i-D × ARTSTHREAD 学生デザイン・コンペティション サステイナビリティ、スポーツ&デニム部門の受賞者を発表
選ばれたのは、アニュバの海藻繊維のファブリックと、エミのサバイバル・アウトドアウェア。

2020年のファッション業界において、サステイナビリティ、倫理、吟味されたプロダクションは、いまだかつてなく重要なテーマとなっている。i-DとARTSTHREADがタッグを組んだ、Gucci協賛による〈Global Design Graduate Show〉のサステイナビリティとスポーツ&デニムの両部門で選ばれたのも、業界のより良い未来を目指すデザイナーだった。
サステイナビリティ部門の受賞者は、パーソンズ美術大学でテキスタイルの修士課程を卒業した28歳のアニュバ・スード。
自身のプロジェクト〈Between Salt & Water〉のために、彼女はニューヨークのコニーアイランド、アイルランドのゴールウェイ、タイのタオ島で、大西洋と北太平洋から流れ着いた海藻を集め、染色し、柔らかくして布を織った。

彼女は集めた海藻を海水で茹でたり、海藻を煮出した水でシルクを染めたり、グリセリンを塗布したり、柔らかくしたり、手織り機やパン用の焼き網で織るなど、さまざまな手法を試した。
その結果、レーザーカットで複雑な模様が施された、色彩豊かな美しいファブリックのコレクションが完成した。

コレクションを通して、アニュバは地球の生態系のバランスを保つうえで重要な役割を果たしている海藻が人間の手によって減少している事実を、より多くのひとに広めたかったという。海藻は、陸上の森林の約20倍の二酸化炭素を吸収している。
「現在の生産システムとそれが自然に与える影響から、作品のアイデアを思いつきました」とアニュバは語る。
「私たちは一体どうすれば、機能性や製造工程と強く結びついた一般的なデザインプロセスから脱却できるのか。個人的には、このようなデザインのやりかたに介入することが重要だと思います。原料が通るさまざまな過程を、順を追って確かめる必要があるんです」

世界の週末が間近に迫ったかのように思える2020年において、スポーツ&デニム部門の勝者、23歳のエミ・タニムラは、〈Survivalist: Adapting to Change〉というコレクションを発表した。
ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションでファッションデザイン・アンド・ディべロップメントを学んだ彼女の作品は、アウトドアウェアの機能性や順応性を深く掘り下げている。

2年前、両親と疎遠になったあと、エミは着心地が良くリラックスできる、多用途で安らぎを与えてくれる服を制作した。
「状況に素早く適応する服をデザインしたかった。自分自身が大変な時期にそうする必要があったので」とエミは説明する。
「不思議なことに、不快に感じるものがあるとやる気が出るんです。自分が着る服の欠点に気づいたら、それをじっくり観察し、クリエイティブな方法でより良い解決策を探ります」
そうして誕生したのが〈ボンバーバッグ〉だ。暖房が効きすぎのロンドンの地下鉄で上着を脱いで抱えなければいけない苛立ちから、このアイデアが生まれたという。
防水防風、UVカット仕様で破れにくく、断熱効果があるが通気性に優れたジャケットは、素早く簡単にバックパックに変身させることができる。

2番目のルックは〈テント・トレンチ〉。オーバーサイズのトレンチコートは、ジッパーで下半分を取り外すとスタイリッシュなクロップドジャケットに変身し、取り外した部分は1人用の緊急シェルターになる。空気注入式のポールが付属しているので、テントの支柱の重みや煩わしさとも無縁だ。

〈Centre of Fashion Enterprise〉とともに社会事業のファッションブランドを立ち上げる準備を進めている彼女は、サステイナブルで倫理的な生産工程で生み出された、スタイリッシュで実用的な服をつくり続けていきたい、と語る。
「この社会事業を通して、弱い立場にあるコミュニティをサポートし、現代のビジネスは利益を出す以上のことを成し遂げられるということを証明したい」
これから発表される他部門の受賞作もお見逃しなく! 〈Global Design Graduate〉の全応募作はこちらから。