「ファッションカルチャーをぶっ壊せ」:NEIGHBORHOOD 18AW

ATARI TEENAGE RIOTのアレック・エンパイアがマイクスタンドで破壊したのは、モニターだけじゃない。

by i-D Japan; photos by Raihei Okada
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mar 26 2018, 9:50am

ベルサール渋谷ファーストに駆けつけた人たちは、NEIGHBORHOODの24年の歴史上、初となる「ランウェイショー」を期待していたにちがいない。しかしそれは、輝くマイクスタンドによって覆されることとなる。

そこに「ランウェイ」はなかった。その代わりにライブ会場さながらのステージがあった。六本木通りに面したオフィスビルでもある住友不動産ベルサール渋谷ファーストのホール。そこに創り出されたステージに設置された10台のモニターに映るAmazon Fashionのスマイリー・ロゴがニヤリとなにかを企てているようにこちらを見下ろしている。鼓動の音が会場中に響き渡ると突如、モニターに映るそれらのロゴがNEIGHBORHOODのロゴにハックされていく。そしてここは俺の陣地だと宣言するかのように、ステージの周りに複数の旗が舞う。「CRAFT WITH PRIDE」「21st CENTURY (DIGITAL BOY)」「NEIGHBORHOOD」「ATARI TEENAGE RIOT」。そのすべてのセンテンスが、デザイナーの滝沢伸介が今、AFWTでプレゼンテーションを発表する意義の表明であり、NEIGHBORHOODの現在形のメッセージであることは疑いようがない。

会場の緊張感をかき消すように力強い声とともに現れたのは、ドイツのデジタルハードコアバンド・ATARI TEENAGE RIOT(ATR)。1992年にアレック・エンパイアを中心にベルリンで結成され、第二次世界大戦後に蔓延していた“ネオナチ”や“ファシズム”、“全体主義”や“資本主義”にアンチを呈してきたバンドだ(コソボ紛争へ武力介入反対デモライブを行使し、煽動罪で逮捕されたことも)。メンバーはアレック・エンパイアとニック・エンドウ。のちに合流した日系アメリカ人ニック・エンドウの顔には抵抗の「抵」の文字が刻まれている。国は違えど、90年代初頭に誕生したATRとNEIGHBORHOOD。彼らがもつ「レジスタンス」精神が共鳴したのだろう。

アレックがマイクスタンドを振り下ろし「NEIGHBORHOOD」の文字が映るモニターを破壊する。彼の背中には「KEEP THE INTERNET FREE FROM GOVERNMENT CONTROL」。

彼らがステージを去ったあと、この熱狂の夜を“エクスプレッション”するかのごとく「DESTROY FASHION CULTURE」の文字が投影された。今この空間で破壊された何か——それは2018年に存在する“ステレオタイプ”の根本かもしれない。ファッションウィーク=「服」を見せるという既成概念を打ち壊すことは難しい。だが、「王道」や「常套」のプレゼンテーションを破壊したNEIGHBORHOODの強靭なメンタリティと、ATRの普遍的アティチュードが渦を巻くように共鳴しているのではないだろうか。“自由”とは、自分自身を解放して初めて手にすることができる。そう、東京でシャウトされた。