古着のリメイクは本当に〈エコ〉なのか?

TikTokで流行中の、オーバーサイズの古着をリメイクする〈スリフト・フリッピング〉。一見環境に配慮したトレンドに思えるが、その根底にはファットフォビアが隠れていた。

by Liza Bautista, and Meghan Keeney; translated by Nozomi Otaki
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02 February 2021, 10:06am

Still from Lady Bird (2017)

昨年6月、TikTokユーザーのマリエル・グズマは、44インチの淡いブルーのメンズのデニムショーツを裁ちバサミでカットする動画を投稿した。簡単なインストラクションを通してリメイクやダメージ加工の方法を説明するこの動画は、50万のいいねと3000件のコメントを集めた。しかし、この数字は彼女の他のビデオに比べるとかなり少ない。

急激に環境問題への関心を高めつつあるZ世代が、より持続可能なファッション消費のあり方を模索するなか、注目を集めているのが古着を買ってリメイクする〈スリフト・フリッピング〉だ。TikTokのハッシュタグ#thriftflipの再生回数は、7億回を優に超える。

 ファッション業界の炭素排出量が全体の10%を占め、米国では85%近くの布が廃棄されていることを踏まえると、スリフト・フリッピングは環境に配慮した、よりクリエイティブで安価な解決策に思えるかもしれない。

 しかし、このファストファッションの代替案が本当に倫理的かどうかは、いまだに議論の余地がある。服のリメイクは常にトレンドであり続けてきたものの、それがファットフォビア(※太っていることや太っている人に対する嫌悪)を助長しているのでは、と批判する向きもある。

 若く痩せた女性が古着屋で服を購入し、似ても似つかないアイテムに変身させるビデオは、瞬く間にスリフト・フリッピングの世界で主流になった。スリフト・フリッピングでは、リメイクするためにオーバーサイズの服が必要になる。近年のプラスサイズアイテムの需要の高まりによって、古着屋では大きめの商品が不足している。そこにこのトレンドがさらに拍車をかけているのだ。

 スリフト・フリッピングのビデオの〈ビフォア・アフター〉は、プラスサイズの服やそれを着る身体に対する社会的イメージの忌まわしい真実を反映している。これらのビデオでは、痩せたクリエイターが〈醜い〉アイテムの前でうなだれて見せる。その後、〈お直し〉されたアイテムは魅力的かつコンパクトに大変身する、というのが定番の流れだ。

 太った身体や美意識という言葉は概して否定的な意味合いで使われてきた、と指摘するのはテンプル大学社会学助教で『Fashioning Fat: Inside Plus-Size Modeling』の作者、アマンダ・M・チェルニャフスキだ。

 「(これらのビデオの内容は)太っていて平均より大きな身体は不健康で、自制心がなく、怠惰で、望ましくない、という社会的な期待や思い込みと一致しています」。服をリメイクするさいの思考プロセスを、アマンダは次のように説明する。「この特大サイズの服を作り直そう。太った身体と向き合い、しっかり管理してあるべき体型に戻すみたいに」

 スリフト・フリッピングを支持する人は、自分たちがプラスサイズの服を買わなければ結局ゴミになってしまう、と反論するかもしれない。しかし、たとえ本人たちが善意から行なっているとしても、この反論はあまり正確とはいえない。

ライフスタイルを専門とするライターで、ハンバーカレッジ経営学部元非常勤講師のヴォーン・スタッフォード・グレイは、次のように説明する。

 「約1年売れ残ったアイテムは箱に戻され、ホームレスの人びとや無料食堂に送られます。それでも残ったものはリサイクルに回され、(リサイクルできない場合は)廃棄されます」。さらに、「古着屋を頼っている家族も多いので、実際売れ残る商品はほとんどありません」と彼は続ける。

 古着屋には幅広いサイズの商品が揃っているが、プラスサイズの女性向けのアイテムは基本的に手に入りづらい。プラスサイズのインフルエンサー/ライターのカヤ・ミルシテインは、古着屋での体験をこう語る。「Goodwill(リサイクルショップ)に行っても、私に合う服はひとつもない。もしあったとしても、ダサすぎて25歳の私が着たいと思えるようなものじゃない」

 プラスサイズ専用の古着屋もあるにはあるが、大都市にしかない、とカヤはいう。「プラスサイズのアイテムだけを置いている古着屋に行ける私は恵まれてると思う。シアトルのTwo Big Blondesとか、ポートランドのFat Fancy、ロサンゼルスのPlus Busとかね」

 しかし、大半の女性は普通の古着屋で限られたサイズの中から服を選ぶしかない。しかもTikTokによる需要の高まりのせいで、大きめのサイズはより一層手に入りづらくなっている。

 では、環境問題に関心のあるプラスサイズの人びとはどこでファッショナブルな服を探せばいいのだろうか。サステイナブルなブランド、と答えた人は、もう一度よく考えてみてほしい。EverlaneやReformationのような有名なサステイナブルブランドは、たいていXLまでの〈標準〉サイズにしか対応していない。しかも一概にXLといっても、ブランドによって大きさは異なる。さらに、金額の問題もある。

 TikTokerユーザーのなかには、スリフト・フリッピングの議論にどう向き合うべきか戸惑っている人も多い。プラスサイズのファッションクリエイター、キンバリー・リーは、同業者を批判することへの不安を明かした。「自分のプラットフォームでこういう問題について声を上げるのはすごく怖い。仲間のクリエイターが炎上したのを見たばかりだから」

 ファットフォビアについて議論するTikTok動画のコメント欄は、否定的な内容ばかりだ。「たかが服なんだから、そんなに深く考えなくていい」「古着屋も客を選ばなきゃいけないってこと?」というコメントもある。

 サステイナビリティを推進するアクティビストのミーガン・マクシェリーは、彼女のTikTokで数千人のフォロワーに向けて、スリフト・フリッピングで意識的に古着を選ぶことの大切さを訴えている。ミーガンは標準サイズの女性としての特権に自覚的だ。古着屋でも、すぐに自分のサイズを見つけられる。

特に人気の動画で、ミーガンは自分のサイズ、もしくはそれに近いサイズのアイテム以外は買うのをやめた、と語っている。動画の最後に、彼女はオーディエンスにこう呼びかける。「あなたの特権を活用して、サステイナブルファッション業界から疎外された人びとの居場所をつくってください」

 その一方で、コミュニティ内で広まりやすい意見にまつわるダブルスタンダードも、彼女は指摘する。「標準サイズの人が現実的な問題として考えるように呼びかけないと周知されない、というのも悩ましいところですね」

 もちろん、環境問題とファッションに敏感な十代のTiiktokユーザーだけに責任があるわけではない。責められるべきは、ファッション業界全般だ。

 カヤはこう訴える。「私を傷つけているのは、私のサイズのシャツをクロップドシャツにリメイクしているTikTokユーザーではなく、私が着られるサステイナブルなシャツを提供してくれない人たち。問題を生み出しているのは後者のほう」

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