フランク・オーシャンのニューアルバムについて知っておくべき8のこと

デヴィッド・ボウイやビートルズのコントリビューションから、フランクがアルバム制作のプロセスについてTumblrにアップしたエッセイまで、ようやく届いた彼の最新アルバムを聴くときに知っておくべき8つの事実を紹介。

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sep 2 2016, 9:58am

待ちに待ったフランク・オーシャンの最新アルバム『Blond』が、先週になってようやくドロップされた。一言で言って、このアルバムは13ヶ月間のリリース延期に次ぐ延期で飛び交った憶測や噂を瞬時に忘れさせる、それほどの出来栄えだ。今年は、通例ではありえない形のアルバムリリースが業界全体で多く見られている。フランクのリリースも、華麗で広がりある世界観の『Blond』と、Lo-Fiな『Endless』、そして売り切れ続出となった冊子が、同時多発的にリリースされ、その方法も内容もファンたちを陶酔させるには十分すぎるという意味で、異色のリリースだった。デヴィッド・ボウイやギャング・オブ・フォーといった巨星によるコントリビューションに始まり、「2バージョン」とファンを焦らし続けたフランク自身の2015年4月の声まで、フランクの最新作2作の視聴体験をより豊かにするであろう8つの事実をここに紹介する。

1. Endless』のビデオは全編140
宇宙好きを公言して憚らないアーティスト、トム・サックスは、フランクの最新アルバムで大きな役割を担った人物だ。フランク・オーシャンのウェブサイトにて8月1日からストリーミング配信された映像は、実のところサックスが2001年に制作したインスタレーション作品『Toyan's』だった。このインスタレーション作品は、現在ニューヨークのブルックリン美術館で開催されているサックスのエキシビション『Boombox Retrospective』に展示されている。先週末、サックスは、後に『Endless』として世間に知られることとなったこの映像作品に込めた象徴的意味について明かした。またサックスは『Endless』が、ある大きなアートプロジェクトのほんの一部でしかないとも明かしている。「あの40分ものビデオは編集されたもので、実際は140分あるんだ」とサックは話す。「140分バージョンが完成形として存在していて、それはアート作品なんだ」。彼はまた『Endless』に散りばめられた音楽ではないインダストリアルな音が、映像の大工仕事を表現しつつも、古き良きレコードに聞かれた不完全な音の良さを再現したものだと語っている。

2. フランクは、今回のプロジェクトの制作過程が長く厳しかったと同時に、解放のプロセスであったとも語っている
フランクはこれまで、自身のTumblrで、テロリズムからセクシュアリティ、彼が英雄と崇めるプリンスに至るまで、ありとあらゆる事柄についてエッセイを書いてきた。『Blond』をリリースした今回も、彼はTumblrにアルバム制作や冊子『Boys Don't Cry』について書き込みをしている。フランクは、車狂いで知られている(『Endless』リリース前には、ロサンゼルスでタイラー・ザ・クリエイターとカーレースに興じているところを目撃されているほどだ)。彼は今回のアルバム制作の過程を、車で街を駆け抜ける感覚やフリーウェイを突き進むことになぞらえている。「このプロジェクトの編集プロセスは、とてもロマンチックなものだった」と彼は書いている。「編集に没頭することは、1600万ドルのマクラーレン・F1を前にカメラを構えているようなものだった。すぐ近くの場所も、尻がしびれるほど長いフライトで出かけた場所も、それらの場所での思い出が1ページごとに刻まれている。東京、ニューヨーク、マイアミ、ロサンゼルス、ロンドン、パリ——ベルリンに立ち寄ったときには、ベルクハインを初めて見た。Lil Bと自分たちのアイデアや考えを交換したよ」。続く投稿では、遅れに遅れたアルバムリリースを辛抱強く待ち続けてくれたファンに向け、すべて大文字で気持ちを綴った。「このプロジェクトでは、本当に最高のときを過ごしたよ。みんなに感謝してる。特に、このプロジェクトを完成させなきゃいけないと繰り返し思い至らせてくれたひとたちに。つまり、ファンのみんなも含め、僕の現在に関わるすべてのひとにね。ハハハ。LOVE YOU.」

3. 『Blond』と『Boys Don't Cry』にはヴォルフガング・ティルマンスが関わっている
ドイツ人フォトグラファーのヴォルフガング・ティルマンスは、自身も数々の音楽プロジェクトを進めている。近日中にリリースすると発表されたティルマンスのテクノEPリリースは、収録曲5曲のうち3曲が30年前に作られたという。そのまだリリースされていないEPからのトラック「Device Control」は、フランクの『Endless』で先行公開となった。ティルマンスは自身のInstagramで、フランクのプロジェクトへの参加について次のように語っている。「イントロについて話し合ってはいたけど、実際にコラボするまでは、何も信じていなかった。4週間前、僕は今年初旬に書いてプロデュースをした自分の曲をフランクに数曲聴いてもらった。そうすると、『「Device Control」が特に素晴らしい。これを僕のアルバムのイントロでサンプリングに使いたい。いいかな?』と言ってくれた。僕はもちろん快諾した。すると、驚いたことに、フランクはそれをただサンプリングするんじゃなく、僕のオリジナルトラックのまま、しかも全編をアルバムの最後に使ってくれた。ということで、リリースされたんだ。完全な状態で」。ティルマンスは、自身が撮ったフランクの写真数点を、昨年ニューヨークのDavid Zwirner Galleryにて開催した展覧会で発表している。なお、今回発表になった冊子『Boys Don't Cry』とアルバム『Blond』のカバーアートもティルマンスによるものだ。

4. 『Boys Don't Cry』はeBayで約1000ドルの値がついている(今後増版の可能性あり)
冊子『Boys Don't Cry』は、ロンドンやロサンゼルス、ニューヨーク、シカゴのニューススタンドで夜中に発売され、瞬く間に完売した。現在は、eBayにて1000ドルほどで落札するしか入手の方法はない——と思われたが、今朝、フランクの母カトーニャ・ブロー(Katonya Breaux)がTwitterで『Boys Don't Cry』が増版され、より多くの都市でリリースされる可能性をほのめかした。「eBayで高額をはたいて買ったりしないで」と、彼女は息子の熱狂的ファンたちをなだめている。「ちょっと待ちなさい……」。グッドラック!

5. 『Blond』に収録されている「Ivy」と「Seigfried」は、2013年に公開されていた
『Blond』を聴いて、聴いたことがある響きの曲があることに気づいたファンもいるのではないだろうか。そして、それらのトラックが2013年にミュンヘンのコンサートで聴いた曲だと気づいたひともいるかもしれない。「Memrise」よりもさらに前の話だ。スペーシーでローファイなこの曲の一部を、フランクは初披露から約1年後の2014年11月、自身のTumblrにアップしている。

6. 2つのバージョンが存在している
「2バージョンある。Twooooooo versions」と書き、その詳細が明かされぬままアルバムリリースが幾度となく延期されたことで、音楽ファンたちからは笑いの種となってしまった2015年4月のTumblr投稿。しかし、その投稿通り、フランクは実際に2バージョンを用意している。この「2バージョン」の意味するところだが、『Blond』ドロップ時には、アルバム『Blond』と冊子『Boys Don't Cry』、もしくは『Blond』と『Endless』という組み合わせで「2バージョン」だったのだと解釈された。しかし、どうやらそれは間違いだったらしい。このアルバム『Blond』、Apple Music内でリリースされているものと、フランクのポップアップストアで発売されたレコードでは、そのトラックリストが違うらしいのだ。「Mitsubishi Sony」と「Easy」はレコード版のみ、ソーシャルメディアについて描かれている「Facebook Story」はオンライン版のみのトラックだそうだ。

7. フランクが階段を作っている情報は事前にリークされていた
3月、Twitterユーザー@mishkwanが面白い投稿をアップした。なんでも、フランクに階段の建築方法を教えているという男にナンパされたというのだ。「バーでアプローチしてきた男が、ミュージックビデオを制作中のフランク・オーシャンに階段の作り方を教えてるって自慢してきて」と彼女はツイートしている。「守秘義務の契約もしたとか言ってたしウケる」。彼女は「面白い話をありがとう」とその男とのやりとりに関する詳細を締めくくった上で、どうやらフランクは「ビデオで階段(螺旋階段だと思う)を作るらしい」とつぶやいた。@mishkwanは、フランクがビデオをストリーミングし始めると、バーで出会った男がナンパ目的で嘘をついていたのではなかったと知って「ほんとだったのね」と、ストリーミングが開始された8月1日にツイートしている。Complexとのインタビューで@mishkwanは、自身が「フランクのファンではあるけど、バーの男にはもう会いたくない、顔すら覚えていない」と語っている。

8. 『Blond』のコントリビューターはデヴィッド・ボウイ、そしてフランクの母
『Blond』のコントリビューター・リストには、かねてから噂されていた名前も、意外な名前も数多く見られる。しかし、それが超大物ばかりであることは否定しようがない。冊子『Boys Don't Cry』に掲載されたコントリビューターのリストには、デヴィッド・ボウイ、カニエ・ウェスト、ジェイミー・XX、ケンドリック・ラマー、ビヨンセ、ザ・ビートルズ、アンドレ3000、ブライアン・イーノ、アルカ、ファレル、ギャング・オブ・フォー、セバスティアン、ヤング・リーン、そしてエリオット・スミスをはじめとし、実に錚々たる名前が並んでいる。そしてもちろん、これらはあくまでも『Blond』のコントリビューターであって、2日先にドロップされた『Endless』も含めると、さらに豪華絢爛な面々がフランクのプロジェクトに寄与したことになる。それらコントリビューターたちが実際にどのようにこのプロジェクトに関わったのか、詳細の多くは明らかになっていない。明らかになっているのは、エリオット・スミスの「A Fond Farewell」が「Seigfried」に、ビートルズの「Here, There, and Everywhere」が「White Ferrari」にそれぞれフィーチャーされており、フランス人プロデューサーのセバスティアンが「Facebook Story」でソーシャルメディアの恐ろしさについてナレーションを、フランクの母親は「Be Yourself」でマリファナの恐ろしさについて警鐘を鳴らすメッセージを音源として提供しているということだ。

Credits


Text Hannah Ongley
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.