'Climax'

2018年の胸糞悪いダンス映画5選

吐き気を催すルカ・グァダニーノ版『サスペリア』から、ゾンビ・ミュージカルのクリスマス映画まで。

by Hannah Ongley; translated by Ai Nakayama
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05 October 2018, 11:28am

'Climax'

ダンスはいつも、お祝いとともにある。音楽番組『ソウル・トレイン』での、仲間たちと花道を闊歩しながら踊る、歓び溢れるダンス、今は閉店してしまったがかつてタイムズスクエアにあった〈Señor Frog’s〉で流れる自由なコンガに合わせたダンス。あるいはブリトニー・スピアーズの「Toxic」の振付を、寝室でひとり練習にいそしんでいる人もいるかもしれない。しかし多くの映画では、それとはまた違ったカタルシス、例えば悪魔祓いに近いものとして、不気味なシンセのサウンドトラックが合わせられていたりする。2018年はそんな、これまでになかったダンス中心のホラー映画が豊作だ。もっとも期待されるのは、ギャスパー・ノエの最狂ミュージカル映画『クライマックス』だろう。英「ガーディアンズ」誌は本作を「狂気と絶望的な地獄への恐怖の転落」、i-Dは「『パリ、夜は眠らない』×『シャイニング』」と評した。つまり、『ステップ・アップ2:ザ・ストリート』(2008)とはまったく別物だということがおわかりいただけるだろう。

また、『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督は、悪夢的バレエ・ムービーの傑作『サスペリア』(1977)をリメイクした。『ブラック・スワン』が物足りなかったあなたにオススメする、今年観るべきダンス映画5本。

『クライマックス』ギャスパー・ノエ監督

サンダンス映画祭のプレミア上映では6人が途中退場。一方、途中退場しなかった観客には、本作をデビュー作『カノン』(1998)を超える傑作と評している者もいた。賛否両論あるこの作品、大半の出演者はパリのアンダーグラウンドのストリート・ヴォーギングシーン出身のダンサーだ。使われていない寮でのダンスのリハーサル中に、LSDが混入されたサングリアを誤って一気飲みしてしまった彼らは、身体で悪夢を表現する。主演はアルジェリア系フランス人俳優/ダンサーのソフィア・ブテラ。彼女は大作アクション映画への出演で知られているが、本作での彼女のダンスは、これまでの作品で披露してきた三段回し蹴りを超える力強さだ。サウンドトラックには、DAFT PUNKのトーマ・バンガルテルが提供した新曲「Sangria」が含まれている。『君の名前で僕を呼んで』が桃の絵文字に新たな意味を授けたと同様、本作もワインの絵文字に新たな意味を授けるだろう。

『マドレーヌのマドレーヌ(原題:Madeline’s Madeline)』ジョセフィーヌ・デッカー監督

思春期から大人への過渡期を描いたこの衝撃作品では、新人のヘレナ・ハワードが、天才的な俳優の卵を演じる。物語の舞台は、実験的な演劇作品のリハーサル。進行する双極性障害と不安障害が描かれる。偶然にもハワードは映画『ブラック・スワン』の大ファンで、主人公ニナの変容と満たすべき欲望に、共感するところがあったそうだ。ハワードは憑りつかれたようなパフォーマンスを披露しているが、撮影中は分裂症的な精神状態に陥ったという。「撮影中に誰かと会うと、『大丈夫?』って訊かれてました」と今年8月のi-Dのインタビューで彼女は振り返る。「当時は気づかなかったけど、役の精神状態になっていたんでしょうね」

『レッド・スパロー』フランシス・ローレンス監督

ジェニファー・ローレンスが『世界にひとつのプレイブック』でブラッドリー・クーパーとともに見事な社交ダンスを披露してから6年。今度はフランシス・ローレンス監督の『レッド・スパロー』でボリショイ・バレエ団のプリマを演じた。事故によるケガでバレリーナのキャリアを断たれた彼女だが、ダンスは最後までこのスリラー映画の中心に据えられている。第2の人生を妖艶なスパイとして歩むことになった彼女は、ターゲットを陥落するためにバレエで鍛えた技を駆使する。ジェニファー・ローレンスは、1日4時間週5日、ロサンゼルスにある彼女の自宅ガレージで、振付師のカート・フローマンとフットワークの厳しいトレーニングを行なった。今年のアカデミー賞授賞式で転ばずにすんだのは、そのおかげかもしれない。

『サスペリア』ルカ・グァダニーノ監督

ルカ・グァダニーノ監督が『君の名前で僕を呼んで』の次の作品に選んだのは、ホラー映画の古典、ダリオ・アルジェント監督作品『サスペリア』(1977)のリメイクだった。イタリアの小屋で繰り広げられるのどかな恋愛映画とはかけ離れている。主人公は、ダコタ・ジョンソン演じる若きダンサー、スージー。名門バレエスクールに入学するためにベルリンへ渡った彼女は、知らず知らずのうちに奇怪で陰惨な出来事に次々と巻き込まれていく。本作の撮影は、ダコタ・ジョンソンにとっては相当トラウマになったようで、セラピーを受けるはめになった、と彼女は今年4月、『Elle』のインタビューで明かしている。ラスベガスで開催された映画興行主向けのコンベンション〈シネマコン〉でも、オーディエンスが図らずもおぞましい抜粋シーンを観るはめになり、会場は阿鼻叫喚の巷と化したそうだ。

『アンナと黙示録(原題:Anna and the Apocalypse)』ジョン・マクフェール監督

本作はゾンビ・アポカリプスに陽気な歌声を取り入れた、クリスマスのミュージカル・ホラーコメディだ。スコットランドの小さな町で、大勢の高校生たちが「生存するために戦い、ぶっ殺し、歌う」。『ヴァラエティ』誌が「『ハイスクール・ミュージカル』×『ドーン・オブ・ザ・デッド』」と評した『Anna and the Apocalypse』は、想像以上のダンスルーティンと、中毒性のあるポップバラードが満載だ。そのなかでも印象に残る曲はアーサ・キットの1953年のヒット曲「Santa Baby」のセクシーなカバーだろう。この曲は映画『ミーン・ガールズ』(2005)の「ジングル ベル ロック」的な、アイコニックな曲になるかもしれない。本作のダイナミックな振付を手がけたのはサラ・スワイヤー。彼女は主人公アンナの友人で社会的不公正に敏感なアメリカ人レズビアンとして出演もしている。

This article originally appeared on i-D US.