Photography Mitchell Sams

移民がつくったロンドン Wales Bonner 2020秋冬:70年代ロンドンへ

ロンドンのダブレゲエ、ラヴァーズロックのシーンからインスパイアされたコレクション。グレース・ウェールズ・ボナーは今季、〈英国らしさ〉を探求した。

by Felix Petty; translated by Ai Nakayama
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21 January 2020, 9:37am

Photography Mitchell Sams

1年前、グレース・ウェールズ・ボナーはロンドンのサーペンタイン・ギャラリーで開催された、自身がキュレーションした展覧会で、2019年秋冬コレクションを披露した。そのショーは、黒人大学の名門ハワード大学のキャンパスで見られたようなアイビーリーグスタイルと、アフロカリビアンの精神を混淆させたものだったが、それから1年経った最新コレクションでは、〈英国らしさ〉に強くアプローチしていた。

グレースは1970年代のロンドンをコレクションの出発点として、ラヴァーズロックやダブレゲエシーンを参照し、英国のメインストリームだった白人社会の周縁に独自のコミュニティとパーティシーンを形成したカリブ系英国人2世にインスピレーション源を見出した。

ステージに組まれたのは、彼らのアンダーグラウンド・パーティを模したセット。茶色のプラスチック製テーブルがダンスフロアを囲み、高くそびえ立つ巨大なサウンドシステムの低音が胸を震わせる。そのスピーカーから流れているのは、ジェイミーXXの新曲「Dancewme」。同じ、70年代という時代に誕生した先駆的な音楽に敬意を表する作品だ。

「幼い頃に触れていたものを参照して、まるで故郷に帰ったような感じですね」とグレースはショーのあとに語った。

「まず、70年代のロンドンの写真を見ることから始めました。ジャマイカ系英国人のコミュニティ、アフロカリビアンコミュニティ第二世代の写真です。私の家族もそう。(中略)それをテーマに掲げたかったんです。それがどんな様子だったのか。きっと私にとって、何らかのかたちでこの時代に敬意を表すことは、不可避だったと思います」

wales bonner

本コレクションの制作中にグレースが参照していた写真シリーズのひとつが、ジョン・ゴトーの〈Lovers’ Rock〉だった。本シリーズはルイシャム青少年センターで1977年に撮影された(初公開されたのは2013年)。それと同じ年、極右政党のイギリス国民戦線が、多様なひとびとが暮らしていたロンドン南東部で、差別主義を掲げて行なった行進を端緒として勃発した衝突〈ルイシャムの戦い〉も起こっている。

「私が参照した70年代のラヴァーズロックシーンには、異人種カップルが大勢いました」とグレース。「今回のコレクションには、それと同じような力を与えたかったんです。ウィメンズウェアは強くあらねばいけなかった。男と平等でありながら異なった存在であるために」

「私の父はルイシャムに仕事場を構えていました。父の家族が暮らしていたのはストックウェルです。7人姉妹のいる家族でした」と彼女は続ける。「家庭や家というのは、とても大切な共同体の空間ですが、人間が自分たちの世界、自分たちだけの環境を形成するということでもあります」

英国らしさとジャマイカらしさを混ぜ合わせた本コレクションでは、フェアアイルニットやスーツ、ツイード、ウィンドウペンチェック、ドンキージャケット、トレンチコートなど、実にクラシックな英国ファッションの定番アイテムが登場した。しかし、グレースの手にかかればそれらのアイテムも、常軌を逸した、挑戦的でクリエイティブな雰囲気をまとう。そこには怖いもの知らずのスタイル、態度、プライドだけでなく、優しさ、温かみ、魂がある。だからこそ、彼女の真心を感じられる、絶賛のコレクションとなったのだろう。

グレースはアカデミックな研究と自らの知性による観察を、詩的な美しさ、感情に訴えるデザインへと結実する能力をもっている。同世代のメンズウェアデザイナーのなかでも卓越した才能だ。

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Credits


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This article originally appeared on i-D UK.

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