サフディ兄弟に影響を与えた『マイアミ・ブルース』が『サム・フリークス』と一日限定上映

「はみ出し者」映画を特集する上映イベントの第9弾!『グッド・タイム』にも影響を与えた『マイアミ・ブルース』と、イベント名の由来となったトーマス・マン主演の未公開映画『サム・フリークス』を特集。

by Takuya Tsunekawa
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03 September 2020, 12:00pm

2018年秋から始まった「はみ出し者」映画の日本未公開作を中心に二本立てで特集する上映イベント「サム・フリークス」の第9弾が、9月6日(日)に渋谷のユーロライブで開催される。

原点回帰を標榜した今回は、前身イベント「アメリカ映画が描く“真摯な痛み”」第1弾で特集した『ジョージア』のジェニファー・ジェイソン・リーが出演する『マイアミ・ブルース』と、本イベント名の由来ともなった青春映画『サム・フリークス(原題:Some Freaks)』を日本語字幕付きで上映する。

『コックファイター』のチャールズ・ウィルフォードの同名小説をジョナサン・デミ製作で映画化した『マイアミ・ブルース』は、ギレルモ・デル・トロが20世紀末のサンシャイン・ノワールの重要作に挙げる1990年の犯罪映画。アレック・ボールドウィンが演じる、警官になりすまして軽犯罪を繰り返す金髪の詐欺師のキャラクターからサフディ兄弟は『グッド・タイム』の主人公の造形に影響を受けたことを公言している。質屋の店主役でカルト映画『ハネムーン・キラーズ』のシャーリー・ストーラーが登場するのも見逃せない。

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『マイアミ・ブルース』

ジャパンプレミアとなる『サム・フリークス』は、「サイクロプス」と揶揄される隻眼の少年マット(『プロジェクト X』『ぼくとアールと彼女のさよなら』のトーマス・マン)とプラスサイズの緑髪の少女ジル(そしてクローゼット・ゲイの少年エルモ)の高校の最終学年から大学1年までの関係の浮き沈みを綴った2016年の青春映画。『ベティ・サイズモア』『彼氏がステキになったワケ』などの辛辣なダークコメディで知られるニール・ラビュートが製作総指揮として携わる本作は、外見で人が識別される悪意と差別が渦巻く不公平な世界で、身体的な特徴によって、標準から外れたはみ出し者たちが校内で虐げられてしまう様を描く。

ハリウッドの黎明期から現代までのロマンティック・コメディを考察したドキュメンタリー『Romantic Comedy』は、恋愛映画が、女性は常に完璧な化粧をして痩せていなければ幸せになれないという義務感を女性客に要請してきたことを指摘していたが、『サム・フリークス』は、ある種そういった今までの映画のお約束の展開を意図的になぞっているところがある。他者の視線の中で周りと相対化して自分自身を認識してしまうマットとジルは、高校卒業とともに外見上の差異を埋めようとしていくのだ。あるいは、特に容姿でジャッジされてきたジルは、あるべきボディイメージの呪縛に取り憑かれた女性として設定されている。これは、そうした自己知覚や強迫観念についての映画である。

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『サム・フリークス』

監督のイアン・マカリスター=マクドナルドは、はみ出し者が周囲に円滑に溶け込むことの困難さ、そしてジョックスだけでなく、深く傷つけられてきた彼らもまた先入観で他者を判断して傷つけてしまう精神構造にまでも踏み込む。ボディシェイミングの問題を探求した『少女ジュリエット』に次ぐ特集として、また、若者が他者をどのように知覚するかを扱った『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』が公開中のいま、大いに見る意義のある異端の青春映画である。

12月20日(日)には第10弾として、『マリアンの友だち』と『タイムズ・スクエア』と少女の友情を描いたニューヨーク映画の名作を二本立てで特集するので、今後もチェックしてほしい。

なお、本イベントは今回もすべての子どもたちが社会から孤立することなく暮らしていけるようになることを目的とした学習支援や自立支援のために、有料入場者1名につき250円が認定NPO法人「3keys」へ寄付される。

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『マイアミ・ブルース』

「サム・フリークス Vol.9」
日時:2020年9月6日(日) 会場:ユーロライブ(渋谷)
料金:2本立て1500円(入れ替えなし・整理番号制)
13:00~ 当日券販売開始
13:20~ 開場
13:35~『マイアミ・ブルース』上映
15:25~『サム・フリークス』上映

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