Y2Kファッションの復活を後押しした映画『ノット・ア・ガール』

公開から20年、Z世代のファッションバイブルとなった本作のブリトニー・スピアーズの着こなしを、ファンへのインタビューを通して分析する。

by Lexi Lane; translated by Nozomi Otaki
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20 January 2022, 5:08am

時は2002年。誰もが認めるY2Kのポップ・プリンセス、ブリトニー・スピアーズは、人気の絶頂期にあった。数ヶ月前にMTVビデオ・ミュージックアワードでヘビを肩に乗せてパフォーマンスし、3rdアルバム『ブリトニー』を発表したばかりの彼女は、まさに世界の頂点にいたが、同時にキャリアの危機が迫っていた。自ら率先して行動を起こすブリトニーは、チームとともに自身の映画デビュー作のコンセプトを考え、『ブリジャートン家』など数々の人気ドラマの生みの親ションダ・ライムズに脚本を依頼。その結果完成したのが、3人のエネルギッシュな少女たちの堂々たる友情を描く青春ロードムービー『ノット・ア・ガール』だ。


ブリトニーにとっては残念なことに、(主に男性の)不親切な批評家のせいで、映画評論サイトRotten Tomatoesの肯定的なレビューは、わずか14%にとどまっている。映画評論家のスティーヴン・ホールデンは、『ニューヨーク・タイムズ』にこのような非常に辛辣なコメントを残した。「ミズ・スピアーズの演技スタイルは、媚びた人間エンタメマシンになるべく幼少期から厳しくしつけられてきたパフォーマーそのものだ」。スティーヴンはこの頃からクソ野郎への道をたどっていたに違いない。

それから20年、彼女が父親の不当で虐待的な後見人制度から自由になるための闘争が大々的に報じられたあと、この映画をまったく別の視点から捉えるひとが増えている。若い世代のオーディエンスが、TikTokのようなプラットフォームで本作のワンシーンを共有したり、プレミア上映のファッションを振り返ることで、本作を再評価しているのだ。自身を〈Instagram界のトム・フォード〉と称する@velvetcoke(典型的な2000年代を懐かしむアカウント)も、最近彼女たちに着目し、当時のブリトニーのスタイルを讃えている。

『ノット・ア・ガール』では、3人の主人公全員が、それぞれ独自のゼロ年代ファッションを披露している。ゾーイ・サルダナ演じるキットは、まさにプロムクイーンにふさわしい、陽気な性格を反映するかのような完璧にコーディネートされたスタイル。Y2Kのフェムを体現するようなチューブトップス、大きなフープイヤリング、ピンク、ブルーのアイシャドウが大のお気に入りだ。

タリン・マニング演じるマイペースなミミのスタイルは、キットとは対照的で、羨ましくなるほど豊富なグラフィックTシャツのコレクションや多種多様な大ぶりのジュエリー、そして後ろでバンダナでまとめたヘアスタイル。最後に、ブリトニーが演じるスイートな主人公ルーシーのファッションは、ふたりの友人たちのちょうど中間に位置する。メイクは最小限かつナチュラルで、花柄やパステルカラーを好み、カレッジTシャツやバケットハットに、さまざまなデニムを合わせている。

Zoë Saldana as Kit in the 2002 movie Crossroads
Everett Collection Inc / Alamy Stock Photo

18歳のジョイシー・サフディアは、大好きな2000年代のポップアイドルが比較的アングラなロードムービーに出演していたと知った瞬間、すぐに観なければという義務感に駆られたという。「ちょっと待って、今すぐ観ないと、って」。彼女はすぐに本作のファッションのとりこになった。「特に目を奪われたのは、彼女がカウボーイハットに小さなピンクのタンクトップ姿でマドンナの〈Open Your Heart〉をバックに踊る最初のシーン。彼女はどこにでもいる普通の女の子ですが、あの着こなしは誰にも真似できません」

アイスクリームを食べ、スプーンをマイク代わりに情熱的に歌いながら、ルーシーはベッドの上の巨大なポスターの前の〈ステージ〉でパフォーマンスをする。ここでの彼女の服装は、本作で最も顕著なテーマを提示している。それはマックス・マーティンが手がけたブリトニーのヒット曲で、彼女が作中の後半で披露する「I’m Not a Girl, Not Yet a Woman」でも表現された、だんだん短くなっていく思春期から大人への過渡期だ。2000年のミュージカル映画『コヨーテ・アグリー』以来、青春映画の定番となったカウボーイハットは、彼女の隠されたワイルドな一面を表すクールでさりげないアイテムだ。

Britney Spears wearing double denim in the movie Crossroads (2002)
AA Film Archive / Alamy Stock Photo

ロンドン在住の『ノット・ア・ガール』ファン、ニーナ・ベンジャミンが一番ワクワクしたのは、ローライズジーンズやグラフィックプリントのベイビーTなど、作中に登場するトレンドが2022年に復活を遂げつつあることだ。18歳の彼女は、Depopのようなプラットフォームが、特に同世代のあいだで『ノット・ア・ガール』風のアイテムの復活を後押ししているという。「みんなミニスカートやデニム、ローライズパンツなど、90年代から2000年代の親世代の服に注目しています」。ゼロ年代前半の忘れ去られたファッションは、こうして新たな居場所を見つけたのだ。

同様に、本作でZ世代の心を捉えたのがDIYルックだ。作中の印象深いシーンのひとつで、ブリトニーはジョーン・ジェットの「I Love Rock n Roll」のカバーを披露する。当時の音楽シーンに詳しいひとなら、この曲が2001年のアルバム『ブリトニー』に収録されたシングルだということは知っているだろう(MVではシルバーのスクエアスタッズがあしらわれたブラックのクロップ丈のレザートップス、同素材のベルト、超ローライズのフレアのデニムショーツを着用していた)。

明らかに自分でリメイクしたVネックのあいだから、胸にプリントされた鮮やかな太字のゴシック体の〈FREEDOM〉がのぞいている。ジョイシーもニーナも、このブリトニーのスタイルを、『ノット・ア・ガール』の重要なファッション・インスピレーションのひとつに挙げた。「彼女が作中で披露した他のどのスタイルとも違って、すごくセクシーだと思った」とジョイシーはいう。「エッジィだけど、キュートでフェミニンでもあります」

ニーナは、このようなルックの再流行は、古着を別の用途で使おうというZ世代の情熱にも関連していると考えている。「(2000年代ファッションのファンは)最初はこれがエコだなんて考えてはいなかったと思います」と彼女はこのカスタマイズされたルックについて語る。「ただ単にクールだし、流行のファッションを安く真似できると思っただけかもしれません」。そのいっぽうで、彼女の世代は「アンチ・ファストファッションへと向かっている」という。

さらに彼女は、ブリトニーを成年後見制度から解放しようという〈#FreeBritney〉ムーブメントも、この映画の復活に一役買ったと指摘する。「多くのひとが今になってようやくブリトニー・スピアーズに追いつき、彼女がいかにすばらしいファッションアイコンだったかということに気づき始めたのです」

この20年間、ずっと世界のトレンドを追い続けていた人びとにとって、ブリトニーが今も昔もみんなが憧れる正真正銘の〈ビッチ〉だと認められたのは、歓迎するべきことだろう。同時にこのスタイルは、誰もが彼女のようにカジュアルなカウボーイハットをおしゃれにかぶれるとは限らない、という教訓を示しているのかもしれない。でも、そんなことはどうだっていい。とにかく挑戦してみるべきだ。

Taryn Manning as Mimi in the 2002 film Crossroads
Everett Collection Inc / Alamy Stock Photo
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