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      music Yu Onoda 20 December, 2016

      印象派ビートメイカーの皮を被った電子音楽家・TOYOMU

      カニエ・ウェストのアルバム『The Life Of Pablo』を妄想で具現化した作品『印象Ⅲ:なんとなく、パブロ』が全世界で絶賛された京都のアーティスト、TOYOMU。発想の斬新さでブレイクスルーを果たした彼がこの先目指す音楽とは?

      印象派ビートメイカーの皮を被った電子音楽家・TOYOMU 印象派ビートメイカーの皮を被った電子音楽家・TOYOMU 印象派ビートメイカーの皮を被った電子音楽家・TOYOMU

      デスクトップミュージックの制作環境の進化に伴い、専門的な知識や技術なくして、直感的な音楽制作が可能になり、また作品を発表・配信する多種多様なプラットフォームが整った現代において、音楽家には日々、無限増殖し続けている音楽の大海から浮上するプロデューサーとしての発想も求められつつある。もはや、耳だけでなく視覚にも訴えかけるミュージックビデオや無料でダウンロードできるミックステープですら飽和してしまっている状況下で、未来のリスナーを獲得する新たなアプローチとは果たして?

      そんななか、斬新な手法によって、PitchforkやThe Fader、FACTといった海外の主要ネット音楽メディアで賞賛され、一夜にして、その名を全世界へ広めることに成功した京都在住のアーティスト、TOYOMU。なんと、彼は今年3月にカニエ・ウェストの新作アルバム『The Life Of Pablo』の配信開始時に日本での公開が遅れたわずかな空白を利用。アルバムの歌詞や使用されているサンプリングソースの情報をもとにした妄想の『The Life Of Pablo』とでもいうべき画期的なアルバム『印象Ⅲ:なんとなく、パブロ(Imagining "The Life Of Pablo")をわずか4日で制作・公開し、全世界をあっと言わせたのだ。

      「色んなことをどんどんやらないと、いい音楽を作っていても埋もれちゃうなって思ったんですよね。だから、毎月作品をリリースして、音楽をやってるということを表明しようと決めたんです。ただ、毎月ビートテープをリリースするのはKnxwledge(ケンドリック・ラマーのプロデュースを手掛けたLA在住のビートメイカー)がすでにやっているし、LAのビートシーンに影響を受けたからといって、それっぽいビートを作っても聴く人は同じような音楽が好きな人に限られてしまう。だから、色んな人に聴いてもらうにはどうしたらいんだろう?って考えるようになって。そんななか、題材にしたカニエ・ウェストの『The Life Of Pablo』はいまだにCD、レコードでリリースされていないし、日本での配信が遅れたことも含め、あのアルバムを取り巻く状況は特殊なものがあったので、その流れに乗れば、みんな聴いてくれるんじゃないかって。だから、そこまで批評的なことを考えていたわけではないんですけど、結果的に(アルバムの歌詞や使用されているサンプリングソースの情報だけで作品を作るという)そのアプローチを面白がってもらえて、こちらの想像を超えて、作品が広がっていったんです」

      カニエ・ウェストの『The Life Of Pablo』という特異な大衆作品の批評的なアプローチをして、海外ではヴェイパーウェイヴの流れを汲むアーティストとも受け取られた彼のルーツはヒップホップにある。「もともと、DRIPっていう(京都の大所帯ヒップホップ)クルーでビートを作りながら、たまにラップをやったりもしていたんですけど、LAのビートメイカー、マッドリブのアルバム『SHADE OF BLUE』を聴いて、(ジャズ・レーベル、ブルーノートの音源のみを使った)インストトラックに衝撃を受けて、ラップを乗せるビートではなく、それ単体で聴いて楽しめるインストトラックを作るようになったんです。そして、ビートライブをやっているうちに、どうやったらインストトラックでも飽きずに聴いてもらえるかということを考えるようになりました」

      そして現在、自身のイベント、コレクティヴである〈Quantizer Kyoto〉を設立。Fla$hBackSのJJJやBudamunk、Olive Oilといったアーティストを招聘しながら、京都の地でヒップホップを由来とした広い意味でのビートミュージック、エレクトロニックミュージックのコミュニティを育んでいる。「影響を受けたそのままをやろうとは思っていないんですけど、〈Quantizer Kyoto〉はLOW END THEORY(LAのビートシーンを代表するパーティ)をイメージして立ち上げました。去年の3月には実際にLAへ行って、1ヶ月間の滞在中にLOW END THEORYに何度も足を運び、アーティストでもある(ビートメイカー)TEEBSのエキシビションでLAビートシーンの主要な人たちと遭遇したり、街中を走ってる車から当時リリースされたばかりのケンドリック・ラマーの新作が爆音で流されているところを目の当たりにして。そういう肌で感じられる直接的な体験を通じて、自分ももっとやらなあかんなって、大いに刺激を受けたことが、作品を連続リリースするアイデアに繋がっていったんです」

      その後も配信で作品リリースを続けた彼は、2016年10月に宇多田ヒカルの新作『Fantôme』をジャックしたブートレグのリミックスアルバム『印象Ⅶ:幻の気配』を公開しつつ、そのクリエイティビィティをオリジナル作品に注ぎ込み、デビューEPとなる『ZEKKEI』を完成。彼の活動拠点である京都の街と深層部分で結びついたエレクトリックなテクスチャーを織り上げたサウンドアートが展開させる作品を通じて、その活動は新たな展開を迎えている。

      「今回のEPは、誰かの作品をサンプリングする手法は用いず、フィールド・レコーディングした音源と(1996年に発売された)YAMAHAのデジタルシンセサイザー、CS1xだけで作りました、そして、タイトルをつける段階で、これは自分の心象風景を映し出したものかなと思ったので、それだったら、26年住んでいる京都にちなんだタイトルを付けたというくらいで、京都っぽさを感じてほしいわけではなく。むしろ、聴いてくれる人それぞれが住んでいる街との共通点や思い出を喚起させる、そういう作品になったらいいなと思ってますね。音楽的な部分では、70年代、80年代に出た坂本龍一さんのソロやY.M.O.を聴くようになったことで、よりオリジナルな、音楽的な作品を目指すようになりました。以前は過去の音楽をサンプリング素材としてしか捉えていなかったんですけど、当時の背景を含めて、彼らの作品を正面から音楽と捉えて聴くことによって、沢山の発見があったし、自分の作品も聴く人にとって発見がある、そんな新しい音楽でありたいなって。そして、新しい音楽を作りつつ、最終的にはメロディの良さであったり、その良さが普遍的に伝わる音楽を作りたいと思っていますね」

      Credits

      Text Yu Onoda
      Photography Shun Komiyama

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      Topics:music, music interviews, toyomu, quantizerkyoto, zekkei, kyoto, hiphop, electro, synthesizer

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