Photography Zora Sicher

ジョーダン・キャスティール interview:自分をさらけ出し、神秘的でいつづけること

ジョーダン・キャスティールによるハーレムの住人たちのポートレイトは黒人であることの美しさをマジカルな光で照らす。

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apr 23 2018, 2:37am

Photography Zora Sicher

This article originally appeared in The Radical Issue, no. 351, Spring 2018.

黒人男性の男性性を、具体的に定義するのは難しい。目にすればわかる、そういうものなのだ。瞳の奥で燃える炎は際立ち、人生の歩み方にもスタイルがある。頭を高く掲げ、堂々としている。2017年の映画『ムーンライト』は、印象的なネオンカラーの光に照らされたヘッドショットを使って、黒人男性のタフさと柔らかさのせめぎ合いを巧みに描き出してみせた。ジョーダン・キャスティールの描く肖像画はそれと似た色調を用いて、観る者をまっすぐ見つめ返す実在の人物たちを描く。そして彼らがほんのいっときパーソナルなまなざしを通して垣間見せる内面世界をとらえている。

「魔法は瞬間に宿ります」ジョーダンは、黒人男性たちを彼らの聖地である理髪店や寝室、キッチンで撮影することについてそう語る。「褐色の肌を持つ私たちの、存在としてのマジカルさと、その体が占める物理的な空間に光をあてるのが私の目的です。観る人には、ゆっくり落ち着いて、今まで気づかなかったことに気づいてほしい。例えば、描かれている誰かの人間性とか」

デンバー出身のキャスティールは、現在住んでいるハーレム地域でたむろしている黒人の男性たちを何日もかけて撮影する。その中から気に入った写真を選び、あたたかく、つややかな絵画に変えていくのだ。彼女がとらえる場面は、見覚えのあるものばかり。自分の住むアパートの入り口に座る若者、日曜日に一張羅を着込んで、茶色の上品なソフト帽でキメている年配の男性。ツインベッドの端に腰かけバスケットボールを持った少年たちは、ふたりとも靴下にスポーツサンダルを履いている。「ハーレムを何週間もただ歩き回るんです。次に描きたい人に会うまで、何日もかかることもあります」と、ジョーダンが創作のプロセスを教えてくれる。「かと思えば数時間で3人くらいに出会うことも。写真は10分から15分の間に、多ければ100枚くらい撮ります。その人のエッセンスと、取り囲んでいる環境をとらえられたらいいなと思って」

ジョーダンは、モデルになってくれた人たちを全力で守りたいと考えている。モデルたちの肌をエメラルドやプラム、深紅などサイケデリックな色調で描いた裸体画では、性器が見えないように描くと決めている。黒人男性の肉体は、今もこれまでも白人からの視線によってフェティッシュ化されてきた。見せない、という選択は意義深いものだ。そのことによって、私たちの視線はこの男性たちが見せる脆さや繊細さに注がれる。キャリアの初期には、この選択に批評家から反発が示されることもあったが、彼女の気持ちが揺らぐことはなかった。

「自分が描いた人たちに対しては、ものすごく責任があります」と彼女は言う。「彼らは自分の姿を絵に変換すること、それを多くの観客とシェアすることを許してくれている。だから彼ら自身を私と分かち合うために時間を割いてくれた人たちにリスペクトを示すのは当然のことです」

ジョーダンは、驚異的なスピードでアート界で名をなしてきた。イェール大学で修士号を取得(同級生にはAwol Erizku、Brandon Cox、Samantha Vermonらの黒人アーティストがいる)。2015年にハーレムの〈The Studio Museum〉のレジデンス・アーティストとなり、財政的支援と協力を得た(「ハーレムには着くやいなや新鮮な息吹を感じました。ここには自分の居場所があると思った」)。現在、彼女はラトガーズ大学で絵画を教えるほか、ニューヨークの各所で開催する個展に向けて忙しい日々を過ごしている。

Jordan Casteel, Tito, 2017.

これまで高い評価を得ているが、ジョーダンは世間の注目が作品ではなく自分自身に集まりすぎていると感じている。有色人種のアーティストは、権利の不平等性についての見解を何度も繰り返し話すことを期待されることが多い。キャリアの現段階では、自分の画家としての技術にも同様の注目を注いでほしいと彼女は望んでいる。「歴史的に周縁化されてきた人種のアーティストにとって、その人生の方が前面に押し出されることは珍しくありません。ただ、私の場合はそういう個人の歴史ばかり注目されるようになってきている気がして……。それが嫌なわけではないんです。私の過去は、確かに現在の私や私がどんな作品を作るのかに影響しています。でもそこだけに集中しすぎているなと思って」

ジョーダンは直感で筆を進める。どんな作品も、まずは色見本を並べて瞬時に惹きつけられた色調を選ぶところから始まる。「色をより分けて、選んで、どの色をどこに使うかを、これだ、と思うまで考えます。ほとんど無意識的に選んでいると言っていいかもしれません」。彼女がモデルの肌を多様に異なるシャーベット調の色彩で描くのは、有色人種の体が描かれる際の「限界を押し広げたいから」。例えば、あるひとつの家族の中の、肌の色調の幅広さに注目することもある。そして、ニューヨークの〈Casey Kaplan Gallery〉での最近の個展では、とりわけ夜の光の中の男性たちを描いている。琥珀色の街灯やスマートフォンの画面に照らされた彼らを描くことで、観客の心と交信するような深みのある雰囲気が作り上げられている。アメリカでは、黒人男性が夜に外を歩いているだけで、不当に危険視されることがある。闇の中に浮かぶ彼らの柔らかさを感じることは、新鮮な感覚だ。黒人男性の情動性を引き出すジョーダンの才能は、彼女の個人的なバックグラウンドと同様に注目に値する。なぜなら描く対象のことを、そしてコミュニティのことを深く知っているアーティストのみが、そのレベルに到達できるのだから。今年の抱負について聞くと「2018年は、よいバランスを手に入れたい」とジョーダンはi-Dに語ってくれた。

「ここ数年は本当にめまぐるしくて。今はセルフケアを実践することが、すごく大切な気がしています」。彼女はいつも、対象が深い内省の状態にある瞬間を描く。そして今、自分もその状態になろうと考えている。「内省と自己肯定、そして休息を経ることで、予測もつかないような、驚きの方法で作品が姿を表すような余裕が生まれてくるかも」とジョーダンは言う。「リスクや失敗を受け入れる場所と時間を残しておけることには、お金では買えない価値があると思います」

Credits


Photography Zora Sicher
Styling Lana Jay Lackey

Makeup Marcelo Gutierrez. Styling assistance Carlos Acevedo.

This article originally appeared on i-D US.