"Untitled (Grapes)," 2017. Photography Clifford Prince King

黒人クィアの男らしさを讃えるポートレート

静かで穏やかな日常を切り取るフォトグラファー、クリフォード・プリンス・キングにインタビュー。

by Juliana Ukiomogbe; translated by Nozomi Otaki
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12 February 2021, 12:22pm

"Untitled (Grapes)," 2017. Photography Clifford Prince King

アーティストとしてのクリフォード・プリンス・キングを真に理解するには、まず彼の好きな映画について論じなければならない。「いろんな映画を観ることで、自分のなかにアートへの情熱を見出していった。昔はどちらかといえば孤立していたから」と現在27歳の彼は語る。

「故郷のアリゾナ州ツーソンは午後6時になっても暑いから、夏のあいだは毎日2、3本映画を観てた。今考えるとクレイジーだけど」

 なかでも特にお気に入りの1本が名作『シティ・オブ・ゴッド』。リオデジャネイロを舞台に、フォトグラファーを目指す少年が貧民街で懸命に生きる姿を追う、鮮烈で過激なブラジルのクライムドラマだ。

 「フォトグラファーが中心の映画だから、僕もリアルな日常を捉えてみたい、という思いを駆り立てられた」とクリフォードは語る。「ヴィジュアルや撮影技術に力を入れていて、会話はそれほど多くないけれど、感情を通してゆったりとストーリーを語る映画が好き」

 映画への興味をきっかけに、クリフォードは高校で映画制作の授業をとり、そこから写真へとのめり込んでいく。「授業でストーリーを語るさまざまな方法を教わった」と彼は回想する。

 「でも、僕が映画よりも写真に惹かれたのは、映画のストーリーテリングは主にグループに頼っていて、最新のカメラとかソフトウェアとか、機材を揃えるのが大変だったから。制作に手間がかかるものより、古いフィルムカメラで友人の飾らない姿を写真に収めることにしたんだ」

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"Como Park," 2019.

映像作家ではなく写真家としてのキャリアを選んだクリフォードだが、映画への変わらぬ愛は、彼が写真を通して語る鮮やかなストーリーにはっきりと表れている。マリファナたばこを相手の唇に差し出す男性や草原で抱き合う恋人たちなど、彼が捉える被写体は、まるで映画のワンシーンを切り取ったかのようだ。特に気に入っているのは、モデルが気づいていない瞬間に撮った写真だという。

 「このキッチンで踊っているふたりの青年の写真のタイトルは、〈Just the Two of Us(ふたりきり)〉」と彼は説明する。「ふたりが自然に始めたことなんだ。最初は他のものを撮っていたんだけど、彼らが撮影の合間に踊り始めて、『お、これいいな』と思って。普段から何をするかあまり決め過ぎないようにしてる。そうすると、誠実さやリアルさが失われしまうから」

 クリフォードの誠実さへのこだわりは、被写体のチョイスからも見て取れる。彼のミューズは友人同士から恋人たち、ネットで知り合った相手など多岐にわたる。「以前はときどきマッチングアプリを通して、新顔や他人からの注目を求めていない人たちと会っていた」と彼はいう。

 「モデルや、自分が被写体になることに何らかの見返りを求めるひとを撮ることは、僕の芸術的・創造的な信条に反している」。プロのモデルを起用しないことが、彼のポートレートのリアルで親密な雰囲気をより引き立てているのだ。

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"Safe Space," 2020.

クリフォードの作品は、日常の何気ない瞬間に敬意を表すと同時に、クィアの黒人男性とブラックカルチャーを中心に据えている。彼の写真に写る男性たちはジェームズ・ボールドウィンを読み、ドゥーラグをかぶってくつろぎ、目の粗いくしとジェルでコーンロウをまとめる。彼にとって、これらの些細な黒人の体験を取り入れることは意図的であり、必要不可欠なこともである。

 「僕にとってはすごく大切なこと。これ昔見たことある、って写真を見てくれたひととの会話のきっかけになるから。自分がもっと小さくて、兄や両親がこういう製品を使うのを眺めていたあの頃にタイムスリップさせてくれる」

 クリフォードの直近の個展は2020年9月、ロサンゼルスのギャラリーThe Gallery @で行われた。タイトルは〈While Night Comes on Gently〉。ラングストン・ヒューズの詩「Dream Variation」の一節だ。「この詩を読んで、すごく美しいと思ったのを覚えてる」と彼はいう。「僕たちは夢に向かって進むために、何とともに歩み、何を捨てようとするんだろう?」

 作品に文学を取り入れようと決めたきっかけは、彼自身の子ども時代にさかのぼる。「僕が子どもの頃はジェームズ・ボールドウィンやベル・フックス、オードリー・ロードに触れる機会はほとんどなかった。学校のカリキュラムになかったから」と彼は当時を振り返る。

「コンテンポラリーアートで彼らの作品を知れば、タイトルを調べるきっかけにもなる。もっと興味を持つひとが増えるといいな」

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"Boy with Watermelons," 2019.

クリフォードのもうひとつの目標は、自らの作品を通して若者に本当の意味で〈まなざされる〉ことを実感してもらうことだ。「彼らが自らのアイデンティティやセクシュアリティを疑う期間を早送りにしたい」と彼は訴える。

 みんなにもっと自由になってほしいと願うのと同様、彼自身も自らのセクシュアリティやブラックネスを表現し、心から愛するために創作しているという。

「もし僕が若い頃に自分の作品を見ていたら、自分らしく生きられるようになるまでにこれほど時間はかからなかったと思う。当時は僕の知る限りでは黒人のクィアの表象はほとんどなかったから」と彼は語る。「だから、みんなが自分を誤解する期間を早送りにする手助けができればうれしい」

 現在ロサンゼルスを拠点とする彼は、初恋の相手、すなわち映画と再会を果たした。昨年、初の短編映画『Growing Each Day』を発表したばかりだが、彼は新たな自信を胸にこの媒体へと戻ってきた。

「僕が映画に消極的だったのは、大作をつくらなければいけないと思っていたから」と彼はいう。「その考えを取り払って、小型で性能も良くないビデオカメラで撮影を始めた。予算が潤沢に見えるかどうかより、映像に何を入れるのか、そして視覚的な出来事を重視した。過度な期待はせず、とにかくいろんなものを撮って、それを満足できるかたちに繋ぎ合わせるのを楽しんでるよ」

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"I Told My Baby to Meet Me on 24th Street," 2020.
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"Lovers in a field."
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"Untitled (Grapes)," 2017.
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"For What It's Worth," 2019.
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"Just the Two of Us."
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"Communion," 2019.
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"Poster Boys," 2019.

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