。制約などはなく、アーティストが自由に創作を行なって良いのだという。

ミケーレは、デザインの過程であらゆる時代のあらゆる文化からインスピレーションを得て、それを作品にミックスする。今回のアーティストの選抜も同様で、4人のアーティストはそれぞれが全く違う世界観を持っている。ミケーレは各アーティストに「それぞれがGucciに対して持つ独自のビジョンを表現し、作品として仕上げてほしい」と依頼した。そのうちのひとり、塩田千春は、昨年のヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展にも作品を出品した現代美術家だ。今回のエキシビションでは、ハーバリウムパターンを背景に無数の糸を編み上げ、部屋に張り巡らせて、夢のようにシュールな空間を作り出した。アイコニックなストリートアーティスト、Mr.(ミスター)は、日本のアニメ風キャラクターたちと廃材を用いて黙示的な世界観のインスタレーション作品を披露した。デジタルアートのニューフェイス、真鍋大度は、Gucciがモチーフとして扱った神話へのオマージュ作品として、インタラクティブ・インスタレーションの部屋を構築した。そして、これまで2シーズンにわたりGucciとのコラボレーションを続けているカナダ人ストリートアーティスト、トラブル・アンドリュー(Trouble Andrew)は、あのGucciGhostキャラクターたちがいっぱいの部屋を作り出した。エキシビションの一貫性なきカオスが、独裁的トレンドから突然変異のように飛び出した自由な銀河<Gucciの世界>を如実に物語り、クリエイティビティとユースを祝福している。

Gucci Garden Room by Mr. ©2016 Mr./Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved

MR.

このプロジェクトについて、そしてこの部屋を創造するにあたってどうアイデアを練り上げたかについて教えてください。
2年くらい前から心の調子が悪くなったり、女の人にふられたりして、頭が「ぎゃぁ~~~~」てなったりして始めたシリーズの延長線です。未だ引きずっている気もします。

そこにGucciを落とし込むのは容易でしたか?
Gucciの世界と僕の世界観は まったく違い過ぎて戸惑いました。
アイデア段階のものを先に提示しましたが、不安でした。

アレッサンドロ・ミケーレによるGucciは、それ以前に比べポップカルチャーの要素が強いわけですが、あなたはそれを感じますか?それともまだGucciはラグジュアリー・ブランドという認識でしょうか?
秋冬コレクションの キャンペーン映像を見た時、「あっ!、ヤンキーテイストだ!」と思いました。
ミケーレさんは日本のカルチャーに深い興味を普通とは違う視点で持ってくれていると思いました。
パチンコ屋のネオン、デコトラ、 旧車バイク、新宿等など、日本のモチーフがたくさん盛り込まれていました。

あなたの世界観も、ヤンキー文化に触発されて出来上がっているのでしょうか?
80年代の日本では、右も左もヤンキー文化というかそういったテイストが沁み、盛り上がっていました。その頃、僕は15歳で、ヤンキーの集団の下っ端でした。暴走族のバイクはカッコイイと今でも思っています。

今の若い世代も、80年代のヤンキー文化に影響を受けているのでしょうか?
自分の親の若い時の写真を見て「なにこれ?この服!?」と思っていたのと同じように思っているのではないでしょうか?
別のところでファッションだけが伝統化されているのかもしれません。
この前、高速のPAで最近の集団の暴走族(今では 旧車会)を見ましたが、凶暴さや怖い感じがしませんでした。
そういう人たちは本気過ぎて昔は怖ろしすぎました。

日本の新世代ストリートアーティストたちについてどう感じますか?
世界いたるところで似たようなロゴや落書きのようなストリートアートが見受けられますが、それとは別にソフトで尖っていない日本語や、アニメ風のものがあってもいいかもしれません。
そう考えると、昔の暴走族のトンネルの中とかに描かれているスプレーの漢字、文字などはリアリティあったと思います。

Virtual Secret Room by Trouble Andrew

トラブル・アンドリュー

このエキシビションについてどう思いますか? Gucciと日本は、とてもしっくりくる組み合わせですね。
このコラボレーションは3ヶ月ほど前に始まったんだけど、最高のプロジェクトだと思うよ。アレッサンドロとGucciとのコラボレーションはいつもとてもシンプルで、何も無理がない。アレッサンドロはクールで直感的なひと。俺たちはいつもそれほど深くものを考えず、ただやってみるんだ。

アレッサンドロ・ミケーレの世界を言葉で表現すると?
「オープンで寛容」かな。これまで一緒に物作りをしてきて、アレッサンドロの周りで働いてる人たちの様子を見てきたけど、誰もが「歓迎されている」と感じながら彼のそばにいるんだとわかる。皆がそう感じられる環境を彼が作り出してるんだよ。アレッサンドロはリスクを恐れない——俺を引き入れるなんて相当のリスクだったはずなのにね! なのに心配したそぶりすら見せない。彼はそういうひとなんだよ。

このコラボレーションは今後どうなっていくのでしょう?
アレッサンドロとは、このコラボレーションに関してタイムリミットやルール、今後の予定といったものを一切話し合ったことがないんだ。一緒に過ごして、楽しいときを共有しながらアイデアを出し合ってるうちに、自然と生まれたものだった。今でも発展し続けているけど、最初はプリントになるのかどうなるのかさえふたりとも考えていなかったんだよ。それがコレクションに採用されて、ジュエリーを作ることになって、今じゃこんなイベントにまで発展してる。ただの夢想が、ここまで成長したんだ。次にどんなことをやるかは話せないけど、俺とアレッサンドロはいつも「こんなことしたらいいかも」って話してて、実現させたものは今のところほんとにうまくいってる。

そんな風に自然な流れでアイデアが形になっていくなんて、アーティストとしてとても贅沢なことですね。
うん、本当にそうだね。でもそれがアートだし、それこそが俺の理想とする生き方だよ。これをやらずにいられないし、他の生き方なんてできない。本当に好きじゃないとできないし、好きじゃなくなったらやめるよ。

アートがファッションとコラボレーションをすることについてどう考えていますか?
自然な婚姻関係のようなものだと思う。片方なしにもう片方は存在しえない。音楽でも同じだろう? 誰もがインスピレーションを共有して、それが自然な関係なんだと思う。

個人的に進めているプロジェクトは?
さっきも言ったように、俺は予定を詰め込むのが好きじゃないんだ。今は、ただマッサージに行きたい!

 Gucci Words Room by Daito Manabe, Getty image for Gucci

真鍋大度

このコラボレーションに関わる前には、Gucciに対してどんな印象を持っていましたか?
色んなブランドの服を見ながら、よく「これを着たらどんな自分になれるだろう?」って考えるんです。Gucciは、パーティ用というイメージでしたね。でもそれはこのコラボレーションでGucciを知る前の話。今ではGucciを全く違うイメージで捉えています。Gucciは、着るのとコラボレーションをするのでは全く違う存在。作品作りをする上でブランドの世界観を理解し、再解釈するため、Gucciの哲学を深く理解する必要がありました。

Gucciの哲学とは?
インスタレーション作品に取り入れたGucci製品は、神話にインスピレーションを受けて作られたものばかりです。Gucciは、神話をとても現代的なものに変えました。僕は作品を作るとき、古代のものとテクノロジーをミックスして、そこにアートを生もうとしています。そういう意味で、Gucciと僕には共通点があるなと思います。

あなたは映像やサウンド、モーションデザインなど、多様な手法を用いて作品を作るアーティストですが、だからこそファッション・ブランドとのコラボレーションには違和感がなかったのでしょうか?
僕にとって、さまざまなひととコラボレーションするのは、とてもしっくりくる自己表現、僕のアートの表現方法なんです。アーティストのなかには保守的なひともいて「アートはピュアでなければならない」と考えるひともいるでしょうけどね。自分とは違うルールで作品作りをしている人たちと共同作業がしたいんです。

Gucciを簡潔に言葉で表現するとしたら?
「ダイナミックな変化」でしょうか。Gucciは変化を恐れていないように思います。

Gucci Herbarium Room by Chiharu Shiota

塩田 千春

あなたの"部屋"のアイデアはどのようにして生まれたのでしょうか?
「4人のアーティストによる4戸のホテルルーム」というテーマを聞かされて、ベッドと椅子がある部屋を作りました。そこに誰かがいるように感じられるような部屋を。

あなたが作る作品の多くには糸が用いられていますが、今回の作品も、プロジェクトの趣旨から直感的に糸を使おうと思ったのでしょうか? 明るいオレンジ色の糸を用いたのはなぜですか?
オレンジに見えるけど、あれは赤なんですよ。赤い糸を使うことで、グッチのハーバリウムのモチーフと私がいつも使用する糸のラインで埋め尽くされた宇宙空間を作り出せると思ったからです。

これまでにファッション・ブランドとコラボレーションをしたことはありましたか?今回のコラボレーションはどうでしたか?
ブランドとコラボレーションをするのは今回が初めてでした。服に使われる素材というのは、アートでも使えるものだと思います。洋服は「第二の皮膚」だと思っています。ファッションはアートと同じくらい表現力がありますから、アート作品のなかで洋服を使うというのはとても自然なことだと感じました。

「アートは、ポップカルチャーやファッションとは相容れない」という考えを持つアーティストたちをどう思いますか?
Gucciがこのプロジェクトに私を誘ってくれたとき、彼らは「Gucciに迎合することなく、あなた自身をそのまま表現してくれ」と言ってくれたんです。大いなる自由を与えてくれました。

このコラボレーションに関わる前には、Gucciに対してどんな印象を持っていましたか?そして、今はどんなイメージを持っていますか?
商品はハイエンドすぎて私には手が届かないけれど、ひとびとは心にぽっかり空いた穴を埋めるためにラグジュアリー・ブランドの商品を買うんだと思います。私が作品をクリエイトすることで心の穴を埋めるように。

アートの世界はどのように進化しているのでしょうか?
私たちは今、共有する現代に生きています。インターネットやソーシャルメディアの普及でコミュニケーション手段が格段に進化したから、アートの世界にある境界線も以前より曖昧になっているのではないでしょうか。

Credits


Text Tess Lochanski
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.