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      music Yu Onoda 9 June, 2016

      ビートがつなぐリアルとヴァーチャル

      ヒップホップグループ、Fla$hBackSの一員にして、ソロとしても、ラッパー、ビートメイカーとして、その才能を発揮しているjjj。次世代のヒップホップ・シーンを担うであろう彼の奥底に広がる音楽の原風景とは。

      jjj WEARS HIS OWN.

      無骨な川崎サウスサイド・エリア。ビートメイカーであり、ラッパー、DJでもあるjjjは、日本有数の工業地帯や歓楽街が同居した工場労働者の街で育った。そのゆっくりと溶けるような空気は、外部の者にとって、異空間に飛び込んでしまったような印象すら抱かせる。しかし、東京とは距離を置く彼の日常風景は今も変わらない。

      「言われているほど、そこまで治安は悪くないです。土地柄というより、人を見る目とか関わる人の違いだと思います。中高は悪いヤツいっぱいいましたけど、自分からトラブルに首突っ込んで、それを得意げに語りたがる不良になりたい不良みたいな人がめちゃくちゃ多くて、自分は距離を置くというか、そういうのに流されずに過ごしてた感じです。それに音楽をやるようになって学校も無駄だと思って中退しました。ヒップホップって各街で固まってるクルーが多いですけど、俺らは地元を拠点に活動する感じじゃないし、その街のはみ出し者が集まったのが、Fla$hBackSなんですよ」

       2013年2月にファースト・アルバム『FL$8KS』と共に一気に急浮上したFla$hBackSは、当時、19歳のFebbとKid Fresino、そして、23歳のjjjからなるヒップホップ・グループ。3人ともにラップとビートメイクを行う彼らの全方位的な才能は、若い才能が続々と登場し、驚くようなスピードで新陳代謝が繰り替えされている現在のシーンを象徴する衝撃と強い輝きを放った。新たな才能の初期衝動的な勢いは、現行のヒップホップの大きな魅力であるが、その後の彼らはアクセルを緩めずに、それぞれがソロ活動に移行。jjjが2014年にリリースしたアルバム『Yacht Club』は、硬く、緻密なライミングと巧みな言葉のフロウに特徴付けられるラップの個性も強力だが、トラックの斬新さが何より突出して響く。跳ね上がるバネのようなバウンシーでファンキーなビートと幾重にもコラージュされたキャッチーでカラフルなサンプル・フレーズ。そこにさらにテレビゲームほかの各種効果音が散りばめられ、映像を見ているような、ゲーム画面を見ているような耳新しい作品世界が展開される。

       「テレビゲームやゲーム音楽の影響は大きいと思います。昔兄貴がゲームをやってるのを後ろから見てあーだこーだ言うのが大好きでした。YouTubeとかのプレイ動画の音を消して、その映像を見て想像しながらシンセを弾いたりトラックを作ったりするのが面白いですね。例えば、ソロアルバムに入ってる「repliloid」って曲は、『ロックマン』っていうゲームを意識して作りました。ゲームって、その時々の最先端の技術やセンスがグラフィックだったり音楽、効果音だったりに詰まっているので、常に追ってますね。やりませんけど(笑)。俺がトラックを作るうえで考えているのは、いかに自分を飽きさせないかということ。30分で1話完結するアニメがそうであるように、トラックもフリとオチが大事だと思うんですよ。キックドラムで振ったら、スネアドラムで落としたり、1小節目で派手に出した上ネタを2小節目のケツでぎゅっと締まった音で閉じたり、その色んなパターンと緩急で、曲全体の起承転結やストーリー性を持たせようと常に意識しています」

       日本に限らない、全世界的な傾向として、若いトラックメイカーの深層意識には、彼らが繰り返し見聞きしたゲームやアニメの影響が当たり前のように見て取れる。イギリスのMCがラップするグライムのトラックにもゲーム音楽の効果音が多用されており、そんな流れを受け、昨年にはゲーム『ストリート・ファイターⅡ』のサウンドトラックがビート系配信サイトでリリースされたことが大きな話題となった。ストリートミュージックにおいても、リアルとヴァーチャルの壁はとっくに溶けてしまっているのだ。

       「海外でも、英文を直訳したような日本語が大きくプリントされたTシャツを着た外人がトラップのビートでラップしてたり、95~2005年代のナードなファッションやアートが増えましたよね。自分もゲーム、アニメで育ったし、その年代が好きだからどこかしら通ずるところがあるかもしれないです。最近はインターネットやテレビで"ラップミュージック"が公になることが多かったり、ここ5年くらいで誰でも簡単に音楽だったり動画だったりを作れるようになってそれを発表できる場所があって、なんか入り口だけあって出口のない不思議なものができた感じですね。自分はインターネット上に、作った使い道のないトラックをアップするんですけど、世界中の知らない人から連絡が来たりして、去年一緒に曲をやったUGLY DUCKやREDDY(韓国のラッパー)もInstagramのDMで直接連絡がきたり、自分のアルバムでも歌ってもらった(フランスの女性シンガー)Ta-haはSoundCloudのDMで俺のトラックで歌ってる自撮りの動画が送られてきたり(笑)。日本だったら、挨拶から始まったりするのに、壁がないというか、言葉の違いだったり、コミュニケーションで日本人が気を使ったりする面倒な所が省かれてて、スピードが速いんですよ。なんか、インターネット全盛の今の時代ならではというか、色々すごいことになってると思うし、これからこれがもっと進化していくとどうなるんだろうと思います」

      Credits

      Photography Yusuke Yamatani
      Text Yu Onoda

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      Topics:music, music interviews, jjj, hiphop, fla$hbacks

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