「ダウンはしたけど、まだKOはされてないってこと」:花井祐介 interview

香港発のクリエイティブスタジオ「AllRightReserved」の次なるコラボレーターは、アーティストの花井祐介。個数限定で制作されたウッドスカルプチャーとウッドボトルが、8月10日(月)より発売される。

by i-D Japan
|
07 August 2020, 8:48am

富士山に巨大なKAWSが現れたと思いきや、VEЯDYのVICKが香港に大集合。香港のクリエイティブスタジオ「AllRightReserved」は誰も体験したことがないような作品やインスタレーションを創造してきた。そんな彼らが主催する〈MEET PROJECT〉は、海外のアーティストたちをサポートすると同時に、見たこともないような方法で彼らを世に送り出すために生まれたコラボレーションプロジェクトだ。

今回、次なるコラボレーターとして登場するのは、VANSとのコラボなどで頭角を表してきたアーティスト、花井祐介だ。なぜか親しみを感じてしまう哀愁漂う表情、ありふれた日常の中のありふれた表情たち、あなたやあなたの横に座っている人たちを描きつづけてきたこと、このコラボレーションへの想いを語ってもらった。

― プロジェクトに参加することになったきっかけを教えてください。

AllrightReservedのSKが数年前から僕の作品を気に入ってフォローしてくれていたみたいで、日本に来るタイミングで会おうということになりました。朝霧高原で開催されたKAWS:HOLIDAYにも招待してもらって、彼らがKAWSのイベントなど世界中で面白い企画を仕掛けていたこともあり、僕も今までにやったことがない何かができるかなと思い一緒に仕事をすることになりました。

Sculpture_1_Vetical.jpg

― 本作品「Down But Not Out」について、込められた想いを教えてください。

「Down But Not Out」という言葉はボクシングから派生した英語の慣用句「ダウンはしたけど、まだKOはされていない。人生でも落ち込むことはあるけどまだ終わりじゃない」という意味で、特に、2020年は肩を落としている人が多いとは思うけれど、今は座って少し休んで、そしてまた立ち上がって前に進もう、という想いを込めました。

Bottle_2_Vetical.jpg

― 「DBNO」のビールを持った「彼」は何を思っているのでしょうか?

基本的には作品に出てくる人物の考えていることは見る人に任せています。もちろん、自分の中ではストーリーを描いていますが、押し付けるよりも見る人それぞれが想像する方が、作品を見る楽しみにもなるのではないかなと思っています。僕としては「Ordinary People(どこにでもいる普通の人たち)」を描いてますが、人って何が普通でそうじゃないのかわからないですよね? この作品を見て、好きなように想像して楽しんでもらいたい。落ち込んでヤケ酒してる馬鹿な人としてでもいいし、共感してもいい、馬鹿にして笑ってもいいと思います。

― 「ダウンされたけど、KOはまだされてない」という言葉は、可能性を信じることができるような勇気付けられる言葉だと感じました。

アメリカの友人と話していて教えてもらった言葉なのですが、僕がいつも「生きているとみなそれぞれ多かれ少なかれ悩みや後悔があるけど、それを笑い飛ばす力がある」という気持ちで絵を描いてると話していたら「Down but not Out」という言葉を教えてもらいました。七転び八起きやキッズリターンの「俺たちもう終わっちゃったのかな?」「バカヤロー、まだ始まっちゃいねぇよ」的な良い言葉だなと、頭に残っていました。

Sculpture_2_Vetical.jpg

― 20代の多感な時期にアメリカのカウンターカルチャーに触れたことは、どのような影響をもたらしていると思われますか?

僕が10代の頃、日本はまだ、“アメリカ=かっこいい”ジェネレーションのギリギリの世代。今はインターネットの普及で世界中の情報が手に入り、広い視野で物事を考えることが出来て羨ましいけれど、その当時はアメカジ全盛期だったので、例に漏れずアメリカに興味は持っていました。友人のバイト先のオーナーがサーファーだったので友人たちと一緒にサーフィンを教えてもらい、その影響でアメリカのカウンターカルチャーに興味を持ち始めたんです。

21歳の時、初めてバックパックを持ってサンフランシスコからメキシコまで約1ヵ月間、長距離バスに乗って旅をして、サンフランシスコの街の雰囲気に魅了され、ビートニクやヒッピー文化を掘るようになりました。23歳の時に学生ビザで1年間だけサンフランシスコに留学し、卒業はしてませんがその間にアートカレッジに通っています。サンフランシスコという街は、煌びやかな生活をしている人も、酒やドラッグに溺れゴミだめのような生活をしている人も、白人やアフリカ系、アジア系にヒスパニック系、そして中東系といったあらゆる人種も同じように生活をして、同性愛者に対してもとても寛容、小さな街のなかで、すべてがごちゃ混ぜになっていて、「アメリカのイメージ」というよりはサンフランシスコの持つ独特な雰囲気に魅了されてました。

サンフランシスコは当時、若い人たちが自由を求めて集まり、「カウンターカルチャー」という既存の概念を壊し、新たなカルチャーや価値観を生み出す街でしたが、いまはITで儲けた人だらけの金持ちの街になってしまいました…。

Sculpture_7_Vertical.jpg

― そういったカルチャーに没頭していった最大の理由、魅力とは何だったのでしょう?

誰かにやってもらうのではなく、自分たちで始めるDIYスピリッツに魅了されたからだと思います。

― イラストとは異なる、立体造形を制作する醍醐味について教えていただけますか?

まずは、前後左右と上から見た絵を描いて、原型師の人に形にしてもらうのですが、自分では考えもしなかった角度からも見ることが出来て、親近感が増しました。

Sculpture_6_Vertical.jpg

― 過去最高だと考えるサーフセッションがありますか?

「今日は最高だったなー」という日は何度もあるのですが、本当に最高だったのは、娘が2歳の時に家の近くの海で膝高くらいの小さい波に、ロングボードに二人で腹這いになって波に乗った時。初めて波に乗って喜んでる娘を見て、自分が初めて波に乗った時の浮遊感を思い出して、娘よりも自分が喜んでいましたね。

― 次世代のキラーサーファー、独特のスタイルを持っていると花井さんが注目サーファーはいますか?

あまりプロサーファーをフォローすることはないのですが、最近かっこいいなとおもうのはMichael Februaryです。カリフォルニアで海に行くと、サーフィンはどうして白人文化なのだろうと感じることがあります。海の近くは高級住宅街、住んでいるのは白人ばかり。海上りにカフェへ立ち寄ると店内には僕以外、全員白人ということも多々あり、ゾッとします。アジア系はちょこちょこいますが、黒人のサーファーを見ることは少ない。サーフィンって自由に見えて窮屈な世界なのかもとずっと考えていました。そこに登場したのが、Michael February。南アフリカ出身の初めての黒人の世界ツアー選手で、黒人特有の手足の長さとしなやかさはとにかくカッコいい。僕は競技としてのサーフィンにはあまり興味がないのですが、彼のライディングはとにかくカッコ良いと思います。

Sculpture_5_Vertical.jpg

― コロナ鬱の社会問題化が騒がれるなか、自分自身を保つための秘訣はありますか?

ありがたいことに僕は娘を二人持つことが出来ました。なのでコロナ自粛中も家の中が大騒ぎ、長い夏休みのように毎日ワイワイ過ごしています。外に出るのも裏山に子供と虫取りに行くか、家の前の道路で鬼ごっこするときくらい、おかげで、近所の人との繋がりが強くなりました。普段だとあまり考えもしなかったのですが、自分を保つためには、家族や地域の人との繋がりはとても大事なのだと思います。

そして、今の時代には、Facetimeがあるので離れた親も、孫と顔を見て話すことが出来る。一人で辛くなったら会いたい人とFacetimeして、その人の顔を見るといつの間にか気持ちが楽になっていると思います。

Sculpture_3_Horizontal.jpg

― ユートピアと言わずとも、ディストピアの道へ歩まぬよう、一人一人ができることはなんだと思いますか?

誰かと繋がること、誰かを思いやること、人は自然に頼らなければ生きていけないということを理解すること。自分の子供のこと、そのまた子供がより良い環境で生活してほしいと思うのは当たり前のこと。より良い環境というものは果たしてどんな環境なのか、一人一人が考えるべきだと思います。

今、見て見ぬ振りをして楽を求めるのか、次の世代のために自分が何かを変えようと行動に移すのか。飲んでいいよと自分に回ってきた綺麗な水が入ったバケツを次の人に回す時、ゴミだらけの泥水を渡すことができるのか考えてみることが大事。残念ながら僕らの世代に回ってきたバケツにはもうすでに少しゴミが浮いてますが、次に渡すときはゴミを取り除いて渡したいですよね。それは誰かを思いやる気持ちということなのだと思います。

“MEET Yusuke Hanai PROJECT”「Down But Not Out」は、ウッドスカルプチャー15個とウッドボトル200個の個数限定で、8月10日(月)より発売が開始される。

“MEET Yusuke Hanai PROJECT”「Down But Not Out」https://ddtstore.com/

Tagged:
Vans
Ordinary People
Kaws
yusuke hanai
VEЯDY
AllRightReserved
MEET PROJECT
VICK
Down But Not Out
MEET Yusuke Hanai PROJECT”