BTSからニッキー・ミナージュまで 世界最大級のファンアカウント運営者たちの日常と熱量

毎日10回の情報摂取、入念なファクトチェック、寄付金集め──ファンアカウントの運営者たちの日常は、とにかく忙しい。BTSからハリー・スタイルズ、チャーリーXCXまで、人気ファンアカウントを運営している若者たちに、その運営方法を聞いた。

by Douglas Greenwood; translated by Ai Nakayama
|
15 August 2019, 3:14am

私たちにはそれぞれ趣味がある。たとえばスポーツ好きのひとたちは、朝早く起きてジムに向かったり、ホットヨガのレッスンに通う。空いた時間があれば映画館に行くひと、ショッピングモールでぶらぶらするひともいるだろう。しかし、自分の自由時間をスーパースターに、つまりこちらの名前も知らない相手に捧げるのはどうだろう? それが、世界的に有名なファンアカウント運営者の生活だ。

2019年現在、インターネットを使って情報を得るには、様々な物事について精通していなければならない。最新のネット用語だけじゃない。インターネットには、醜悪な極右的言説も大量に垂れ流されている。

しかし何よりも確かな事実は、インターネットにおけるカルチャーについての情報発信を独占しているのがファンアカウントだということだ。エンタメニュース業界、すなわち大手メディアやニュースサイトもすばやく情報を提供してくれるが、BTS、ハリー・スタイルズ、チャーリーXCX、ティモシー・シャラメ、ニッキー・ミナージュなど、ポップカルチャー界でもてはやされるスターたちに関しては、ファンアカウントがすべてにおいてまさっている。

ファンアカウントといえど、それは実に巨大だ。ARMY(BTSのファン)の非公式ツイッターアカウントのうち最大のものは390万人のフォロワーを抱えている。米国版のARMYアカウント〈US BTS ARMY〉にも50万人を超えるフォロワーがついており、このアカウントはNPO団体としての側面もある(以前運営側に聞いたところによると、「KTown Night MarketとARMY CONで募金を募りユニセフに寄付している」とのこと)。

熱狂的なファンで有名なK-POP以外も同じだ。女子の憧れの的、ハリー・スタイルズの動向を逐一記録するファンアカウントだと、29万人のフォロワーを抱え、圧倒的人気を誇るアカウント〈The Styles Pics〉や、9万9000人のフォロワーがいる〈Harry Styles Daily〉がある。

スターたちがどんなに姿を隠そうと努力しても、それらのファンアカウントが彼らの情報をすべて記録する。アカウントの影響力は人員の数で決まる。たとえば〈The Styles Pics〉は、ハリーを目撃したファンの情報をすべて集めるという、ほとんど不可能に思えるタスクを実現している。

自分の好きなアーティストが世界のどこにいるかを知りたいなら、本人のInstagramをチェックするのではなく、彼らのファンのアカウントを確認すればいい。

ポップカルチャーの世界へのいわば偏執的なアプローチは、簡単ではない。アカウントの運営者は、愛するスターの情報を渇望するファンたちのために、どんなに小さな情報でも拾わなければならない。1万6000人のフォロワーを抱えるチャーリーXCXのファンアカウント〈@FCKYEAHCHARLI〉(チャーリー本人にもフォローされている)の運営者は、朝起きて最初にこのアカウントのことを考えるそうだ。「通知をチェックしてからTweetDeckを見ます。チャーリーのメンション、認定ユーザーからチャーリーへのメンション、〈Charli〉という文字が入ったすべてのツイート、とタブを分けて整理しているんです」

「それからYouTube、Facebook、Googleニュース、Instagramを開いて、何か新しい情報、更新すべき情報が投稿されていないか確認します」。そうやって、授業の合間や移動時間に1日10回ほど確認するという。

「私たちの生活の基礎ですね」と断言するARMYの米国アカウントの創始者は、自分たちがいかにBTSの最新情報を集めているかを詳しく教えてくれた。

「常にスマホを見ているので、今は家族や友人たちもこの子はこういう子だ、って認めてくれてます。でも私たちは、音楽業界についてもかなり勉強しています。BTSへの、そして彼らのメッセージへの献身や情熱に駆り立てられ、私たちは日々の仕事と同じくらいのエネルギーをここに注いでいるんです」

「何よりも質と信ぴょう性に重きを置くようにしています。誤った情報で一番になることが目標じゃないので」

〈Harry Styles Updates〉は24歳のコスタリカ人、カルラ、22歳の英国人、ジェイミー、19歳の米国人、キャスリーンとナディーンという世界各地のファン4名が運営。ハリー・スタイルズにまつわるどんなに小さな情報も逃さないためにチームで協力している。

「私たちはチームで活動し、常に誰かがオンラインになるようにしています。写真や記事が公開されたらすぐにチェックできるように」と彼らはTwitterのDMで教えてくれた。「TwitterとInstagramを検索して、コンテンツに確かな情報源があるか確認します。信ぴょう性のない情報をファンに届けてしまうことのないように。自分たちのアカウントに、怪しいソースからの情報は載せたくないので」

ファンアカウントは下手をするとヒステリーの温床に成り下がってしまうこともあるし、そこに掲載された情報に信ぴょう性がないことが批判されがちだ。それを認識している〈Harry Styles Updates〉チームは、入念なファクトチェックを欠かさない。

「何よりも質と信ぴょう性に重きを置くようにしています。誤った情報で一番になることが目標じゃないので」と彼らはいう。「残念ながら、ハリーのファンには何事も簡単に信じてしまうひとが多い。私たちは、それがハリーにとってもよくないということを認識しています。彼に何らかの影響を与えることは絶対にしたくありません」

今の社会政治的状況においては、意義深い、公共的なメッセージを発信することが世界的スターたちのキャリアの支えになるが、ファンアカウントがそういった姿勢を拾い上げることで、メッセージがもっと直接的なかたちでファンに伝わる一助となっている。

US BTS ARMYの創始者たちは、世界を変える、というBTSのメッセージを大事にしたいと考え、前述したとおり、適切な手続きを経てNPOとなり、ARMYの名で慈善事業の寄付を募っている。

「将来は年間プロジェクトを設定し、成長すること、他人に手を差し伸べることの大切さをARMYのみんなに伝えたいと思っています」と彼らは語る。また、ファンアカウントではハリーとファンとの2ショットセルフィーだけではなく、パレスチナ解放の重要性をハリーに手紙で訴えよう、と呼びかけるキャンペーンも投稿されている。一般的に考えられているような、うわついた投稿ばかりではないのだ。

運営者にとって、ファンアカウントの運営は趣味にとどまらない。むしろ、日常生活に必要不可欠なものになっている。アーティストに対する自身の愛や憧れの気持ちを表明することは、彼らの裡に深く根ざした、彼らのいちぶだ。フルタイムの仕事ではないにしろ(ブリトニー・スピアーズの最大のファンサイト〈BreatheHeavy.com〉の創始者であるジョーダン・ミラーのように、趣味を仕事にしてしまったファンもいるにはいるが)、大切な活動なのだ。

さらにファンアカウントは、ファンにとってもアーティストにとっても意義がある。ファンにとっては、愛するアーティストの生活を追うための情報源であり、アーティストにとっては、自分の時間やリソースを割くことなく、自分のファンとつながれる、間違いなく価値のあるツールだ。

去年、アーティストのInstagramストーリーやツアー映像のリポストなど、著作権違反が常態化していたという理由で〈Harry Styles Updates〉が一時的に凍結されたさいは、ハリーのマネジメントチームがTwitterに同アカウントの凍結解除を働きかけた。

「夢のようでした。常に静かで公に動くことはない彼のチームが、我々を助けてくれた。とても感謝しています」とアカウント運営者は語る。

〈@FCKYEAHCHARLI〉と、彼らが愛するポップスター、チャーリーXCXの関係性はもっと直接的だ。「もちろん今も私はただのいちファンですが、チャーリーが私を信頼してくれていて、私のページをみて今起きていることをチェックしてくれていることは、誇りに思っています」とアカウント運営者は述べる。

「何かが必要なとき、彼女が私にDMを送ってくれるんです。かわいいメッセージを残してくれたりもします。好きなアーティストとこんな関係性を築けるなんて、本当にうれしいです」

今年のエイプリルフールに同アカウントが「今年で閉鎖する」というツイートをしたときは、即座に「え、嘘でしょ??? これからどこで私についての正確な最新情報を手に入れればいいの??????」というチャーリーからの返信があった。

アーティストもファンも含めた全員にとって、ファンアカウントはポップスターとメディアのあいだをとりもつ仲介者としての役割を果たしているようだ。世界的なスターにとっては、ボランティアの広告マシーンともいえるだろう。

当然、そのコンテンツは、スターを神格化するため歪められたものである可能性もあるが、ファンアカウントがポップカルチャーについての広範囲かつ多彩で、ときに利他的な考察を発信してくれることは確かだ。

ポップスターは新しい宗教である、という言説を証明したいならTwitterをチェックすればいい。Twitterに集う信者たちほど、敬虔な信者はきっといない。

This article originally appeared on i-D UK.

Tagged:
POP CULTURE
Celebrity
BTS
Charlie XCX
Stan Culture