“罪なる”レシピその3:サイバーパンクの金字塔『ブレードランナー 』の「魚丼」

食に対する既存の風潮に中指を立て「オリジナル」に忠誠を誓う謎のフード集団。彼らの正体は、あらゆるカルチャーに触発されたフードメディアmcnai(マカナイ)だ。前代未聞のゴールデンウィークを楽しく送るためのレシピ第三弾は、サイバーパンクの金字塔『ブレードランナー2049』の前作『ブレードランナー』に登場する謎のフード”2尾で十分”な「魚丼」。

by mcnai
|
04 May 2020, 9:00am

カニエ・ウェストがフランク・オーシャンへ綴るマクドナルドの詩、スパイク・ジョーンズ監督『her』作中に登場するレストランの内装、ウディ・アレンが愛したNY老舗レストランの定番パスタ。mcnai(マカナイ)は、これらの食を軸としてその周辺にあるカルチャーを発信、創造する”ニューウェーヴメディア”である。

彼らの言葉を借りるなら「味と雰囲気だけに評価を置くような、食に対する既存の風潮に中指を立て、食周辺”それ以上”の新たな価値を探究し、撹乱する反乱軍」なのだ。つまりこのナードな青年達は食を起点とした若者の為の新しい文化圏を創造しようと企みている。その根底こそは食でもあり、飢える彼らの精神でもある。

映像作品、ポッドキャスト、フードレイヴ、音楽のキュレーション、彼らの活動は決して記事だけに止まらない。特にIGTVで公開中の”Guilty Pleasure Night”と題したオリジナル番組は、従来の「クッキング番組」のフレームワークを大きく逸脱したジャンキーかつポップなイメージから若者を中心に少しずつファンが増えているようだ。

第一弾のチャイルディッシュ・ガンビーノ主演ドラマ『ATLANTA』からインスピレーションを得たレシピ「レモンペッパーウェットチキン」に、第二弾のフランク・オーシャンのフェイバリットレストランの「オハナ・ポークプレート」と、フレッシュな話題とフレッシュなレシピを提供するのが、まさに ”mcnai(マカナイ)流” 。

そして、デリシャスフレッシュな ”mcnai GW” は、最終章へ進む。

〈第三弾〉

世の中にはスタンリー・キューブリック『2001年宇宙の旅』から始まり、ホドロフスキーによる幻の作品『デューン』(後のデビッド・リンチによる『デューン』についてはコメントを控え、今年公開予定のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による新『デューン』に期待しよう)など、沢山のSF映画が存在する。そして、そんなSF映画にはこんな演出がある。

「飯が究極に不味そう…」

SF映画は未来のディストピア的ライフスタイルの象徴として強烈な見た目をした食品が多く登場する。いくつか例を挙げると、カルト的人気を誇るディストピア映画『ソイレントグリーン』(1975)に登場する、ここでは説明できかねるほどグロテスクな合成食品や、『2001年宇宙の旅』(1968)の巨大宇宙船ディスカバリー号で提供される正体不明のペースト状の食事などが有名だ。『未来世紀ブラジル』(1985)に至っては、青色の泥のような塊の前にうまそうな食事の写真を立てるという開き直りっぷりである。

1588574050233-Cx9gwDOUQAAu8fo
『2001年宇宙の旅』の食事のシーンより

ちなみに、mcnaiが強烈に覚えているのは今を生きる全人類に衝撃を与えたSF大作『マトリックス』でのワンシーンだ。マトリックスにいれば美味いステーキだって食えるのに、オートミルみたいなまずそうな食事が登場する。ちなみに劇中では「snot(鼻水)」と呼ばれている。いったいザイオンかマトリックス、どちらの世界で生きればいいのかわからなくなってきた。お願いだからマトリックス最新作はザイオンの奴らにもっと美味い飯を食わせてやって欲しい… 心からそう願う。(『マトリックス』続編は2020年から製作の始動が決定している。)

1588574126777-xpd8b
『マトリックス』に登場する「snot(鼻水)」。

近年の映画では先述の新『デューン』の監督、ドゥニ・ヴィルヌーヴがメガホンを取った、ライアン・ゴズリング主演『ブレードランナー2049』(2017)にも興味深い食シーンが見られる。大量の液晶パネルに日本語、韓国語、中国語、ベトナム語などの言語がヌードルなどのイラスト共に映し出され、人々はその”巨大自動販売機”から食事を購入する。主人公ケイが選んだ日本食の中にあるものは…… 大量のガリと一枚のたくあん。日本の漬物は外国人から見るとカラフルで面白いのだろうか、ここ日本ではそんな付け合わせを見ることはないが、洋画に出てくるこのような、イマジナリーな日本はいつ見ても面白い。

1588574217962-jeremy-paillotin-tri-20170228-la-x-v010-jp
『ブレードランナー 2049』の巨大自動販売機は非常にアイコニック。

「SF映画には不味い飯が出てくる」という前提を皆さんに分かってもらったところで本題に入ろう。『ブレードランナー2049』(2017)の前作でありサイバーパンク映画の金字塔、『ブレードランナー』(1987)に出てくる”飯”のことについてのトリビアだ。

それは冒頭でのシーンで登場する。

ハリソンフォード演じる主人公デッカードが日本食風のレストランで指をさして何やら注文をしている。

デッカード:「Four.(4つ)」

このあと日本人であろう店主(日系アメリカ人のロバート・オカザキ)は食い気味にこう応える。

店主:「2つで十分ですよ!」

困惑した表情で仕方なく店員の言うことを大人しく聞いたデッカード。

…ん? 待ってくれ。いったい何が2つなんだ??

そう、この注文のシーン。一体何を注文しているのかがさっぱりわからない。このあと彼は慣れない手つきでうどんを食べるのだが、では彼は2つ(2杯)もうどんを頼んだのか?そんなこと普通はしないし、辻褄を合わせるには少々強引だ。一部のファンの間では「うどんの上にのせる天ぷらの数」などとも囁かれた。実はこのシーンにはちゃんとした答えがある。流石に誰もそんな訳の分からないセリフなど映画にぶっこまない。迷宮入りかと思われたこの謎は公開から25年が経った2007年に明らかになった。答えは同年に発売された『ブレードランナー』製作25周年記念アルティメット・コレクターズ・エディションのDVDに入っているワークプリント版の中にある。このワークプリント版には未公開のカットなども含まれていて、主人公が注文した品もその中に収録されている。つまり「肝心の商品はお蔵入りカットになってただけ」ってことだ。ではそのメニューとはどんなものなんだ。これだ。

なにあの魚…………。

まず、そもそもがうどんではない。丼的な何かだ。そう、彼らが言っていたのはこの丼にのせる魚の数だったのだ。ファンの間では「深海魚なのでは」などとも言われた。流石にこれが何の魚なのかは神のみぞ知ることころらしい。ブレードランナー本編ではこの料理自体は見れないものの、それを主人公が食べようとしたところで邪魔が入り中断される。これを食べた彼のリアクションはないって訳だ。もしかすると滅茶苦茶うまい魚なのかもしれない。いや、そうであることを祈る。嗚呼、リドリー・スコットよ!なぜこんなことをしたんだ!

1588574590550-bladerunner1982
ハリソン・フォード:左、リドリー・スコット:右。ブレードランナーのセットにて。

『ブレードランナー』の時代設定は2020年と言われていた。そして2020年現在、幸いにもここ日本ではこんな飯が食卓に提供される予兆がない。それどころか日本をはじめ、アジア各国ではストリートグルメやスイーツなど食の進化が著しい。いいぞ人類。この調子でリドリー・スコットをはじめキューブリック、テリー・ギリアムの期待を大いに裏切ろうではないか。そんなわけで、mcnaiからはこの「2尾で十分の魚丼」をより旨く、シンプルに、そしてギルティーに腹を満たせるようアレンジした、オリジナルレシピを公開したいと思う。ご心配なく、深海魚は使わないし、食ってる途中で邪魔も入らないだろうから。

🧜‍♂️”2尾で十分”の魚丼レシピ🧜‍♀️

1588574715865-mcnai_vol3
COPYRIGHT © mcnai 2020

〜 用意するもの 〜

白飯
はたはた丸干し(2尾)
春菊
人参
ししとう小(3〜5つ)
大葉(2枚)
片栗粉 適量

〈はたはた用下味〉
おろし生姜 小さじ2
醤油 大さじ2
料理酒 大さじ1
みりん 大さじ1/2

〈天ぷら衣〉
小麦粉 200cc
冷水200cc
料理酒 大さじ3

〈丼たれ〉
みりん 大さじ6
醤油 大さじ2
顆粒だし 小さじ1
砂糖 大さじ1〜2(お好みで量を変える)

〜 手順 〜

1.
<はたはた用下味>を混ぜ、はたはた2尾と一緒に袋の中に入れ10分程度浸ける。
(この時点で食べやすいように頭とヒレをとっても良い)

2.
1の汁気を切り、片栗粉をまぶし、170度程度に加熱した揚げ油で
こんがりきつね色になるまでと揚げる。

3.
にんじんは花形にくり抜き、茹でておく。

4.
<天ぷら衣>をダマがなくなるまで混ぜ合わせ、シシトウは蓋の部分を取り外し、
衣を着せて揚げ油で揚げる。大葉も同様に衣を着せて一枚ずつ揚げていく。

5.
フライパンで<丼たれ>のみりんを熱し、気泡が出てきたらフライパンを傾けて
チャッカマンなどで火をつけてアルコールを飛ばす。
残りの材料を入れてとろみがつくまで熱する。

6.
冷水を張ったボールに春菊の葉先をちぎりながら入れて5分ほど水にさらす。

7.
白飯の真ん中に水気を取った春菊と茹でたにんじんを敷き、その上にはたはたを2尾乗せる。
その隣に大葉と獅子唐の天ぷらを添え、<丼たれ>を上から垂らして完成。

いかがだっただろうか。第一弾の「レモンペッパーウェットチキン」と第二弾の「オハナ・ポークプレート」、そして今回最終章となった”2尾で十分”の魚丼レシピは楽しんでもらえただろうか。コロナ疲れを吹き飛ばすような、笑顔と好奇心に溢れる mcnai presents: Guilty Pleasure Recipe をこれからもぜひ楽しんでもらいたい。

フレッシュな話題とフレッシュなレシピを提供するのが、まさに ”mcnai(マカナイ)流” 。mcnaiによる新たなコンテンツはこちらから。これからもチェックしてほしい。


Official Instagram: @mcnaieatmecrazy

Official site: https://www.mcnaieatmecrazy.com/

Tagged:
brazil
Blade Runner
dystopia
DAVID LYNCH
matrix
Stanley Kubrick
Alejandro Jodorowsky
ridley scott
Snot
Dune
2001, A Space Odyssey
soylent green
Denis Villeneuve
Blade Runner 2049
mcnai
Guilty Pleasure Night