「性別関係なく正当に評価されたい」。ラッパー・MFSが振り返るPOP YOURS

いま最も注目を集める若手ラッパーの一人として、POP YOURSで会場を沸かせる好演を見せたMFSのインタビュー。「BOW」のスマッシュヒットからRed Bull RASENへの抜擢、「Beyond The Lines」のバイラルヒットと、快進撃はとどまることを知らない。彼女の、自然体の魅力を切り取った。

by Tsuya chan
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15 July 2022, 8:00am

──POP YOURS、堂々としたステージでした。パフォーマンスから少し経ち、振り返ってみての感想は?

ライブの記憶がない。一瞬だった!私が元々聴いていたアーティストの中に自分が入っていたというのが、いま改めて考えてみても熱いなって。5lackさんに、Awichさん、MONJUさん、C.O.S.Aさん、ほぼ全員。

──ステージでの緊張は?

自宅でイメトレしている時が一番ドキドキした。現場に行ったら違うワクワクの方が勝った。

──パフォーマンスに対するご自身の満足度は?

No!って感じ(笑)。60点くらいかな。まず、イヤモニ付けるのすら初めてで。ステージも前日の生配信を観て研究したつもりだったんだけど、ヴァイブスも上がりきっちゃってる中で思ってたより会場も大きく感じてしまって。でも楽しかった!

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──デビュー以来、短期間で着実にステップアップされている印象です。ここまでの道のりはいかがでしょう?

自分としては本当にラッキーだなって。「こういうのに出演したい!」「出たらこうしよう!」というイメージは常に描いているけど、自分ではまだ力が伴ってないなと感じる中で(機会を)与えられることが多いからありがたい。全部を一生懸命やっています。振り返っても、「もっとこうした方が良かったな」という反省しかない。

──過去の自分の作品を見たり聴いたりすることはありますか?

自分のMVすら見ることはない!みぞおちがギュッってなっちゃう。でも、ちゃんと学んだことを次に活かそうというのは考えているから。POP YOURSが終わった後も、自分の日々のルーティンを変えたりもしている。もっと成長したい。振り返るよりも前を見たい。

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──最新EP『style』でラッパーとしての表現の幅が広がりました。どういうコンセプトで制作を始めたのでしょう。

それが、実はコンセプトはなくて。EPの前半の曲――「when i was young」や「22gang」とか――は、「BOW」を出したすぐ後くらいに作っている曲で、けっこう前なんです。そのあたりがトラップだったので、ほかのビートも作ってみようって。今回EPは同じビートメーカー、ミックス/マスタリングエンジニアで一つのスタジオで制作していて、その人と作ってどんどん溜まっていったから「じゃあまとめようか」ってなった。

──作品から日本のヒップホップのフィールがほとんど感じられないのが面白くて。リズムの取り方からは、ダンスのノリがすごく伝わってきます。

ダンスのノリを言われるのは嬉しい。確かに、間(ま)とか抜きが好きですね。日本語ラップは聴いてきたけど、ずっと聴いてるのは5lackさんくらいで、圧倒的に海外の方を多く聴いているからかな。

──5lackのどんなところが好き?

5lackさんは私のツボにフィットしまくっています。私の中で特別なアーティストです。POP YOURSでステージを観て、感動した。意識的に取り入れようと思ってなくても、日本語ラップのファーストインプレッションが5lackさんなので、日本語を英語っぽく歌う感じだったり、ラフな感じ、地声で歌う感じ、そのあたりの影響は受けている。

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──普段リリックはどのように書きますか?フリースタイルもされるんでしょうか。

フリースタイル巧そうだよねってよく言われるんだけど、実は一切しなくて。リリックは集中して、かなり考えて書きます。それこそ一作目のEP「FREAKY」は紙とペンと自分一人の空間がないと全くリリックが書けなかった。トラップだったらその時のノリでフロウを決めてあてはめていくアプローチをすることもあるけど、大抵はそうじゃない。

──あれだけ車に乗ったMVを撮りながら「免許持ってない」とか、あと「英語話せない」とかも、リリックでズラしてきます。いわゆるラッパーのよくあるセルフボーストとは少し違うスタンスというか。

保険がけです(笑)。私の見た目で英語話せないとか免許持ってないとか、イメージと違うし恰好がつかないから。先に言っとこうみたいな。(所属しているクルーの)Tha Jointzの人たちも、恰好はつけるけど嘘はつかないっていうのを信条としているので取り繕うのはワックだよねって。自分を良く見せるよりも、自分のかっこ悪いところで曲を作るのもリアル。そのあたりはTha Jointzのフレーバーかな。

──先日、久々にTha Jointzのリリースもありました。

Tha Jointzはいい人ばかり。皆で制作している曲がほかにもあるんだけど、足並みを揃えるのが苦手で。これはもう流れに身を任せるしかないですね。

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──「No type」では「なぜラッパーにフィメールってつく」というリリックもあります。

今回のPOP YOURSもだけど、私がそういった機会を得たという恵まれた環境にいることについて、もしかしたらフィメールだから?と思うこともあるんです。でも、だからこそ性別関係なく正当に評価されたい。実際、年齢や性別、ハーフっていう見た目を取り上げて「だからうまくいってるんでしょ」って言ってくる人もいる。別にそれに対して怒ってるわけじゃないけど、全部公平に見たうえで評価されたいから、そうなるために自分は一層努力していきたい。私がそこに胡坐かいちゃいけないから。

──そういったことをカッコよく成し遂げていると思う、憧れの女性ラッパーは?

リトル・シムズ!本当に本当に大好き。

──『style』リリース時のオンラインライブは、リトル・シムズの<Tiny Desk (Home) Concert>を思い出しました。

そう!あれを参考にしました。あとはアイアムディーディービーも、M.I.Aも好き。彼女たちからインスピレーションはたくさん受けてるし、そういったヴァイブスをぜひ(私の作品から)感じて欲しい。

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──今後、なりたいラッパー像は?

キアヌ・リーブスみたいになりたい(笑)。彼って凄いけど、庶民的だから。私もマジに売れたらああいうふうになりたい。今もストリートで汚い格好で買い物してるところをファンに見られたりもしてる。ギャップあるなぁと思われてもいいかなって。

──見栄を張って飾ったりせず、ありのままの自分でいたいと。以前は、ディスが嫌いともおっしゃっていました。

私が一番最初に受けたインタビューでの発言ですね。それは私もけっこう(記憶に)残ってて。でもこの2年で考え方も変わって、ディスらないとは言い切れないなって思うようになってきた。自分なりのヘイトはあっていいかなって。でも特定の人を傷つけるのは良くないからやらない。ディスは、あったとしても不特定多数のものに対して。

──POP YOURSは、日本のヒップホップの成熟と新たなスタートを予感させる歴史的なイベントでした。未来の日本のヒップホップを切り拓くニューカマーとして、MFSさんの今後の抱負は?

ラッパーってめちゃくちゃ増えてきてる。これからもっと増えるだろうし、ヒップホップはさらに盛り上がるんでしょうね。そういうふうに、ヒップホップに関わる人口が増えていくのを私は望んでいます。数が増える分だけ、私もスキルを磨いていかないといけないと思うし。とりあえず、これからもカマすから見ててね。

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CREDITS


Photography Yuji Kaneko 
Text Tsuya chan
Editor Riku Ogawa

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