ELLE TERESA:女の子はみな武器を持っている

Elle Teresa(エル・テレサ)は流行りの服を独自に着こなすかのようなビート・ジャックで注目を集めてきた。女の子でいることは最高だ。そんな思いを込めた彼女のラップは、この時代に重要なメッセージとして響く。

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09 April 2018, 6:41am

「私はイケてる」。Elle Teresaがラップしていることをかいつまんで言えば、つまりはそういうことになる。しかし、彼女が発するそのようなシンプルなメッセージこそが、これまでの日本のラップ・ミュージックに足りないものだったのだ。

ドナルド・トランプ大統領に対する抗議デモ=ウーマンズ・マーチから始まり、セクシャル・ハラスメントを告発する#MeTooが大きな流れとなった2017年は、世界的に女性の年だとされた。アメリカのエンターテインメントでもカーディ・Bという、ユニークでキュートなキャラクターを持つ女性ラッパーが人気を得た。しかし、世界の男女平等ランキング(WEF調べ)で114位に位置付けられる日本においては、女性ラッパーもあるがままに振る舞うのではなく、“男勝り”なキャラクターを演じることでしか注目を集められないのが現状である。

「日本のフィメール・ラッパーって『あたしはよー!』とか『ふざけんな!』みたいな感じじゃないですか。それを観ていて、“何で女なのにこんな言葉使いをするんだろう? 女なんだし、普通に女を武器にすれば良くない?”と思ってたんです」Elle Teresaは言う。“女を武器にする”という表現からは、通常、“可愛い子振る”というようなイメージを連想するだろうが、彼女が言わんとしているのは、むしろ、女性性を肯定するということだろう。Elleがこれまでに発表した2作のミックステープ――『Ignorant Tape』と『PINK TRAP』を聴くと、そこから浮かび上がってくるのは、ファッションを楽しみ、素敵なボーイフレンドと遊び、「私はイケてる」と自分で自分を肯定する、普通の……だからこそ力強い、女の子の姿だ。

Elle Teresaは1997年、静岡県沼津市で生まれている。幼い頃から自信家だった少女は、ダンサーの両親によくクラブへ連れて行かれたという。「小さい頃は嫌でしたけどね。“眠いー! 何でこんなところに来なきゃいけないの”って。でも、中学生になると友達と一緒に行くようになって。沼津には他に遊ぶところがなかったし、何より、学校にはいない、イケてるひとに会えるっていうのが楽しかった」そんな夜の学校で出会ったのが、地元のラッパー=Yuskey Carterだ。デビューから現在までElleのプロデューサーを務めているYuskeyは、彼女の当時の印象について以下のように語る。

「中学生だったんですけど、そうは見えなくて。おしゃれで、地元にはいない感じ。他の子とは違った」一方、それを聞いていたElleは「おしゃれっていうか、キャラ強めだったよね」と笑う。やがて、ElleはYuskeyのミュージックビデオにダンサーとして出演することになるが、撮影現場でKOHHの楽曲を口ずさんでいた彼女に対して、「ラップ、やってみたら」と何気なく提案したYuskeyは、1ヶ月後、驚くことになる。彼女はその僅かな期間で10曲ものリリックを書いてきたし、何よりそれはオリジナリティに満ち溢れていたのだ。

「ダンサーの家庭で育って、小さい頃から自分でもダンスをやっていて、新しいことを始めたくてもなかなかできなかった。だから、Yuskeyの提案は良い機会だと思ったんです。もともと、文章を書くのは得意で。学校の反省文とか、“すいませーん”みたいな感じで適当に謝ったり(笑)。あと、洋楽の歌詞の翻訳を読むのが好きだったんで、それを参考に書きましたね」しかし、当時のElleは日本のラップ・ミュージックをほとんど聴いていなかったし、ましてや、この国の女性のラッパーで、彼女のロールモデルになるような存在はいなかった。「その頃、好きだったのはイギー・アゼリア。可愛くて、でも格好良くて、日本ではそういう子って見たことがなかったから、“こんな子いるんだ!”って驚きました」あるいは、彼女にとっての理想の女性像は、現実よりもアニメの世界に存在していた。例えば、Elleの楽曲「Make Up」のタイトルは『美少女戦士 セーラームーン』の決め台詞の引用である。

「『ムーン・プリズム・パワー、メイク・アップ!』ってやつ。『セーラームーン』も、やっぱり可愛いけど強いところが好きですね。ファッションとかリリックとか、結構、影響されてると思います。あと、『ドラゴンボール』の人造人間18号になりたくてずっと前髪を伸ばしてたんですけど、一昨日、切っちゃって。“いいや、ブルマになろう!”って」ただし、“Elle Teresa”というキャラクターは彼女の理想を演じているわけではない。

「素ですね。だからこそ、“私はイケてる”ってラップしてる。エルは顔が可愛いわけじゃないし、スタイルがいいわけでもない。だからこそ、自分で自分を認めてあげないと。“イケてる”って言い続ければ、洗脳じゃないですけど、みんなも“イケてる”と思ってくれるようになるんです」

日本のラップ・ミュージックにおいて、彼女の類い稀なキャラクターは瞬く間に注目を集めたが、この現実の映し鏡のようなジャンルでは、悔しい思いをすることも多かったという。「ヒップホップって男社会じゃないですか。そのせいで落ち込んだことが何回もありました。決まって、『女だから』って言われるんですよ、“女だから、何?”って思うし、ソヒソヒ(ラップ・ユニット、ゆるふわギャングのNENE, ex Sophiee)とはいつもそういうことを話してます。だからと言って、“女だから”って誰とでも仲良くなるってこともない。フィメール・ラッパーで気が合うのはソヒソヒくらい。それに男が嫌いなわけじゃないですよ。むしろ、大好き(笑)。でも、男社会は嫌だから変えたいですね」

二十歳を迎えたElle Teresaが発表する、可愛らしくも個性を確立したファースト・アルバム『KAWAII BUBBLY LOVELY』は、この日本社会にも成人になることを迫るだろう。

Credit


Text Ryo Isobe.
Photography Kodai Ikemitsu.
Styling Chie Ninomiya.
Hair and Make-up Kyoko. Photography assistance Maho Yamaguchi.
Styling assistance Yoshie Nunoda.
Hair and Make-up assistance Akane Miyamoto.
ELLE TERESA WEARS TOP AND TROUSERS COACH. BRATOP, GRILLZ, NECKLACE AND EARRINGS MODEL’S OWN.