「ガールズ・ヒップホップはもう消えた」RIEHATAが語る、ダンスのジェンダーレス化

TWICE、BTS、クリス・ブラウン、NCTなどの振付けを数多く手がけるコレオグラファー/ダンサーのRIEHATA(リエハタ)。アジア人・女性ダンサーとしてヒップホップ・ダンスの世界に飛び込み、一人でシーンの地図を書き換えた彼女に聞く、メンタルケア術とその強さの理由。

by Saori Uemura; photos by Yoko Kusano
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31 March 2020, 2:25am

「最近スタジオに籠もりっぱなしだったから、外の撮影が嬉しいです」ポートレイトの撮影場所に向かいながら、RIEHATAはそう呟いた。

10代からヒップホップを中心とするダンスアーティストとして頭角を現し、現在ではTWICE、BTS(防弾少年団)、クリス・ブラウン、EXILEの振付けを手がけるコレオグラファーとして世界を飛び回っているRIEHATA。EXO、Red Velvet、NCT──世界各国でビッグネームとの共演をこなしてきたカリスマの元に届くラブコールは絶えることがない。この取材後も、すぐにダンスのリハーサルへ向かうという。

近年グローバル・ポップカルチャーの地図を書き換え続けているK-POPの波は、ここ日本にも着実に届き、今ではすっかり定着した感すらある。コリアンビューティはメイクの定番となり、男性の美容やネイルも浸透しはじめた。韓国アイドルたちの鍛えられたボディや力強いパフォーマンスは、日本人の美的感覚や憧れの女性像すらも変えているようだ。

そうしたK-POPシーンのど真ん中で活躍するRIEHATAは、若いダンサーにとってのロールモデルとなっている。10代で単身アメリカに渡った彼女は、男性中心のヒップホップ・ダンス界にアジア人の女性ダンサーとして飛び込んでいき、賞賛とリスペクトを勝ち取った。RIEHATAはアジア人ダンサー、そして女性ダンサーの道を切り拓いたパイオニアなのだ。

2018年からは2年連続でNikeのキャンペーンに起用。オーディションや練習会を通して、RIEHATAがこれまで培ってきたスキルと精神、踊ることの喜びを10代の女性ダンサーたちへ伝えている。

そんな彼女が、ダンスの多様化、K-POPが"美のあり方"に与えた影響、モチベーションを保持するための独自のメンタルケア術について縦横無尽に語った。

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──RIEHATAさんはどんな子供でしたか?

地元で男の子と走り回ってましたね。体を動かすのが好きで、剣道もバスケもサッカーもドッジボールも、10代の頃はスケボーもしてました。

──ダンスとの出会いは?

母親の影響もあって、小さい頃からブラック・ミュージックを聴いていたんです。TLCとかミッシー・エリオットとか。彼女たちのMVをよく観ていたんですけど、後ろのバックダンサーが気になって。それでダンスを真似するようになったんです。

──まだYouTubeがない頃ですよね。どうやってMVを見ていたんですか?

DVDとかビデオで見てました。親が持っていたり、自分でCDショップで買いに行ったり。マイケル・ジャクソンとかジャネット・ジャクソンも見てましたね。バックダンサーは短めのクロップドトップスを着ていて、お腹出して腹筋があって。そういう筋肉質な女の人に小さい頃から憧れてました。日本の音楽番組でも、モーニング娘。や安室(奈美恵)ちゃんが踊っているのはかっこいいなと思ってましたね。音楽に関わっている人たちが憧れでした。

──中学卒業後の2004年、すぐに単身LAへヒップホップ・ダンスを学びに行かれていますよね。ヒップホップは男性的なイメージの強いカルチャーですが、苦労も多かったんじゃないでしょうか。

当時は、今よりもアジア人や女性がダンサーを目指すのが難しい時代だったと思います。ヒップホップは男性が力強いダンスをするイメージでした。アジア人は筋肉の量や骨格も海外の人とは違う。壁がありすぎて、勝負そのものを諦めてしまっていた人も多かったと思います。当時日本ではヒップホップ(ダンス)でも女性はセクシーに可憐に踊ろうっていう決めつけが強くて、「ガールズ・ヒップホップ」なんて名前があったくらいで。自分も当時それがすごく嫌で、男の人にも負けないかっこいいヒップホップをやろうと決心したんです。海外でも色々なダンサーのレッスンを受けたけど、振りはめちゃくちゃ難しい。でも女の子がそれを踊れるようになったら、世界が変わるんじゃないかって、10代なりに大きいビジョンを描いて、勝負しました。そしたら注目されるようになったんです。

そこで手応えを感じて、自分がもっと頑張れば日本のダンサー、女の子のダンサーがより世界で勝負できるんじゃないかと思って。そこから練習もさらに増やして、努力しました。

──「ガールズ・ヒップホップ」という言葉があるんですね。

でも今は、その名前はほとんど残ってないと思います。少しは自分も消せたんじゃないかなって思っちゃうくらい(笑)!

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──ダンスにジェンダーってあるんですか?

昔は男女でダンスがくっきり分かれていることが多かったと思います。ダンス教室も男女でジャンルが分けられがちで、人間関係も交わらないことがほとんどでした。でも今はそんなことなくて、性別ではなく音楽の数だけダンスがあるというか、自由が広がり、ジェンダーレス、ボーダーレスになってきています。

女の子特有の悩みはまだもちろんあって、思春期に思いっきり踊るのが恥ずかしいとか、筋肉の量が少ないから、激しいダンスについていくのが難しいということはあります。でも今は「女だからって負けない」という意識が広まって、ダンサーでもスポーツ選手でもかっこいい女性が増えてきているから、「私もこれでいいんだ」って思う若い世代も増えている。音楽と同じようにダンスもジェンダーの壁がなくなってきていると思います。ダンスも一人の人間として表現しようという流れですね。この音楽に合わせて何を表現したいか、どんな感情を表すか。見る側もそういうことを求めているんだと思います。メイクや衣装も変わってきていますし。

──日本でもK-POPが人気で、若い子のあいだではコリアン・ビューティが当たり前になっているし、メイクをする男の子も増えています。

ここ数年で「美」の概念がすごく変わってきていますよね。見た目がいい人じゃなくて、自信を持っている女性、輝いている女性がロールモデルになっていると思います。ダイエットして理想の体型を目指すのではなくて、自分の生き方を貫き、ライフスタイルに誇りを持っている人に勇気づけられる人が増えている。私自身もそういう女性にパワーをもらいますね。男女問わず、昔とはゴールが変わってきているんじゃないかな。前は、みんな痩せてるから私も痩せなきゃとか、何かを真似することが正しい、みたいな文化が日本には強くあった。でも今は自分のために目標を作る人が少しずつ増えている。だからユニークな表現の仕方で活躍する人が増えているんだと思います。

──そもそも、ダンスで自分を表現するって難しそうですね。RIEHATAさんのダンス教室に通っている子にはどうやってアドバイスをするのでしょうか?

自分の感情と向き合うことを教えています。心を込めて表現したものって不思議と伝わるんですよ。楽しいと感じて踊ったら、見ている人も楽しんでくれる。だから、たとえば元気がない子には「無理して楽しそうに踊らなくてもいい」「むしろ悲しい曲をかけて踊ってみたら?」と声をかけます。辛い経験がないと人に優しくなれないから、楽しさとか嬉しさだけじゃなくて、悲しみや怒りも大切にしてほしいんです。

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私も辛いことはたくさん経験しました。特に二人の子どもを出産して2年ほど表舞台から去っていた時期は、ダンサーとしてもハンディキャップを感じて、精神的に大変で。でも、そこでシンプルに「今自分が大切にしたいことは何だろう?」って考え直すことができたんです。休んで練習ができなくても、子育てや復帰に向けたボディケア含め、人として頑張り続けているし、周りがどう思おうと素晴らしい経験をしているんだって。だから、復帰も堂々とできました。むしろ「パワーアップした」と言われてビックリしました(笑)。女性、強いなって思いましたね。

──素敵ですね。女の子のダンサーに特にアドバイスしていることはありますか?

「日本の女の子が世界で勝負するなら、近道はない。二倍練習しなきゃ」って言っています。私の海外での経験をもとにしたメンタルケアの方法なども指導していたりして、周りや生徒たちはどんどん最強なダンサーになってます。もちろん彼女たちの才能と努力の結果なのですけど!

今ではアメリカ、ヨーロッパ、韓国、中国、どこに彼らを連れて行っても、「日本人ってこんなすごいんだ!」って言われます。SNSでも日本人のダンス動画が話題になったり。世界的に見ても、日本がいちばん上手いんじゃないかってくらいレベルが上がっています。

──そうなんですか!

それに加えて、日本人のダンサーはファッションも強みで、海外にも影響を与えています。海外のダンサーは白Tにスウェットでもさまになるから、ファッションに労力をかける人がほとんどいなかった。日本人は体型にコンプレックスが多い分、昔からお洒落に長けているんです。

──かっこいい服を着ることはいいパフォーマンスにもつながりますよね。

そうそう! 気分も上がるし、踊る前に「かわいいね」「お洒落だね」って褒められると、パフォーマンスの入り方も違ってくる。自分のダンス・スタイルや個性がわからないダンサーが、ファッションから自分を探るというのはすごくありだと思います。

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以前は日本でも海外でも、私が少しでも着飾っていくと、現場で「今日どうしたの?」ってからかわれたんです。でも人と違うことをすれば、必ず何か言われるものだし、これが自分の個性が生かされる表現だって信じていたので止めませんでした。どれだけ忙しくても、どんなに眠くてもドレスアップしてました。いつ撮られてもいいようにって、まだ有名じゃないのに気持ちはスターでいるよう心がけてました。「毎日ドレスアップ」って言葉を部屋中に貼ったり、携帯の待ち受け画面にしたりして。自分のためになったなと思ったことを繰り返して、自分なりのいい方法を探してました。それを今若い子たちに教えてます。

──メンタル面ではどんなことを教えているんでしょうか?

目標を立てて、自分で自分を奮い立たせることを強調しています。自分が10代の頃は、周りにそのことについてアドバイスしてくれる人があまりいませんでした。海外に行くと日本にいるときにはあるはずの自信がなくなって、自分の存在が本当に小さく思えたんですね、私自身。障壁は人によってそれぞれだけど、自分自身でモチベーションを上げて、動き続けることがいいきっかけを引き寄せるんだと今は考えています。

──統計でも日本人(特に女性)は、自己肯定感が低いと言われています。

ダンスでいろんな国に行くけど、自己主張の強い海外の人々に比べて、日本人は自信がないなあと感じますね。そこが"謙虚"な日本人の良さでもあるのですが。海外は「私がいちばん!」って子が多くて、逆に自信持ちすぎなくらい(笑)。日本人の協調性は素晴らしさでもあるけど、その「周りを見る」ということがいつのまにか「周りと比べる」ことになって、悩んでしまう場合が多い。嫉妬とか他人との比較っていちばん要らないと思うんです。謙虚さと感謝さえしっかり心の中にキープすれば、思いっきり自分に自信を持って、堂々としていい。

──他人と比べるのを避けつつ「周りを見る」にはどうしたらいいんでしょう?

感謝することですべて解決すると思います。たとえば、挑戦できる環境そのものに感謝したり、自分よりすごい人をみたら「刺激をくれてありがとう」と思ったり。目標や憧れがないと向上できないですし。物事をマイナスにとらえず、すべてを自分のモチベーションに変えていってほしいです。

Credit


Photography Yoko Kusano
Styling Ai Suganuma
Hair&Make-up Yuri Miyamoto at Lila
Text Saori Uemura

RIEHATA WEARS TOP AND TROUSERS, SNEAKERS ALL BY NIKE SPORTSWEAR. OTHERS STYLIST'S OWN.

https://www.nike.com/jp

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